時々思うことというより、常識を疑う事。

ノベルバユーザー173744

時々思うことというより、常識を疑う事。

世間は不条理だと思う。

しゃこの甥、兄の息子が今年小学校に入学した。

お祝いに父は机を送ったが、ランドセルは兄嫁のお父さんに買って貰ったらしく、その話はそれで終わると思っていたのだが、父が困りきった顔になって帰ってきた。

その頃はしゃこは二回の睡眠導入剤を多量摂取による、救急搬送で実家に押し込められていた。

「どうしたん……」

何もする気も起きず、ボーッとしていたしゃこが、隠し財産を漁る父に聞く。

『普通、自分のへそくりを家族の前で出したらあかんやろ!?』

と言う突っ込みが当たり前にあるのだが、しゃこと妹の前では探す。
ちなみにしゃこは元々神経質で、引き出しの中や開き戸の中を分かりやすく並べかえるのに執念をかけていた。
そのため、一度、しっかりこつこつ貯めた父のへそくり……しかも、この年でこれだけ?小銭じゃん!?その上袋ボロボロ……を見つけてしまい、本気で泣いてしまった。
父は、うちの家では、珍しくまだ一応常識を知っているのだ。
その為、丁度誕生日と父の日が同じ月のために、ボロボロの銀行の紙袋を、安物ではあるが、長財布にして隅に入れておいた。
それだけでは心もとないと、当時、高月給だったので、

『誕生日好きなものを買ってね』

と、一万円を入れておいた。

えぇぇ!?たったそれだけ?

と思われるかもしれないが、当時男女の給料の格差はあり、その上女性だから正社員にしたら結婚して辞められるから困ると、契約社員で、自分より働かない男性正社員にこき使われ、税金や保険などを払った手取りの給料が9万円だった時には涙が出た。
しかも、皆勤手当込みである。
有給をとれば皆勤手当が無くなるので、5000円引かれる。
つまり、8万円台だった。

そんな職場から転職した職場は頑張れば頑張るほど、給料が上がる。
それは軽い言葉ではなく、真摯に対応し、情報を探して説明し、納得してもらってこそ得られるものであり、自分の達成感もあった。
倍以上は貰えたし、一回、会社の優秀社員として金一封を戴いたときは、貯金しよう!!と思っていたのだが……流れ流れて消えていき、借金を背負うはめになった。
借金を返すために借金し、それなのに、返済金を母は催促する。
電気代、ガス代、水道代……普通の家ならいいのだが、家はビルで水道代も電気代も商業用として扱われ、高額である。
水道代は二月に一度6万円。電気代は一月9万円。



その頃は何のために、生きているんだろうと思っていた。



まぁ、それから年を取り、父も自分のへそくりをギャンブルに使うこともなく、時々古本屋で時代劇の小説を100円で買ってきて読んでいる。

その為、時々、

「何なら、三國志貸したげるよ~?4コマがいい?小説?それとも正史?」

と言うと、父は、

「面白いの」

と言うので、白井恵理子先生の『stop劉備くん』シリーズを貸したら変な顔になり、杜康潤先生の『孔明のヨメ。』を貸すと、いつもは皆のいる居間で読むのに、自分の部屋に持っていって笑っていた。

コミックスは、横山光輝先生の『三国志』とかしか駄目なんだろうと思っていたのだが、『孔明のヨメ。』は、親子間の溝と言うよりも、年代間に男女間の溝が埋まり、よかった!!先生にお礼の手紙を!!と思っていたりする。



話は戻り、父がへそくりを覗き溜め息を吐く。

「本当に……困ったのぉ……」
「何が?」
「坊が、机だけじゃなくベッドが欲しい言うての……上のも欲しい言うて、二段ベッドを買うけん、金出してくれ言うての……」

溜め息を吐く父に、最近は怒りの導火線に火が着いて、すぐに爆発!!執念と怨念の花火を挙げたいと誓うしゃこは、

「なんでやねん!!机買うたやろ!!そやのに、またベッドってなんや!?」
「いや……わしは働くばっかりで知らんかったんやが、母さんが、お前たちの結婚資金とか、結納資金を使いきっとって……兄ちゃんの結納も兄ちゃんが出したんじゃ……で、度々返してくれ言うて……」
「ど阿呆!!半ば、向こうの家に入り婿状態やのに!!実家に金たかるんか!!それよりも、もう10年で!?10年!!あれもくれこれもくれ!!こんな状態のうちにまでたかって、何様や!!ベッドぐらい自分で買え言えばいいんじゃ!!」

切れたしゃこに、

「いや……最近、ヨメさんがパートで働いて、建てた家のローンを払いよるけんの。お父さんがたに、二人の面倒を見させとるし、申し訳ないんじゃ……」
「兄ちゃんが、向こうの家に家を建てた時点で、向こうの人間じゃ!!たかるな!!うちにもたかっとんのに!!」
「えぇぇ!?そうなんか!!」

父の一言に、

「さっきも言うた!!それにたかられとる!!何が『わしら金ないけん、出してくれや!!』よ!!父さん!!うちがいくらだしたと思とんねん!!ベッド代に使うならうちにちょうだいや!!テディベアを買いたいねん!!」
「ど阿呆!!いつまでぬいぐるみで遊んどるんぞ!!」
「……うえぇぇ……ユエちゃん……お父さんが怒る……我慢しとったのに……テディガール……うぁぁぁぁーん」

ベソベソし始めると出てくるのは妹。

「お父さん!!姉ちゃんをいじめんのよ!!それにな?ちゃんと私が、お中元に御歳暮、兄ちゃんと、お父さんのところに贈るのに、兄ちゃんの所からはないんで!!何様なん!!それに、お姉ちゃんは、ユエちゃんと寝とき」
「はぁ!?お前が出しとんか!?」
「当たり前やろ!?お母さんが出すわけないじゃん。まぁ家族やけんとは思うけど、ありがとうぐらい無いんか!?冗談じゃないわ!!」

と妹は切れていた。
元々、

『めんどいのは嫌。鬱陶しいのもいややけん結婚せんわ』

と言う妹を、早く嫁にと願っていたのに、妹の一言は手厳しい……。

「姉ちゃんは一杯苦労したんやけん!!その分を返すんが当たり前やろ!!」
「しかしなぁ……」
「家からでて、嫁の家に二世帯建てて、住んどる人間が、でかい面すんな!!命令ばっかりすんな!!そういうとって!!一体いつまで自分をお偉いさんやと思とんねん!!」

『だいっきらいや!!』

怒鳴った私の怨念が届いたのか、兄の家の二世帯の階段は細く、机もギリギリにしか入らなかったため、二段ベッドも当然外した状態でも運べず買うのを諦めたらしい。

『ざまぁみろ!!くそ兄貴!!四十も越えたおっさんが妹や弟、その上父さんまでたかるけんや!!やりぃ~!!』

と心の中で高笑いした。



その後祖母が逝き、昨日、初盆だったが、父に、

「うち、足腰本気でいかんけん……立って歩くんも、四つん這いもきついんよ。悪いけど行かんわ」
「お前、いい加減に仲直りせぇや」
「何でやねん。向こうが謝ってくるまでは許さへん!!あぁ、いつもたかるけん、そこにペコちゃん人形を揃えておいとったわ。今度見にいっとぉみ?ぜーんぶないけんな。売っとるで。で、懐に全部いれるんや」

姪の誕生日までに集めようと思っていたペコちゃん人形合計15体である。
最初、ポコちゃんが甥に似ていて、可愛かったので懸賞に運良く当たったのもあり、集めていたのだ。
甥に姪は、悪くないが、父親の一言で、父親の実家に帰ると、

「じいちゃん、おもちゃ買ってね!!」
「ゲームセンター!!いくんでしょ?パパがいってたよ」

と言うようになり、何でやねん!!と突っ込むようになった。
何でパパが!!行くのに、祖父や叔母が金を払うのだ。
毎回来る度にお菓子にあれこれ準備している。
それなのに、兄は、

「今日は焼き肉食いたいけん、予約しとこうや。金はあいつ(弟)が払うやろ?」

と平然と言うのだ。
常識を疑う。

この間、久しぶりに友人と逢った。
変わらない友人との話に、友人の子供の本当に可愛いこと。

「……はぁぁ……癒しやわぁ……。泣かんかったねぇ?偉いね?おばちゃん、アンパンマンやけんかな?」

子供に構いすぎると泣かれるので、声をかけて積み木を差し出す。
にこっと笑う瞬間を写真に収めて、ニヤリ(* ̄ー ̄)。

「美少女図鑑追加~!!そして、美女図鑑も追加~!!!!って、去年会ってないから一昨年……変わってない!!美魔女!!いくつやねん!!」
「誕生日プレゼントくれたんは、しゃこやろ!!馬鹿なこと言わんのよ」
「フフフ……ロリショタ大好きだからねぇ……萌え萌えするのです♪」
「怖いわ!!」

しゃこは、家族と距離をおくことに決めた。
病院の先生も余り頼りにならない。
主治医の先生と、自分の体と、友人たちやなろうの皆さんのお陰で、一歩進めた。

友人との別れの時に、

「うちねぇ……頑張って、行こうと思っとるんよ。応援してくれる?」
「するよ~!!頑張って!!」
「アハハ~!!数年後に『結婚します!!式に来てね!!』って送ろっか?」

二人で笑った。

「行く行く!!」
「その時妊娠しとって、超超高齢出産のため、花嫁は入院中です!!って……」
「それは、しゃこには想像つかないわ~!!でも、あったら、素敵やねぇ」

友人の実家に、荷物を持っていきながら、自分の事は自分で……そして、もう流されないと決めたのだった。

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