ヒーローライクヒール(リメイク連載中)

手頃羊

番外編:異世界男と生活事情

[クロノ]
この世界に来て2日目、自分はあることを忘れていた。
自分は高熱を抱えていたのだった。
こっちに来た日はあのゴタゴタで自分が高熱なのを忘れることができた。
しかし、ギルドの2階にある部屋でそこそこ柔らかいベッドで一晩過ごし、爽やかな朝日を浴びた安心感からか、自分が病気であることを思い出し、今頭痛が痛いというような状態である。
コンコンとドアをノックされる。
フレア「おーい、起きてっかー?もう朝なんだからそろそろ起きたらどうだよー。入るぞー?」
どうする⁉︎さすがにギルドの人にインフルをうつすのはマズイ…‼︎
ガチャ
フレア「おはよーさん、ってなんだ起きてたのか。ってかお前顔赤いぞ、どうした?」
誤魔化すよりは正直に話した方がいいだろうか。
クロノ「風邪…だね…。」
フレア「風邪ェ?そんなもん治せるだろ?なんの為の魔力だよ。先降りてるから、顔出しとけよ~。」
え、魔力?そんなことも出来んの?俺魔力なんぞ持ってませんよ?

一階まで降りる。
もちろんだが全員に突っ込まれた(マキノはいなかった)。
フレア「お前、風邪の治し方知らないわけじゃないだろ?」
どうしよう、異世界の住人だから魔力を持ってないと言うべきだろうか…
ハゼット「このギルドのやつなら信用できる。言ってもいいと思うぞ。」
ハゼットからOKが出た。
エリー「言ってもいいって、なにがです?」
クロノ「えっと…その…自分、こことは違う世界?から来て…」
いざ言うとなるとキツイな、これ。
完全に痛い人みたいな発言だよ。
こんなん顔赤くなるに決まってるやん。よかったよ、先に赤くなってて。
アクア「違う世界ってことは、異世界?」
エリー「異世界ってハルカさんの時みたいな感じですか?」
なんだみんな知ってんのか。これじゃあ恥ずかしそうに話してた俺が恥ずかしいじゃん。余計顔が熱くなる。もう熱いけど。
レオ「じゃあ、風邪治せないの?」
ハゼット「魔力さえ持ってれば別なんだがな…。異世界人が魔力を持ってるわけがないし、無理だろうな。」
魔力か…。こんな異世界に来たわけだし、使ってみたいとは思うんだがな…。
ふと手を見る。手のあたりまで熱さを感じる。顔もかなり熱いが、手もそんなに負けてない。火が出そうなくらいだ。
…火……?
何かを感じるような…感じないような…

フレア「にしても、異世界から来たなら始めから言ってくれりゃあ良かったのに。」
ハゼット「あまり言いふらすようなことでもなかったからな。」
フレア「もっと信用してくださ…ってあれ?クロノ…お前手から火出てない?」
クロノ「へっ?」
いかん頭がボーッとしてた。手から火?いったいなんのこと……………………………
出てるね。俺の手が真っ赤に燃えてますね。なんていうか火のオーラ的なものを帯びてますね。
エリー「あらあら。」
ハゼット「お前、魔力使えたのか⁉︎」
クロノ「いやいやいや、知りませんよ⁉︎なにがなんだが分かんないんですけど⁉︎」
これヤバいんじゃないの?俺このまま灰になっちゃうの⁉︎
ハゼット「落ち着け、とりあえず落ち着け。まずはそれを解除するんだ。」
クロノ「解除ってどうやって⁉︎」
ハゼット「手が燃えてるようなイメージをやめるんだ。手を冷やせ。」
手を冷やせ⁉︎いったいどうやって…………………
できたわ。
案外クールダウンってのは簡単にできるものなのか。
アクア「なんだい、あんた結構魔力の扱い上手いじゃないか。」
上手いって言われてもなにが起きたのかさっぱりですよ。
なんで魔法使えたんだ?俺?
ハゼット「魔力を持っていないはずの人間が魔力を…なにが…いや…」
ブツブツと考え込んでいる。あんたに分かんなきゃ俺にも分からんよ。
ハゼット「一つ、仮設を立てるなら…お前、あの湖の水を飲んだか?」
あの湖?
クロノ「湖って俺が落ちたとこ?」
ハゼット「そうだ。あそこは魔力湖と言われていて、水が魔力を含んでいるんだ。少量程度ならただのヌルヌルした水だが、大量に飲むと発狂したり腕が折れたり、最悪死に至る。」
水飲むだけで腕が折れるってどういう状況だよ。
クロノ「ええ、飲みましたよ?結構。」
ハゼット「…フム……。おそらくだが、あの湖の水を大量でもなく少量でもなく、いい感じの量だけ摂取すると、魔力を体に取り込むことができるということなのだろう。」
うーわ、マジかよ。俺知らない間にそんなギャンブルをしてたのか。
ハゼット「今のお前なら、病気ぐらいは治せるだろう。」
治せるのか?とりあえずどうやんの?
ハゼット「やり方…といっても感覚の問題ではあるんだがな、自分の中の病気を浄化するイメージで魔力を使ってみろ。」
いや、いきなり魔力を使ってみろって言われても、使い方を教えてく……………………なんだ、意外とできるもんだな。
クロノ「できた…かな…?頭痛は治ったけど…」
フレア「マジかよ‼︎初めてなのに1発でできるとか天才だな、お前‼︎」
ハゼット「使ったことのない魔力をここまで…なかなかすごい素質あるな、お前は。ここの世界の住人だったら良かったのにな。」
ほんとな、ここまで楽に扱えるならここの住人になっても別にいいんだけどね。さすがにそれはマズイ。
いやしかし、これで色々と生活は楽にできるに違いない。
バンザイ、俺。はじめてのまりょく。

クロノ「そういえば、マキノさんは?あの人ここのギルドの人ですよね?」
昨日はいたけど、今日は姿を見ていない。
エリー「あの人は別の場所に研究施設を持ってるの。普段そこにいるのよ。ギルドに顔を出してる時の方が少ないわね。」
別の場所にわざわざ作ってるのか。
エリー「会う用事があるなら連れて行きましょうか?」
クロノ「あ、いえ!気になっただけですし!」
なんだろう、すごく気になる。
クロノ「あの人はどういうの作ってるんですか?」
エリー「色々作ってるわよぉ。服、武器、乗り物、家具…。ジャンルは特に決めてないんじゃないかしら?」
どうやらかなりの天才科学者のようだな。
そのまま異世界に行ける装置を作ってもらえませんかねぇ。

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