ヒーローライクヒール(リメイク連載中)

手頃羊

その5・声

[クロノ]
キュリー「ふむ…ふむふむ…」
俺から聞き出したことをまとめた紙を見てキュリーが何度か頷く。
キュリー「文明の発達では圧倒的にそちらが上か。魔法もないのに電気を生み出すこともできる。だが単純な戦闘力ではこちらが上と。1週間経った割にはそんなに情報は集まっていないが、それでもかなりの量か。あと聞くべきはなにがあるか…」
ハサミの持ち手をクルクルさせながらこちらを見る。
キュリー「他になにか言っておくべきことはあるか?」
クロノ「………」
キュリー「疲れて返事もできないか?まぁ首にそんなものが刺さってたら普通は会話は難しいだろうが、頷くことくらいはできるだろう?」
自分の首の半分には今ノコギリが刺さっているという状態である。
首をノコギリで押したり引いたりしながら斬っていったせいで、首の左半分が今つながっていない。
それなのに生きているのはキュリーにかけられた強力な回復魔法のせいだ。
キュリー「ノコギリ、と言ったか。木を伐採する為の道具だそうだが、拷問器具として使う方が効果を発揮できるんじゃないか?」
ちなみに、首にノコギリが刺さっているだけでなく、腹を剣で半分ほどバッサリ斬られている。
キュリー「はぁ、仕方ない。ステラ、何時間経ったか分かるか?」
ステラ「12時間と23分です。」
キュリー「半日もここにいたのか。貴様の反応を見るのが楽しくて昼食を摂るのも忘れてしまうとはな…。今日はここまでにしよう。それではな。」
キュリーが部屋を出ていく。

ステラ「お疲れ様でした…」
ステラが首に刺さっていたノコギリを抜く。
ステラ「大丈夫ですか?」
クロノ「…大丈夫だ…まだ耐えられる…」
ステラ「私にはあなたを応援することしかできません…申し訳ございません…」
クロノ「…大丈夫だ……大丈夫…」
ステラの心配に応えるというより、自分に言い聞かせているに近い。
『結構ギリギリなくせになぁ?』
3日経ったあたりから教会の時に聞こえた声と同じ、聞き覚えのある声が頭に響く。
(またか…)
『モニカちゃんの準備ってのもそろそろ終わるらしいけど、それまで耐えれるかねぇ?』
(俺なら耐えれる…俺なら…)
『俺なら俺ならって、お前は特別な存在じゃないんだぜ?どこにでもいるその辺の一般人がちょっと魔力持っただけだ。まぁ、それでもここまで正気を保ててるだけすごいか。』
(あんたはいったいなんなんだよ…)
『まだその時じゃないってわけさ。あんたもなかなか頑丈な精神持ってんねぇ。だけど正気かどうかって意味ではそろそろ限界だぜ?』
(それでも…あと少しなら…)
『だんだんモニカのこと信じられなくなってきたろ?うん?』
(あいつは悪いやつじゃない…嘘はついてない…)
『あぁ、俺もそう思う。でも…な?』
扉が開いた。
モニカ「クロノ、大丈夫?」
クロノ「モニカ…」
『噂をすれば。』
モニカ「やっと終わったわ。」
ステラ「それでは…‼︎」
モニカ「えぇ。これからあいつのところに行ってきて封印をしてやるつもりよ。」
(ほら見ろ…モニカは嘘をついていなかった…)
『だねぇ。でも新たに不安が生まれてきたろ?』
(は?)
ステラ「お1人で行かれるのですか?」
モニカ「えぇ。1人で十分よ。それに、こんな状態のクロノを連れてっても足手まといにしかならないわ。」
『フラグビンビンじゃん。そうでなくても、モニカが現魔王の座奪われたのはキュリーより弱かったからだろ?』
(ちっ…)
ステラ「キュリー様の回復魔法で体力は快復していますし、お1人で挑むよりは…」
モニカ「そんなことは知ってるわよ。私が心配なのは体力じゃなくて精神の方。こんな死んだ魚のような目してるようじゃマトモに動けないわ。ステラはクロノを見てて頂戴。それじゃ、行ってくるわ。」
モニカが部屋を出ていく。

『あ〜あ。行っちゃったよ…。どうする?』
ステラは胸の前で手を握りしめ、扉の方を見ている。
やはり心配なのだろう。
(どうするって…)
『仕方ないなぁ…お兄さんがちょっとだけあんたのお手伝いをしてやろう。お前が望んでいることでもあるしな。』
手足に力が溜まるのを感じる。
(これは…)
『で、どうする?答えは1つに決まってるみたいだが。』
(あんたはなんで俺の心の中を読めるんだ?)
声がしなくなった。
(なんだってんだ…全く……でもまぁ、覚悟は決めなきゃいかんな……)
クロノ「すぅぅぅぅ…」
大きく息を吸い、
クロノ「はぁっ‼︎」
手足に力を入れ、つながれた鎖を無理やり引きちぎる。
ステラ「な、クロノ様⁉︎」
クロノ「よっとぉ…。」
鎖を引きちぎるので溜められた魔力分は使い果たしたようだ。
だが、自分の中の魔力は1週間使われていなかったのでしっかり満タンになっている。
ステラ「鎖を…‼︎いえ、それより…いったい何を…⁉︎」
クロノ「ちょっとモニカのところに行ってお手伝いしてくる。」
状況が良くなったことで、拷問で残っていた苦痛が大分和らいだ。
ステラ「ですが‼︎」
クロノ「今の俺は死んだ魚の目をしてるような見えるか?」
ステラ「…‼︎………お願いします…モニカ様を‼︎」
クロノ「任せとけ。」
(まずはあいつの顔面に2,3発入れよう。拷問の分をやり返さないと気がすまない。)
今、さっきのように頭の中で声が響いた気がした。
でも、今はそんなことよりも…
(どうやってキュリーを倒すか…殺すか封印のお手伝いをするか…)

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