ヒーローライクヒール(リメイク連載中)

手頃羊

その3・Who's a devil?

[エリー]
私は物心ついたときから父はおらず、母と2人で暮らしていました。
ですが母はまだ子どもの私に家事を教え1人で生きていけるように育てた後は姿を消しました。
どこに行ったのかは今も分かっていません。

私は村の人達から悪魔の子と嫌われていました。
勿論、私はただの人間の子です。
ですが私が表に出ると、通りすがりにつばを吐かれたりなんかは日常でした。
時々、私にわざと聞こえるように悪口を言う人もいました。
近所の子ども達は私に向かって石を投げ、大人はそれを見て笑っていました。

ある日、買い物に出かけようと家を出てお店に向かう途中、村の子ども達に持っていたカバンを盗まれました。
私はそれを追いかけて近くに空き地にたどり着きました。
カバンを返してもらうよう頼んでも、
「うるさい悪魔!この村から出てけ!」
と返してくれませんでした。
そこに、1人の旅人が通りがかりました。
「おいガキ共。何やってんだ。」
旅人が私のカバンを取り返すと、子ども達は逃げていきました。
私は旅人にお礼を言おうとしました。
「礼なんざいいよ。…あぁ、そうだ。お礼ならさ、この村の宿教えてくれると嬉しいんだけど、なんか良い所ない?」
今も昔もハゼットさんは変わりませんね。

その次の日、村に盗賊が訪れました。
昔、盗賊がこの村を襲い、当時の村の人達はなす術なくやられてしまいました。
その時の盗賊のリーダーは、村で暴れない代わりに村の中の物を好き勝手使わせろという一方的な条件を出してきましたが、村の人達はそれに従うしかありませんでした。
その日も、店の物を勝手に取っていったりと暴君のように振舞っていましたが、村の人達はそれに刃向かうことはできませんでした。
ですがこの日は、少し違いました。
私は家の外に出ないようにしていたのですが、外が騒がしかったので外に出てみると、ハゼットさんを盗賊達が囲んでいたのです。
おそらく盗賊達に反論したのでしょう。
ハゼットさんは盗賊達を次々に返り討ちにしていきました。
村の人達はハゼットさんを応援し、武器を取ったりして応戦したりしました。
ですが私はそれを最後まで見ることができませんでした。
戦闘に参加していなかった盗賊の何人かに攫われてしまったのです。
攫われたのは私だけでなく、村の女の子の何人かも攫われていました。

盗賊のアジトの連れてこられ、1つの部屋にみんな入れられました。
私達を縛りあげると、リーダーらしき男が大量の血が入った大きな桶を子ども達に見せました。
「これは昔親父がユニコーンと戦ったときに手に入れたユニコーンの血だ。今からこの中の1人にこの血を入れる。残りは特別に家に帰してやろう。誰をここに残したい?」
ユニコーンの血を飲むと不老不死になるという伝説はみんな知っていました。
他の子はみんな嫌がり、
「その子にして‼︎」
と私を差し出しました。
私も嫌でしたが、私が村に戻っても私へのいじめは酷くなるだけだろうし、他の子が帰った方が良いと思い、みんなを帰してほしいと頼みました。
「そうか、嫌われてるのに他の奴を助けようとするのか。だがお前に決まってしまったのは仕方ない。さぁ別の部屋に行くとしよう。」
と私と血の入った桶を持ち上げ、部屋を出ていきました。

男は1つの部屋に入っていきました。
その部屋はハサミやムチなど、拷問の為の器具がたくさん置いてありました。
男は私を部屋の真ん中に置いてあった、座る部分にたくさんのトゲがついた椅子に座らせようとしました。
子どもの力では対抗できず、椅子に無理やり繋がれました。
男はナイフを取り出し、私に見せびらかしました。
「今からこれでお前の手首を斬り、そこにユニコーンの血を入れる。」
男はナイフを私の手首に押し付け、ゆっくり引きました。
手首からはたくさんの血が流れていきました。
男はコップで桶から血を掬い、傷口にかけました。
ハゼットさんは気を失っていたから分からなかったのかもしれませんが、ユニコーンの血は私の体にとてつもない苦痛を与えました。
体の中で大量のお湯が沸騰している…といって分かりますでしょうか?
ユニコーンの血は私の中にあった血を全て押し出していき、体の中で次々と増えていき、どんどん沸騰したお湯の量は増えていきました。

1時間ほど経ってようやく落ち着きました。
男は私の首をナイフで斬ったりして試しましたが、私は死にませんでした。
男は私の拘束を解きました。
「不老不死になるという伝説は本当だったのか…親父はなかなか面白ぇもんを手に入れたな…さて、ガキの体でも十分楽しめるかねぇ…」
男は私の服を引きちぎり、押し倒しました。
少し手遅れでしたが、扉が突然開きました。
「てめぇら…ふざけんのも大概にしろよ…」
そこにはハゼットさんが立っていました。
ハゼットさんは持っていた剣で男の腹を刺し、椅子に男の顔を無理やり叩きつけ、男を一瞬で倒しました。
ハゼットさんは裸の私に上着をかけてくれました。
「大丈夫か⁉︎こんな傷だらけで…‼︎よく生きて……」
ハゼットさんは桶に入った血と、私の傷とを交互に見て、そこで私が不老不死になったと気づきました。
「とにかく村に帰ろう…。お前だけでも村に連れて帰らないと…。」
私は他の子がどうなったか聞きました。
「他の子どもは…ダメだった…」
盗賊達は初めから1人も帰す気はなかったのです。

村に帰りアジトでのことを伝えると、村の人達はみんな泣いていました。
ですが、村の人達はハゼットさんを責めませんでした。
代わりに、
「お前がこの村に不幸を呼んできた。」
と、私を責めました。
私は言い返そうとしましたが、ハゼットさんはそれを遮り、代わりにハゼットさんが言い返しました。
「あんたらふざけんのも大概にしろよ。この子があんたらになんかしたってのかよ。」
      「そいつは悪魔の子だからだ‼︎
「俺にはお前らの方が悪魔にしか見えねぇけどな‼︎この子は他の子を助けようとしたんだぞ‼︎」
すると、村の人達はハゼットさんまでも、悪魔の仲間だと責め始めました。

ハゼットさんは私を連れて村を出ました。
ハゼットさんは私に何度も謝りました。
ハゼットさんは何も悪くないのに何度も謝りました。
「何か詫びになるようなことがあればいいんだが…」
私はハゼットさんにお礼がしたかったので、初めてハゼットさんに会った時の真似をして言いました。
「お詫びをしたいんだったら私を旅に連れてってください‼︎一生懸命尽くします‼︎」
そうして、私はハゼットさんと旅をすることになりました。





[クロノ]
エリー「これが私の経緯です。」
クロノ「な〜んか、マトモな人がいませんね…」
ハゼット「誰かを嫌うことで心の平穏を保つやつは多かった。時代が過ぎていくうちに、だんだん柔らかくなっていったのかもしれんがな。」
エリー「不老不死になって辛いことはありましたが、ハゼットさんにも会えましたし、ラフの皆さんやクロノさんにも会うことができました。今では不老不死は嫌ではありません。」
クロノ「…でも、やっぱり辛いでしょ?」
エリー「辛いことは今でもあります。でも、それでも私は皆さんといられる今の日々が大好きです。」
ほんとに辛いなぁ…
エリー「そういえば、ハゼットさんは私を助けた時にも盗賊を全滅させてましたけど、その時のこともやっぱり悔いているんですか?」
ハゼット「まぁな。そうでもしないと、また村が襲われるかもしれんから間違ってはなかったと思いたいが…」
クロノ「…必要悪と絶対悪って知ってますか?」
ハゼット「なんだそれは…?」
クロノ「必要悪ってのは、社会の為だとかに必要な、許される余地のある悪です。例えば、子どもを叱るのに頭を叩いたり、誰かを助けるために悪いことをしたり。生きるための食糧として、動物を殺したりなんてのも、必要悪の1つだったりするかもしれません。絶対悪はそれに対して、許される余地のない完全な悪のことです。これに関しては人によって意見は違いますが、例えば人を殺すのが好きだとか、人が苦しんでいる姿が好きだとか。さっき俺が、人を殺すのが悪ではなく、人を殺す理由が悪だって言いましたが、それは必要悪絶対悪の考えから俺が考えたことです。ハゼットさんのは間違いなく必要悪です。殺人そのものは悪ですが、レイプ犯を殺さなければ。盗賊を殺さなければ。また新しい被害が出ていたかもしれません。ハゼットさんはただの英雄ですよ。」

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