ヒーローライクヒール(リメイク連載中)

手頃羊

その9・覚悟

[フレア]
狐男を追っていると橋の前でソウスケと鉢合わせになった。
フレア「やっぱりか、ソウスケさん。」
返り血まみれの服で手には大きなヒビの入った狐のお面を持っていた。
ソウスケ「まったく、面倒臭いな貴様らは。」
クロウ「追いついたぞ、兄貴‼︎」
ソウスケ「はぁ…」
フレア「クロウ‼︎」
クロウ「フレアもいたのか!兄貴、ホントにこんなこと続けてたのか…」
ソウスケ「『こんなこと』、とはな。」
クロウ「なんでこんなこと始めたんだよ!」
ソウスケ「お前にはいつも言っていただろう?才能のある者は常に力を誇示する必要があると。」
クロウ「それが人を殺して回ることだってのかよ‼︎」
ソウスケ「喚くな。人を斬るというのは存外難しくてな。斬るだけならともかく、即死をさせるのは難しいのだ。首を斬り落とすなら話は別だが、心臓を突き刺しただけでも数秒は意識が残っているものだ。人を即死させられるだけの腕前がある者は、余程の才能があるやつということだ。」
クロウ「才能才能って、そんなに才能が大事かよ‼︎人の命をなんだと思ってやがる‼︎」
ソウスケ「才能のない者の命なぞこの世に必要か?そんな奴らが蔓延っているから、才能のある貧しい者らが現れる。才能も無いくせに努力努力と他の才能がある者が手にするべき機会を奪い取っているのだ。」
クロウ「ふざけんなよ…。」
ソウスケ「フレア。お前のことでもある。」
フレア「え?」
ソウスケ「今まで長い間、おそらく10年近く剣を振るい続け努力してきたことを感じる。だが貴様の剣からは才能の欠片も感じない。だから俺を抑えられなかったし、同じく才の無いホウジョウも死んだ。」
フレア「ゲンダイさんはまだ死んでないぞ‼︎」
ソウスケ「そうか?まぁ、どうでもいい。あの時の双剣使い…クロノとか言ったか。あいつからは才能を感じた。だが俺の邪魔をするやつではあったから重症程度に済ませておいた。別に殺してやっても構わなかったんだがな。」
フレア「クソ野郎…‼︎」
大剣を逆手に構える。こいつの頭をかち割ってやらないと気が済まない。
ソウスケ「無駄死にするだけだぞ?」
こちらを向き刀を構える。
クロウ「フレア‼︎手を出すな‼︎」
クロウから制止が入る。
クロウ「俺が止める。俺の身内がやらかした事件だ。俺が意地でも止めてやる!」
ソウスケ「お前がか?仮に俺以上の腕があったとして、殺されない限り止まらんぞ?」
クロウは歯を食いしばっている。腕や足が震えている。
クロウ「ああそうかい。なら…殺してでも止めてやる。」
刀を抜き、構える。
ソウスケ「ふん。意気地なしなりに勇気を振り絞っているつもりか?」
刀を同じ形で構えた男達が向き合い、静止する。
ソウスケ「お前から来い。」
クロウ「行くぞ…‼︎」
クロウが走り刀を振る。
ソウスケは刀を防ぎ、そのまま斬り上げる。
その一閃を避け、斬る。
やがて剣と剣を押し付け合い、鍔迫り合いの形になる。
クロウ「人を殺すことが才能だってのか‼︎」
ソウスケ「人を殺す才能ではない。人を斬る才能だ。」
クロウ「人殺しには変わらねえだろうが‼︎」
ソウスケ「才能を持っているならそれを自分と認め、開花させねばならない。」
クロウ「していいもんと悪いもんがあるだろうが‼︎」
クロウがソウスケを押しのけ、刀で斬りかかるが、ソウスケはそれを避ける。
ソウスケ「お前は武者としては半人前どころか武者になる資格すらないな。」
クロウ「無意味に人を殺すことが武者なら、なる気はさらさらないね‼︎」
ソウスケ「無意味ではない。才能のある者の糧になっているのだ。意味はあるさ。」
クロウ「そんなもん意味があることになってねぇよ‼︎」
ソウスケ「何をそんなに怒っている。」
クロウ「怒るに決まってるだろがぁ‼︎」
クロウが刀を振り下ろすが、ソウスケがそれを避け、刀を地面に叩きつける形になる。
クロウ「才能どうこうじゃなくて、命っつうのはどれも全部簡単に切り捨てて良いもんじゃねぇんだよ‼︎」
クロウが刀を持ち、ソウスケに斬りかかる。
ソウスケ「それはお前の意見だが…な‼︎」
ソウスケがクロウの刀を防ぎ、がら空きとなった腹に蹴りを入れる。
クロウ「ぐぁっ‼︎」
ソウスケ「お前は本当に愚弟だな…。お前のようなものには少し教育が必要か。」
ソウスケが刀を鞘に収める。
フレア「クロウ‼︎」
クロウが刀を構えようとする。
ソウスケ「防ぐ暇など与えん‼︎」
ソウスケが刀を振り、もう一度鞘に収める。
キン、と音が鳴るとクロウの腹から血が吹き出る。
クロウ「があぁ‼︎」
フレア「クロウ‼︎」
クロウ「大丈夫だ…‼︎ちょっと表面やられた程度だっつの‼︎」
ソウスケ「防御が間に合ったか…。ならもう一度くれてやろう。」
先ほどのように構える。
ソウスケの体から殺気が湧いてきている。
(本気で殺す気か⁉︎)
刀がクロウの腹に迫る。

ギィン‼︎

刀はクロウの腹の直前で止まった。クロウが刀でソウスケの刀を防いでいる。
ソウスケ「なっ⁉︎」
フレア「クロウ‼︎」
クロウ「フレアが言ってたな。どこから来るか分かってるなら、タイミング合わせるだけで、防げるんだっけ?」
クロウは片手で刀を押さえながら、腰に帯びた刀を抜く。
ソウスケは刀を引こうとするが、逃げよう刀を引いた瞬間、腰の刀かあるいは今防いでいる刀で斬られることが分かっている。
足元に紋章のような物が浮かぶ。
クロウの目が真っ直ぐとソウスケの目を捉えている。
クロウ「そんなんでも俺の兄貴だ…。いつも厳しいし、ちょっとサボっただけでもすぐに鉄拳飛ばす時期もあったさ…。でも俺の兄貴さ…。なんだかんだで好きだったさ…。だから…俺が止めてやるよ…。」
腰の刀を抜ききる。
わずかにできた隙でソウスケはクロウから距離を取り、刀を構える。
クロウ「もう終わりだ‼︎」
刀を振り抜きながらソウスケを走し抜ける。
クロウ「天桜狂アマツサクラノグルイ…。」
クロウが刀を1本腰の鞘に収める。
ソウスケの体から血がしぶく。
クロウ「そういえば、なんだかんだで兄貴と一緒に酒とか飲んだことないよな?俺が今度地獄にでも行ったら一緒に飲まない?」
ソウスケ「ふん、お前のようなやつと地獄で顔を合わせたくはない。天国にでも行ってろ。」
クロウ「そ。寂しいねぇ。」
もう1本の刀を鞘に収める。
さらに1つ、ソウスケから大量の血が吹き出て、崩れ落ちる。
クロウ「はぁ~。」
フレア「クロウ?」
クロウ「いや~、連続殺人犯を退治できて万々歳、ところか?」
クロウが橋の下の川に目を落とす。
セリフは陽気な所を見せようとしているが、声から涙を隠せていない。
クロウ「兄貴が犯人だって信じたくはなかったけどさ、ま、仕方ないっていうかさ…。ほんと……くそっ…」
フレア「もう終わったんだ。あんたが終わらせたんだ。これでいいんだよ。」

本部に戻る頃にはいつの間にか朝になっていた。
腹に包帯をグルグルと巻かれたゲンダイが布団に横になっており、その横にはアクアとシーラが座っていた。それ以外には誰もいなかった。
ゲンダイ「お主ら‼︎無事だったか‼︎」
フレア「ゲンダイさん⁉︎生きてたんですか⁉︎」
ゲンダイ「勝手に殺すな、アホンダラ‼︎一太刀二太刀程度で簡単に死んでたまるか‼︎」
この人、実は不老不死なんじゃ…。
ゲンダイ「それで、終わったのか?」
クロウ「えぇ、終わりましたよ…。兄貴は俺が止めました。」
アクア「止めたって、兄貴は?」
クロウ「ああでもしないと止まりませんでしたからね…。人殺しの末路ってやつですか…。」
ゲンダイ「そうか…。うむ、よくやった。」
おっさん「あんたら、もう帰ってきたのか。それで犯人は?倒せたのか?」
外からおっさん達がゾロゾロと帰ってきた。
フレア「え?あ、あぁ…。」
どうしよう、クロウの兄が犯人だとは言えないし…。
クロウ「えぇ、兄なら俺が止めましたよ。」
おっさん「兄⁉︎まさか、犯人ってお前の兄貴だったのか⁉︎」
フレア「クロウ⁉︎」
クロウ「別にいいんだよ。嘘ついて隠し通すのは面倒くさくて嫌いなんだ。」
おっさん「そうだったのか…。止めたってことは…」
ゲンダイ「自分の手で兄貴の命を奪って止めたということじゃ。」
おっさん「そうか…。辛かっただろう…。」
クロウ「今頃地獄で裁かれてる頃ですよ。何十年かして俺が死んだら、頭から酒被らせてやるつもりです。」
ゲンダイ「はっはっは!その時はわしらの分も頼むぞ!さて、朝からなんだが、今日は休め。自警団のやつに後処理はやらせる。」
おっさん「はいよ。」
ゲンダイ「そうそうそれと、クロウ。」
クロウ「はい?」
ゲンダイ「わしはもう引退じゃ。」
おっさん「団長?」
ゲンダイ「わしは動けん。じゃがわしと同じくらい強いやつは自警団にはおらん。じゃから自警団の意味がない。ギルドを作ろうと言うとったな?わしはもうその時期が来たんじゃないかと思う。」
クロウ「ゲンダイさん…。」
ゲンダイ「今のままだと、酒飲みの役立たずばかりが集まるジジくさい集団になってしまうからのぉ。自警団の歴史に泥がついてしまう。ギルドってのは他所の町からも人を集めるんじゃろ?そっちの方がいい。」
おっさん「団長…。」
クロウ「分かりました。ですが条件が2個ほどありますよ。」
ゲンダイ「ほほう?」
クロウ「ギルドの建物を1から作るのも面倒なんでこの自警団本部を使わせてください。」
ゲンダイ「そいつはかまわん。いくらでも使ってくれ。もう1個は?」
クロウ「怪我が治ったらうちのギルドに所属してください。」
ゲンダイ「なぬ?」
クロウ「別に外に出て戦ってほしいってわけじゃないですよ。1人くらいそういうのがいても面白いかなってだけですよ。」
ゲンダイ「なっはっはっは‼︎面白いかな、か‼︎」
クロウ「せっかくなら楽しいギルドにしようかってね。」
ゲンダイ「良いだろう‼︎ならさっさと治してやらんとな‼︎」

クロノの病室。
最後の夜の日に無茶をしたせいで医者にこっぴどく叱られていた。病室を無断で抜け出したからだ。
フレア「…というのが事の顛末なわけよ。」
クロノ「ゲンダイさん生きてたのか。良かった。」
アクア「クロノはあとどんくらいかかりそうなんだい?」
医者「とりあえず1週間は布団からは出れない。その後は動いても問題なら布団から出るくらいなら許可を出せるが、走ったりはしちゃいかん、という感じかな。馬車に乗るにはさらにかかると思う。」
アクア「だってさ。2週間くらいはかかるんじゃないか?」
クロノ「2週間か…。」
シーラ「すみません…。」
クロノ「まだ言ってんの~?」
シーラ「でも何かお詫びになるようなことが…あ、そうだ!」
フレア「どしたの?」
シーラ「お詫びの代わりになるかは分かりませんけど、私がギルド専属の情報屋になってもいいでしょうか?」
クロノ「ギルド専属?」
シーラ「特定の人物や団体を相手にするということです。そういう情報屋もそれなりにいるんですよ。各地で集めた情報をその人やその人の仲間にいち早く伝えるんです。ギルドや自警団ですと、依頼や危険なモンスターが現れた際なんかに素早く行動することができたりするんです。」
クロノ「はぇ~。そりゃまたいいもんあんね~。そういうのあったら嬉しいじゃん。ねぇ?フレア。」
フレア「まぁ雇うかどうかはギルドマスターのハゼットさん次第ではあるけどな…。でもうちにはそういうのいなかったし、ありがたいと思うぞ。」
シーラ「クロノさんに恩返しできるよう精一杯頑張ります‼︎」
元気な仲間が1人加わってしまったようだ。

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