引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
トルフィンの部 【アグネ湿地帯へ】
トルフィン一行は、アルスを交えて教室に戻った。
一番驚いたのはもちろんセレスティアだった。
重罪を犯し、シュロン学園で服役しているはずの彼がなぜ――そう思うのも無理からぬことだった。
だが、たとえ過去に犯罪に手を染めたとしても、アルス自身は悪人ではない。それは彼女自身よくわかっている。
加えてこの緊急事態だ、彼のような凄腕の剣士は大きな助けになる。
天使の《ステータス操作》が無効化されるのも大きい。
トルフィンが事の経緯を説明し、アルスが頭を下げ、セレスティアも納得することとなった。
「まさかあなたの力をまた借りることになるなんて……思ってもいなかったわ」
「はっ。不肖アルス、未熟ながらあなたがたの護衛を努めさせていただきます」
そう言って王女の前で頭を垂れるアルス。
ディストにさえ操られなければ、彼もこうして無事に職務を全うしていたかもしれない……そんな切なさを抑えながら、トルフィンは椅子に座りながら言った。
「で、どうするよ。これから」
「そうね。シュン君に言われた通り、天使たちからみんなを守りたいのだけど……」
言いながら、セレスティアはちらりと視線を移した。その先には、トルフィンたちがかろうじて救出できた生徒たちと、レイア先生たち。
怯えて縮こまっている生徒たちを、レイア先生が優しい声で励ましている。
「……なるほどな」
セレスティアが言わんとすることを、トルフィンもなんとなく察した。
天使たちに虐げられている人々は世界各地にもっと存在するだろう。シュロン国内だけでも充分な救助ができていない。セレスティアが管理している孤児院も気がかりだ。あそこにはミュウをはじめとする孤児が大勢いる。
すべての人々を助けにいきたいのは山々だが、ではこの生徒たちはどうするのか。この場所に放っておくのか。それこそまた天使が現れたらどうする――
トルフィンたちと一緒に生徒たちにも来てもらうか。
いや、大人数での移動は危険だし、なにより子どもたちがついてこられるかどうか……
難しい顔をしているトルフィンとセレスティアに、アルスはふっと口を開いた。
「王女様。アグネ湿地帯という場所を覚えておいでですか」
「え……」
セレスティアが小さく目を見開く。
「え、ええ……まあ、色々あった場所ですからね」
「子どもたちはそこに預けましょう。《悪魔》たちがきっと助けになってくれます」
「あ、悪魔たちが……?」
そこでトルフィンたちは驚愕の事実を知った。
アグネ湿地帯に住まう《悪魔》とは、すなわち元神族であること。
彼らはディストに対抗すべく、はるか昔から活動していたこと。
アグネ湿地帯に蔓延る《紫の瘴気》とは、実は神族除けの役割を果たしていること……
「し、知りませんでした……。まさかあの場所にそんな秘密があったとは……」
「その歴史と記憶はディストにより封印されましたからね。覚えていないのも道理です。王女様、失礼ですが《ワープ》は使えますか?」
「いえ、恥ずかしながら……」
「そうですか。私も連戦で力を使い果たしてしまいました。今日はゆっくり休み、明日、私が生徒たちを湿地帯にワープさせましょう」
一番驚いたのはもちろんセレスティアだった。
重罪を犯し、シュロン学園で服役しているはずの彼がなぜ――そう思うのも無理からぬことだった。
だが、たとえ過去に犯罪に手を染めたとしても、アルス自身は悪人ではない。それは彼女自身よくわかっている。
加えてこの緊急事態だ、彼のような凄腕の剣士は大きな助けになる。
天使の《ステータス操作》が無効化されるのも大きい。
トルフィンが事の経緯を説明し、アルスが頭を下げ、セレスティアも納得することとなった。
「まさかあなたの力をまた借りることになるなんて……思ってもいなかったわ」
「はっ。不肖アルス、未熟ながらあなたがたの護衛を努めさせていただきます」
そう言って王女の前で頭を垂れるアルス。
ディストにさえ操られなければ、彼もこうして無事に職務を全うしていたかもしれない……そんな切なさを抑えながら、トルフィンは椅子に座りながら言った。
「で、どうするよ。これから」
「そうね。シュン君に言われた通り、天使たちからみんなを守りたいのだけど……」
言いながら、セレスティアはちらりと視線を移した。その先には、トルフィンたちがかろうじて救出できた生徒たちと、レイア先生たち。
怯えて縮こまっている生徒たちを、レイア先生が優しい声で励ましている。
「……なるほどな」
セレスティアが言わんとすることを、トルフィンもなんとなく察した。
天使たちに虐げられている人々は世界各地にもっと存在するだろう。シュロン国内だけでも充分な救助ができていない。セレスティアが管理している孤児院も気がかりだ。あそこにはミュウをはじめとする孤児が大勢いる。
すべての人々を助けにいきたいのは山々だが、ではこの生徒たちはどうするのか。この場所に放っておくのか。それこそまた天使が現れたらどうする――
トルフィンたちと一緒に生徒たちにも来てもらうか。
いや、大人数での移動は危険だし、なにより子どもたちがついてこられるかどうか……
難しい顔をしているトルフィンとセレスティアに、アルスはふっと口を開いた。
「王女様。アグネ湿地帯という場所を覚えておいでですか」
「え……」
セレスティアが小さく目を見開く。
「え、ええ……まあ、色々あった場所ですからね」
「子どもたちはそこに預けましょう。《悪魔》たちがきっと助けになってくれます」
「あ、悪魔たちが……?」
そこでトルフィンたちは驚愕の事実を知った。
アグネ湿地帯に住まう《悪魔》とは、すなわち元神族であること。
彼らはディストに対抗すべく、はるか昔から活動していたこと。
アグネ湿地帯に蔓延る《紫の瘴気》とは、実は神族除けの役割を果たしていること……
「し、知りませんでした……。まさかあの場所にそんな秘密があったとは……」
「その歴史と記憶はディストにより封印されましたからね。覚えていないのも道理です。王女様、失礼ですが《ワープ》は使えますか?」
「いえ、恥ずかしながら……」
「そうですか。私も連戦で力を使い果たしてしまいました。今日はゆっくり休み、明日、私が生徒たちを湿地帯にワープさせましょう」
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