ヒーローライクヒール(リメイク連載中)

手頃羊

その2・手遅れ

[クロノ]
翌日の朝、早速馬車に乗り、目的地であるレイネデに向かう。
その道中、エリーに質問される。
エリー「このことは町長には言わなくていいんですか?」
レイネデに向かうことに関して、ギルドのメンバー以外には一切話していない。ガイアがいれば言ったのだが、いなかったので言わなかった。
ハゼット「クロノが言うには、見てから決めるんだそうだ。」
エリー「見てから?」
クロノ「嫌な予感がね…するんすよ。ゾンビになるウイルスってのは空気感染しません。そういうウイルスを含んだ粉のようなものを振りまけばそれを吸って感染するかもしれませんが、ゾンビから人へ直接感染するには噛まれたり、あるいは何らかの経緯でゾンビの肉やら血やらそういうのを摂取するような直接的なものでないと感染しないんです。それゆえ、ここから遠いレイネデでゾンビが出現したのが不思議なんです。」
アクア「でもそれと町長と何の関係があるんだい?」
クロノ「こないだのゾンビ騒ぎ、ガイアさんにゾンビの特性を説明した後にガイアさんにこのことは町長に伝えておくと言っていたんです。新しい脅威ができたんですから、町民にも何かしら伝えるかと思ったんですが、何も言ってこなかったじゃないですか。」
エリー「何か隠しているのではないか、と?」
クロノ「そんな感じがしてならないんです。推測でものを語るのはいけないとは分かっているんですが、何か関係があるのではないかと。」
エリー「具体的にどういう関係がとは考えているのですか?」
正直な話、何らかの方法で作り上げたのではないかと疑っているが、それはさすがに行き過ぎている。証拠もないわけだし、疑っているのだって陰謀なしにゾンビ事件はありえないという謎の偏見が頭に存在してあるからだ。
クロノ「あることはあるんですが、憶測ですので、なんとも…。」
ハゼット「まぁ、言ってこないのは俺も怪しいとは思っていた。俺も町長に言わないというのには賛成だ。」
アクア「何か…ねぇ。あたしにはさっぱりだよ。」
クロノ「それより、ゾンビの特性やらは覚えてますよね?」
アクア「近づかれる前に頭を撃ち抜く、だろ?」
エリー「近づかれたら頭を抑えて何か魔法で攻撃する、ですね。」
クロノ「はい、噛まれさえしなければ大丈夫なはずです。」
(レイネデに着くまでゾンビ対策の復習をしておこう。しすぎることはない。)

レイネデに着いた。
村というよりは町に近い気もするが、家が丸太で組み立てたようなものばかりなので村、ということなのだろう。入り口の時点で既にゾンビが大量にいる。
ハゼット「どうする?2:2で分散して調べるか?」
クロノ「そうですね…。」
村の横の大きな森を見る。森の奥からゾンビが次々と出てくる。
(…なぜ森の奥から人間のゾンビが出るんだ?)
森の中でキャンピングでもしていて、そこをゾンビに襲われたのなら出てくるだろう。しかし、魔獣がわんさかいるような森の中でキャンピングや、そうでなくとも人がたくさんいるとは思えない。村から逃げてゾンビの追跡を避けるために森の中に逃げ込んだというなら分かる。しかし、あまりにも大量に来すぎている。村の中にゾンビ化した村の人間はいるが、森からもくる量を考えると、多すぎる気がしてならない。
(何か奥にあるのか?)
ゾンビの発生源?行ってみる価値はあるかもしれない。
アクア「森がどうかしたのかい?」
クロノ「ちょっと気になります。2:2で分かれましょう。僕は森の方に行きます。」
アクア「ならあたしも森に行くよ。あたしは森の中の方が動きやすいからね。」
エリー「なら私とハゼットさんで村の中ですね。」
ハゼット「よし、いいだろう。何か注意する点は?」
クロノ「1匹ゾンビに見つかるだけで次々と押し寄せてきます。基本的には見つからないように動いてください。」
ハゼット「分かった。よし行くぞ。」

森の方に向かう。ゾンビがこちらに気づき、大量に押し寄せてくる。
アクアが弓を水平に構え、矢を同時に5本射る。矢と矢の間にレーザーの魔力が流れ、触れたものを次々切断していく。
アクア「どうだい、こんなんまだ序の口さ。」
クロノ「すごい技術っすね。でもまだ、森の中ですらないですからね。森の中はどうなってるか分かりませんよ?」
ゾンビ+森=超危険
さて、鬼が出るか蛇が出るか。そいつらが出てきてくれたほうがマシかもしれんな。蛇嫌いだけど。

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