引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―

魔法少女どま子

シュンの部 【初めての本気】

 かつてシュンは《悪魔》と戦ったことがある。
 数年前、セレスティアとともにアグネ湿地帯に強制転送されたとき、突然襲ってきた巨大蜘蛛を圧倒的ステータスで追い返したのだ。

 アリアンヌいわく、それはシュンの実力を計るための、いわばテストだったらしい。これでシュンが《弱者》と判断された場合、アリアンヌが彼に目をかけることはなかったという。

 その巨大蜘蛛の深紅の双眸そうぼうが、ぴたりとシュンを捉えた。以前のような《敵意》は感じ取れないが、代わりに曰く言い難い威圧がある。これが神の霊気ってやつか。

 ――あんときは実力隠してやがったな……
 シュンもさっと表情を引き締め、戦闘にすべての意識を集中させる。隣のロニンも同様、剣に手を添えたまま、悪魔たちの動きを伺っている。

「お兄ちゃん。本気で来るって言ってるよ……みんな」
「……マジかよ」
 シュンは思わず乾いた笑みを浮かべた。

 巨大蜘蛛だけではない、他の五十二体の悪魔達からも、計りがたい圧力を感じる。彼らのステータスをシュンは知らないが、少なくとも、《神の霊気》そのものはシュンよりはるかに強いはずだ。

 ――こりゃあ結構キツいかもな……
 シュンは表情を崩さず、真剣な声音でロニンに言った。

「奴らはきっと自分のステータスを強化してくるはずだ。おまえも油断しないで全力を出し切れ」
「……うん!」
 ロニンが大きく首を縦に振る。

 ――全力を出し切る。
 いままで、シュンは本気の本気を出したことはなかった。前代魔王との戦いではちょっとマジになってしまったが、その魔王もたいして強くはなかった。

 殺してしまうから。本気を出す必要がないから。
 だからシュンは自分の実力を抑えてきた。
 魔王たるロニンも同様で、シュロン国建設後は真の力を解放することはなかったはずだ。

 しかしながら、この《修行》にそんな気遣いは無用だ。相手もみな、間違いなく実力者なのだから。

「いくぞ! 容赦しねえからな!」
 叫びながら、シュンは腰を落とし、両拳に力を入れた。途端、ゴゴゴゴゴゴ……という轟音とともに、周囲が――いや、大地そのものが揺れ始める。
「はあああああああ!」
 気づけばロニンも同じような姿勢を取り、全力を解放しようとしていた。
 国王と魔王の全力が互いに共鳴しあい、かつてないほどに地上が悲鳴をあげ、振動する。

「クキッ……」
 さすがに恐れをなしたか、サキュバスが数歩後退する。しかしながらこれは世界をかけた修行。引くことは許されない。悪魔達も改めて気を引き締め、シュン夫婦たちに突撃していった。

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