ヒーローライクヒール(リメイク連載中)

手頃羊

その2・死体と人形

[クロノ]
似た者同士、確かにサシュとメイは生きていないという点では似た者同士なのだろう。
マキノ「じゃあ私は準備をしてくる。メイ、サシュを頼んだぞ。」
メイ「了解しました。」
クロノ「俺らはどうします?」
ハゼット「俺らは待つとしよう。特にやることもないだろうし。」
マキノ「…そうだ、足りない素材があるんだった。ハゼット、ちょっと森の中から薬草を採ってきてくれないか?たくさん欲しい。」
ハゼット「薬草だな。分かった。」
マキノ「クロノは一応残っててくれ。」
クロノ「俺は行かなくていいんです?」
メイ「私は現在試運転の段階ですので、研究所が魔獣に襲われるなどの事態が起きた際、確実な戦力となる人が必要なのです。マキノは集中しすぎるとサイレンも聞こえなくなりますから。」
マキノの方を見ると、もういなくなっていた。

クロノ「一応俺は外にいますね。サシュもメイさんと一緒の方が安心そうだし。」
と言って表に出る。
なんとなく、お見舞いの時の退席しようとするお節介な親みたいな心地がしてきた。
まぁ、サシュも襲ってしまうかもしれない人間がいるよりは落ち着けるだろう。

研究所エントランス。
エントランスのソファでサシュとメイが横に並んで座っている。
メイ「生きているというのはどういう気持ちでしたか?」
サシュ「え?」
メイ「私はマキノのおかげで意思を持つことが出来ましたが、生きていません。サシュさんは昔は生きていました。生きているのと死んでいるのとで違いは感じますか?」
サシュ「違い…。体がいつも冷たいとか、そういうのならあるけど…。今こうして自分が意識を持ってるのを思うと、生きてるのも死んでるのもあまり変わらない気もします…。」
メイ「生きていると死んでいるは正反対なのに変わらないのですか?」
サシュ「メイさんが言っているのは命があるかないか、じゃないですか?生きていると死んでいるは確かに正反対ですけど、もっと違うことだと思います。」
メイ「命があるから生きているではない…ですか。」
サシュ「生きているっていうのは、きっと…やりたいことがあるとか、好きな人がいるとか、生きたいって思っている人のことなんだと思います。」
メイ「ではサシュさんは生きている、と言えるのですか?」
サシュ「どうでしょう…。生きたいと言っても、もう死んでしまったし…。」
メイ「やりたいことなどは?」
サシュ「やりたいこと…。ハゼットさんや、親切にしてくれたギルドの人たちへの恩返しかなぁ…。」
メイ「では、サシュさんは生きているということですか。私はどうなのでしょう。」
サシュ「メイさん?」
メイ「私は自分でやりたいと思ったことがありません。生きたいと思ったこともないですし、恋愛感情なども所持しておりません。私は死んでいるということなのでしょうか。」
サシュ「でも、私はメイさんのこと好きですよ!」
メイがサシュの方を見る。
メイ「それも、生きているに該当するのですか?」
サシュ「それは…分からないです。でも、メイさんは生きていてもいいと思います!」
メイ「…作られた体と心である私には誰かから好かれるということがあっても、その人を好きになることができません。好きになる方法も知りません。」
サシュ「好きになりたいと、思ったことはありますか?」
メイ「好きになりたい?」
サシュ「最善の行動とか、効率の良くなる選択とか、そういうのじゃなくて、好きになりたいって単純に思ったことは?」
メイ「私は恋愛感情を所持しておりませんし、そのようなことは…」
サシュ「恋愛感情を持ってないから好きにならないっていうのは違います。好きになるから恋愛感情になるんです。」
メイ「好きになるから恋愛感情に…」
サシュ「好きになることができないってことは、好きになりたいとは思ってるのでは?」
メイ「…私には分かりません。好きとかそういうのはまだ知りません。
サシュ「う〜ん…」
メイ「サシュさん、教えていただきますか?」
サシュ「え⁉︎あの…」
メイ「まずはサシュさんのことを好きになってみようと思います。どうすれば好きに…。好きというのは恋人や夫婦などが例に当てはまりますね。ならばそこから始めれば分かりますでしょうか?」
メイがサシュの両肩に手をかける。その力が強かったのとサシュがバランスを崩したのもあって、メイがサシュを押し倒す形になった。
メイ「あ、申し訳ありません。」
と言いつつも体勢を戻さずに続ける。
サシュ「あの、あの!」
メイ「単語なら知っております。愛、というものですね。ならばサシュさんと愛を育めば好きにたどり着くことができるでしょうか?」
サシュ「メ、メイさん、お、落ち着」
メイ「夫婦が愛を育む方法を私は知りません。マキノから入れられたプログラムにはその方法は無かったようです。サシュさん、教えていただきますでしょうか?」
マキノ「メイ、まずは落ち着こうか。」
メイ「マキノ、準備は終わったのですか?」
マキノ「ああ、あとはハゼット待ちだ。」
サシュ「あわわわ」
マキノ「それとメイ。」
メイ「なんでしょう?」
マキノ「相手を好きになろうというのはいいことだが、お互いが好きになっていたとしても一方的に好きを押し付けてはいかんぞ?」

クロノは、マキノさんはよくあの空気で入っていったなぁと一部始終を見ていたのである。

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