ヒーローライクヒール(リメイク連載中)

手頃羊

番外編:かわいいものはかわいい・その1


[クロノ]
クロノ「ハゼットさん、闇退治に出かけてから4日かぁ…。」意外と時間がかかるものなのだろうか。

フレアは忙しいとか言ってどっかに消えたし、エリーはマキノに用事があると言って出て行った。レオは買い物に出かけている。ガイアには例のゾンビの特性について話したがギリギリまで休暇を堪能するらしく、自宅にいる。第一遊撃隊は例のゾンビ騒ぎの森で他にゾンビがいないかの調査中。
今、ギルドにはアクアと2人。
アクア「まぁ、あの人は遠征するとかなり時間かかるからねぇ。1ヶ月いないこともあったし、4日なんてまだ分からんさ。」
クロノ「1ヶ月ってなんの遠征行ってたんですか…。」
アクア「なんだっけ…、ドラゴンだっけ…?」
そんなのもいるのか。ホントにファンタジーの世界だな、ここ。
アクア「世界探してもドラゴン退治できるのは今はハゼットさんしかいないらしいよぉ~?」
あの人チートかよ。
クロノ「世界に1人…。あの人そんなすごいんですか…。」
アクア「まぁ、不老不死で二千年くらい生きてるって言うし、その辺の強いやつよりは強いさ。」
二千年…。そういえばあの人不老不死とかだったな。今度聞いてみよう。

いきなり、ドアがバンと開いた。レオが息を切らしながらこっちを見る。
クロノ「レオ?何かあったの?」
レオ「クロノさん‼︎」
こっちに突っ込んできた。目の前で止まって、目をキラキラさせながら
レオ「ついてきて欲しいところがあるの‼︎」
クロノ「ついてきて欲しいところ?」
レオ「うん‼︎」
なんていうか…外食好きな子供が親に「○○行こうよ~。」って言ってる感じの目だ。
レオ「中央の方に新しいお店ができたんだって‼︎それがね、可愛い女の子が可愛い服着て接客してくれるんだって‼︎」
メイド喫茶?
クロノ「俺は別に良いけど…。」
アクアの方を見る。
アクア「行っといでよ。あたしはそういう可愛い店ってのは苦手だからね~。ここで留守番してるよ。」
行くことにした。

ガイアが街の中央の方は治安が悪めだとは言っていたが、そんなではない。
昼間から酒を飲んで倒れているやつはいるが。
レオ「確か…あっちの方だって…。あ、あった‼︎」
自分はメイド喫茶には行ったことはないが、店の外装はなんとなくそれっぽい。
店名が読めない。
クロノ「なんて読むんだ?」
レオ「アリアージュ、だって。早く入ろ?」
急かされるので早速入ることにした。

店員「いらっしゃいませ。」
「「いらっしゃいませ‼︎」」
わ~お。レベルたっけぇ~。
店の内装はファミレスみたいな感じだ。
レオ「すっごーい‼︎こんなお店初めて‼︎」
こちらの世界の飲食店はファミレス形式ではないのだろうか。
確かに酒場は広い部屋のその辺に机や椅子を適当に置いてる感じだが、この店は本当にファミレスみたいに机と机を仕切っている。
店員「お席、案内しますね~。」
可愛らしい店員に案内される。レオの方を見ると完全にアイドルグループか何かを見てる女の子の目だ。
レオの性別って……いや、もう気にしないでおこう。誰だって可愛いものは好きだ。

店員「こちらのお店は初めてですか?」
レオ「は、はい‼︎」
緊張してるなー。自分は新しくできたファミレスに来たって感覚だが、レオはファミレスすら来たことないから余程緊張してるんだろうな。
店員「当店のオススメはアリアージュオリジナルのケーキでございます。チーズケーキに当店オリジナルのクリームとイチゴを混ぜたクリームを塗ったケーキです。」
クロノ「へぇ~。じゃあ俺はそれにしようかな。ってか値段ってどれぐらいするんですか?」
店名「ケーキですと、8バレくらいですね。ホールケーキの8分の一くらいのサイズです。」
バレ、というのはこの世界の通貨だ。2バレで100円。つまり、8バレとは大体400円。ちょっと高めのケーキのようだ。
クロノ「レオは?」
レオ「他にオススメとかってないですか?」
店員「イチゴではなくブルーベリーやコーヒーを混ぜたケーキもオススメですね。」
レオ「じゃあブルーベリーのやつください‼︎」
店員「かしこまりました。しばらくお待ちくださいませ。」
そういって店の奥に消えてゆく。

レオ「はぁ…。可愛いなぁ…。」
クロノ「…それは良かったな…。」
店の奥から視線がレオに向かっているのが見えた。顔はよく見えなかったが、店のスタッフではあるのだろうが…。

すぐ横の席で男が騒ぎだす。
男「なぁ…ちょっとくらいいいだろぉ?なぁって…。」
店員「ちょっ、あの、やめてください!ここそういうお店ではないので!」
男「んなわけねぇだろぉ?そんな派手な服着ちゃってさぁ…。ほぉら、こっち来いって!」
治安が悪いとは言っていたが、ガイアが言いたかったのはこういうことだろうか。店員の手を掴み引っ張っている。
こういうのは見てるだけでもイラっとくる。しかもそれがすぐ隣で行われているから尚更くる。レオも困っている様子だ。
立ち上がって男の前に立つ。
クロノ「あの…静かにしててもらえます?店員に手ェ出す店じゃないんですよ。」
最大限、怒りを見せつける声で話しかける。喧嘩になろうと知ったことじゃない。店には迷惑かもしれないが、こういう客には『分からせて』やりたい。
男「あァ?んだテメェ?邪魔すんじゃねぇよ‼︎」
クロノ「あんたがこっちの団欒の邪魔してるんだよ。いいからその手を離したらどうだよ。ってか離せ。」
男「あァ?」
応じる様子がないので、無理矢理手首を掴み、思い切り握る。
男「いって‼︎」
あまりの痛みにさすがに手を離す。
男「テメェ…調子に乗ってんじゃねぇぞ…?」
さすがに騒ぎすぎたか、店中の視線が集まる。
クロノ「調子に乗ってんのはあんたの方だと思いますけどね。」
男「グダグダうっせえんだよ‼︎」
自分の胸ぐらを掴み、右手で拳を作る。
クロノ「店内で喧嘩はマズイですよ。やるなら外出てやりません?」
男「うるせぇって言ってんだろうが‼︎」
男の拳が脳天に直撃…した瞬間カウンター発動する。右手にダメージを流し、エネルギーを魔力に変え、電撃でシビレさせる。
男「あががががががががががががががが」
ピクピクと痙攣し、倒れかかってくる。一旦店の外に捨ててこよう。外に出てアリアージュと隣の店の間の路地のど真ん中に放り投げる。足から落としたし、大した怪我はしてないだろう。多分。興味はない。

もう一度店に入り、レオの席に戻る。
レオ「だ、大丈夫なの?」
クロノ「大丈夫大丈夫。だんだん魔力の扱いに慣れてきたからね。」
店の中も何事もなかったかのように営業が続いていた。
すると店の奥から1人の女性がやってきた。カッコイイ系の女性だ。
女性「先ほどは店のトラブルを対処して頂き誠にありがとうございます。」
丁寧な挨拶だ。
クロノ「えーと、あなたは…?」
女性「私はアリアージュのオーナー、シレイノと申します。」
笑顔をこちらに向け、そしてレオにも向ける。その時のシレイノの目を見て確信する。
さっきのレオを見ていた視線…。こいつだ。

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