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ヒーローライクヒール(リメイク連載中)

手頃羊

その8・クラーケン

[クロノ]
朝。
天気は快晴。
海に出るのに特に困ることはなさそうだ。
クロノ「よし、準備はいいな。」
カンザー「うむ、では行くとしようか。」
ブラン「師匠も行くの?」
カンザー「この中で船を操縦できる奴はおるのか?」
クロノ「というわけだ。」
カンザー「怪我をしてるわけでもないからな。せめてこれくらいは手伝わせてもらおう。いざとなったらワシも戦いに加われるしの。」

船で沖に出る。
フレア「おぉ…これが船か…」
シーラ「船は初めてですか?」
フレア「あぁ、初めて乗ったよ。」
クロノ「たまに船酔いする奴はいるが、お前は大丈夫か?」
フレア「あぁ、全然大丈夫だぞ。」
ターニア「例の魔獣が出る場所まではどれくらいかかりそうですか?」
カンザー「このまま真っ直ぐ進めば昼には着くじゃろうな。」
レーニャ「巨大なイカの魔獣ですか…。聞いたことないですよね…。」
ターニア「ふむ…この辺りでは有名なのですか?」
カンザー「いいや、あんな奴は初めて見た。」
クロノ「イカの魔獣…かぁ…。クラーケンってやつか?」
レオ「クラーケン?」
クロノ「あぁ~…。俺の故郷ではそういう巨大なイカの怪物をクラーケンって呼ぶことがあんのよ。」
ターニア「名前があるということは、遭遇した者がいるということか?」
クロノ「いやぁ、架空の存在だよ。人間がテキトーに考えてそれっぽい絵を描いて残してるってだけだし、実在するって思ってるやつはいないさ。」
ブラン「テキトーに考えたのに実在するなんて、運命か何かかしらね。」
異世界の話とは言えないけどな。

カンザー「着いたぞ…。」
ターニア「このあたりで遭遇したのですか?」
カンザー「うむ…。今は隠れておるのかのぉ…。」
レオ「僕らのことは気付いてるのかな…?」
クロノ「間違いなく気付いてるな。海に住んでる動物ってのは、離れてるところからでもどこに何がいるかわかってるもんだ。実はもうすでに足元にいたりするってのもありえる。」
カンザー「うむ、そうじゃ。実際ワシらもそうやって奇襲された。」
フレア「まじかよ…」
ブラン「油断できないってわけね…」
クロノ「そういうことだな…」
船縁に寄って、海を見る。
綺麗な青色が広がっている。
(こんな場所で魔獣の大量殺戮とはねぇ…)

見ていると、いきなり海の青が濃くなった。
クロノ「ん?なんだ?」
濃くなった部分は船の周囲だけで、少し離れた所はさっきと同じような水色に近いような青だ。
カンザー「どうした?」
クロノ「船の周りが濃くなって…何かいるのか?」
ブラン「私にも見せて!」
ブランが近づいてくる。
すると、海面から何かが飛び出してきた。
ブラン「なにこれ…?」
カンザー「触手‼︎」
フレア「危ない‼︎」
触手はブランに向かって伸びたが、フレアが咄嗟の判断でブランに飛びかかり、触手を避ける。
ブラン「あ、ありがと…」
カンザー「いかん‼︎船の真下にヤツがいる‼︎」
クロノ「全員構えろ‼︎どこから飛んでくるか分からんぞ‼︎」
海面からいくつかの触手が飛び出してくる。
カンザー「くそぉ‼︎」
クロノ「カンザーさんは操舵に集中してて‼︎俺らは大丈夫だ‼︎」
次々と迫ってくる触手を避ける。
クロノ「シーラ‼︎近くに来い‼︎」
シーラ「は、はい~‼︎」
戦える程の力を持っていないシーラを背中につける。
シーラ「左からも来てます‼︎」
クロノ「ちぃ‼︎」
剣を取り出し、触手を迎撃する。
触手は固くはなく、剣もしっかり通る。
フレアはブランを、レーニャはレオを、ターニアはカンザーを守っている。
触手を切り落としていくうちに、やがて触手が全て引っ込んだ。
フレア「お、終わった…か…?」
クロノ「いや、こんな程度で終わるはずはない。」
シーラ「クロノさん、あれ‼︎」
シーラが指差す方を見る。
海がだんだん盛り上がっている。
フレア「なんだありゃあ⁉︎山⁉︎」
海の水がだんだん落ちて、盛り上がってきた物の姿が見える。
クロノ「こいつがクラーケンってわけか。」
巨大なイカの化け物が姿を現わす。
乗っている船はかなり大型の船だが、この船ですら丸呑みにできそうな程の大きさだ。
クロノ「こんだけ大きけりゃそりゃ大食いでもあるわな。」
ブラン「こいつが…!」
ターニア「どうやって戦うんだ…?こんなのと…」
レーニャ「この船には大砲もありませんし…」
クロノ「しばらく俺の銃で遠距離から狙うしかないか…?」
大砲並みの攻撃もできるが、やはり火力に劣ってしまうだろう。
ターニア「なぁ、クロノ…。こういう時はどうすればいい案が思い浮かぶんだ?」
クロノ「そうだなぁ…。例えば、普通ではありえない戦い方とかだな。誰も予想できないってことは、相手も予想できないわけだから、相手の意表をつけるかもしれない。」
ターニア「ありえないような戦い方か…。」
クロノ「なんかないか…?」
フレア「ありえない戦い方…。例えば、あいつに近接戦闘を挑むとか?」
クロノ「船を近づけてか?近づく前に壊される可能性もあるぞ?」
フレア「いや…船で近づくんじゃなくて…」
クロノ「…?あっ…。お前まさか‼︎」
フレア「やってみる価値はあるだろ‼︎」
船縁に向かってフレアが走る。
シーラ「フレアさん⁉︎」
海に向かってジャンプし、船縁を飛び越える。
カンザー「何を⁉︎」
フレア「こうするんだよ‼︎」
大剣を足の下に置き、海に降りる。
剣は海面で浮かび、その上にサーフボードに乗るようにフレアが立つ。
ターニア「なっ⁉︎どうなってるんだ?」
フレア「魔力を海面から反射させるように流してるんだよ。これならやつに近づける!」
大剣に乗ったまま、スピードを上げてクラーケンに向かっていく。
途中、触手が現れフレアを狙うのを避けつつ接近していく。
クロノ「あれなら俺でもできるな。」
シーラ「クロノさんも行くんですか⁉︎」
カンザー「無茶はするな‼︎」
クロノ「無茶しないで倒せる相手でもないでしょ?」
ブラン「クロノ‼︎」
クロノ「何さ?フレア1人にするわけにもいかんし、止めても止める気は…」
ブラン「あたしも連れてって‼︎」
クロノ「はぁ⁉︎おま…何言って…」
ブラン「急がないとフレアが危ないでしょ‼︎早く連れてって‼︎」
クロノ「くっそぉ…。あぁ分かった‼︎ほら行くぞ‼︎」
カンザー「絶対に生きて帰ってこい‼︎この船は意地でもワシらで守る‼︎」
クロノ「任せとけ‼︎」
ブランを抱き抱え、海に飛び降りる。
ブラン「うえぇ⁉︎ちょっと⁉︎」
剣と銃を合体させ、足に置き、海面に降りる。
クロノ「意外と難しいが、すぐに慣れるな。よし、行くぞ‼︎」
ブラン「ちょっ、お姫様抱っこはダメ‼︎」
クロノ「ウダウダ言うな‼︎これが一番運びやすいんだ‼︎船に戻るか⁉︎」
ブラン「いいい行くわよ‼︎行ってよ‼︎」
クロノ「おっしゃあ‼︎」
銃から魔力を放出させ、その反動で前に進む。

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