引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
創造神の部 【希望と絶望を知るがよい】
――美しい。
創造神ディストは二マアッと両頬を吊り上げた。
絶望的な状況に置かれてもなお、活路を見出していく人間たち。
見事だ。本当に。
王子トルフィンの計らいにより、世界で生き残っている多くの人間・モンスターが、わずかながら希望を見つけだした。
いまは駄目でも、いつか王子たちが天使たちを助けてくれると。
――素晴らしい。
どうせ彼らは死ぬ運命。
それは変わらないというのに。
せいぜいあがくがいい。
そして希望を抱くがよい。
期待と渇望がピークに達した頃、私が粉々に砕いてくれよう……
むふ。むふふふふふ。
「なにニマニマ笑ってんのよ。気持ち悪い」
「……ん?」
ふいに聞き覚えのある声がした。
星合の間。
創造神が下界を観察し、操作する――世界の最上位に位置する場所。
そこに予告もなしに現れる無粋な輩といえば、彼女しかいまい。
創造神ディストはコホンと咳払いし、眼鏡の中央部分を持ち上げた。
「君か。ノックくらいしたらどうだね」
「なーに言ってんのさ。あんたのことだ。あたしの気配くらい、とっくに気づいてただろう?」
星合の間は、夜闇に包まれる室内にあって、無数の星が照明代わりとなっている部屋である。そこの玉座に座り込み、ディストは下界の様子を透視していた。
物音のひとつ無いその部屋には、大きな星の紋様が描かれている。その星の角部分に、ひとつ、光の柱が浮かび上がった。
数秒後、シュイインという儚げな音を響かせながら、光の柱に人影が発生する。
小さい女の子の影。
ディストは数秒も前から、かの者の正体を察していた。
「熾天使ミュウよ。久しぶりだな」
ディストの呼びかけと同時、光の柱は完全に薄れ、人影の姿を明確にさらけ出した。
熾天使。
天使における最上位の階級。
三対六の白翼を携え、熾天使ミュウはちょこんと肩を竦めた。
「相変わらず趣味の悪いことやってるわね。飽きないの?」
「ふふ、これが私の性分でね。君の性癖と似たようなものさ」
「ふうん。ま、いいけどね」
「……どうしてここに来た。まさか孤児院の《仲間》を皆殺しにしてきたのかな」
「うん。我慢できなくなっちゃった」
てへ、と可愛げのある声を発し、舌を突き出すミュウ。見た目はたしかに、ただの子どもにしか見えない。
ディストは頬杖をつき、盛大にため息をついた。
「我慢しろと言っただろう? おまえには忍耐が足りないな。智天使に落とそうか」
「や、やめて。それだけは勘弁」
顔の前で両手を合わせるミュウ。彼女は気丈な娘だが、やはり階級を落とされるのは気分が悪いようだ。
「これ以上の勝手な行動は慎んでもらおうか。……なに、心配はいらん。今後、君には重要な仕事を任せることになる。国王なり王子なり、好きなだけ殺すがいい」
「ほんと!? いっぱい殺していいの?」
「ああ。好きにするがいい」
「やったね、ありがとう!」
一転してぴょんぴょん飛び跳ねるミュウ。
ミュウには異常ともいえる性癖がある。
すなわち、殺人癖。
数年前――ゴルムに矢を向けられた彼女をディストが助けなければ、まず間違いなく、彼女が人間軍を殲滅させていた。そうなってしまっては、せっかくの《観察》が無になってしまうというのに。 
「あ、そういえば」
物思いに耽るディストに、ミュウは翼を羽ばたかせて言った。
「いまの見た? トルフィンたちの中継」
「ああ」
「生意気じゃない? 殺してきていいかな?」
「まあ待て。ただ殺してしまっては面白くない」
そこでディストは片頬を吊り上げた。 
「存分に遊び、踊り疲れたところを叩き込む。徹底的な希望と絶望を知らしめてやろうではないか。……来い、面白いショーを見せてやろう」
創造神ディストは二マアッと両頬を吊り上げた。
絶望的な状況に置かれてもなお、活路を見出していく人間たち。
見事だ。本当に。
王子トルフィンの計らいにより、世界で生き残っている多くの人間・モンスターが、わずかながら希望を見つけだした。
いまは駄目でも、いつか王子たちが天使たちを助けてくれると。
――素晴らしい。
どうせ彼らは死ぬ運命。
それは変わらないというのに。
せいぜいあがくがいい。
そして希望を抱くがよい。
期待と渇望がピークに達した頃、私が粉々に砕いてくれよう……
むふ。むふふふふふ。
「なにニマニマ笑ってんのよ。気持ち悪い」
「……ん?」
ふいに聞き覚えのある声がした。
星合の間。
創造神が下界を観察し、操作する――世界の最上位に位置する場所。
そこに予告もなしに現れる無粋な輩といえば、彼女しかいまい。
創造神ディストはコホンと咳払いし、眼鏡の中央部分を持ち上げた。
「君か。ノックくらいしたらどうだね」
「なーに言ってんのさ。あんたのことだ。あたしの気配くらい、とっくに気づいてただろう?」
星合の間は、夜闇に包まれる室内にあって、無数の星が照明代わりとなっている部屋である。そこの玉座に座り込み、ディストは下界の様子を透視していた。
物音のひとつ無いその部屋には、大きな星の紋様が描かれている。その星の角部分に、ひとつ、光の柱が浮かび上がった。
数秒後、シュイインという儚げな音を響かせながら、光の柱に人影が発生する。
小さい女の子の影。
ディストは数秒も前から、かの者の正体を察していた。
「熾天使ミュウよ。久しぶりだな」
ディストの呼びかけと同時、光の柱は完全に薄れ、人影の姿を明確にさらけ出した。
熾天使。
天使における最上位の階級。
三対六の白翼を携え、熾天使ミュウはちょこんと肩を竦めた。
「相変わらず趣味の悪いことやってるわね。飽きないの?」
「ふふ、これが私の性分でね。君の性癖と似たようなものさ」
「ふうん。ま、いいけどね」
「……どうしてここに来た。まさか孤児院の《仲間》を皆殺しにしてきたのかな」
「うん。我慢できなくなっちゃった」
てへ、と可愛げのある声を発し、舌を突き出すミュウ。見た目はたしかに、ただの子どもにしか見えない。
ディストは頬杖をつき、盛大にため息をついた。
「我慢しろと言っただろう? おまえには忍耐が足りないな。智天使に落とそうか」
「や、やめて。それだけは勘弁」
顔の前で両手を合わせるミュウ。彼女は気丈な娘だが、やはり階級を落とされるのは気分が悪いようだ。
「これ以上の勝手な行動は慎んでもらおうか。……なに、心配はいらん。今後、君には重要な仕事を任せることになる。国王なり王子なり、好きなだけ殺すがいい」
「ほんと!? いっぱい殺していいの?」
「ああ。好きにするがいい」
「やったね、ありがとう!」
一転してぴょんぴょん飛び跳ねるミュウ。
ミュウには異常ともいえる性癖がある。
すなわち、殺人癖。
数年前――ゴルムに矢を向けられた彼女をディストが助けなければ、まず間違いなく、彼女が人間軍を殲滅させていた。そうなってしまっては、せっかくの《観察》が無になってしまうというのに。 
「あ、そういえば」
物思いに耽るディストに、ミュウは翼を羽ばたかせて言った。
「いまの見た? トルフィンたちの中継」
「ああ」
「生意気じゃない? 殺してきていいかな?」
「まあ待て。ただ殺してしまっては面白くない」
そこでディストは片頬を吊り上げた。 
「存分に遊び、踊り疲れたところを叩き込む。徹底的な希望と絶望を知らしめてやろうではないか。……来い、面白いショーを見せてやろう」
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