引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―

魔法少女どま子

王としての決意

 さららららら……と。
 柔らかな川のせせらぎだけが聞こえる。
 ロニンは無言で、シュンの肩に頭を預けた。そんな妻を、シュンもなにも言わずに受け止める。

「俺な」
 とシュンは静かに切り出した。
「明日、王都の王に会ってくる。色々とめんどくせえこと言われるかもしれねえ」
「……そっか」
 ロニンも静かに答える。
「でも、大丈夫。シュンさんなら……きっと、国民を守ってくれるって、信じてる。私は産後でなにもできないけれど……」
「…………」

 俺はなにも言わないまま、ロニンの手を強く握った。
 そう。
 俺にはロニンがいる。今日生まれたばかりのトルフィンも、そして今日まで従ってくれた国民たちも。
 みんな、俺を慕ってくれている。

 彼らの頂点たる俺が、途方に暮れていてどうする。俺がやるしかないのだ。
 シュンは片腕でロニンを抱き寄せながら、ぽつりと言った。

「俺、おまえと結婚してよかったよ」
「えっ……」
 またも顔を真っ赤にするロニン。
「卑怯だよっ。シュンさんはそういうことさらっと言うんだからっ」
「そうか? 素直な気持ちだぜ?」
「うぅ……」
 ロニンは悔しそうに唇を尖らせる。

 ――人間とモンスターの共存。
 そんなもの、初めは理想論だと思っていた。
 人間とモンスターは敵対しているのが当たり前で、モンスターのトップたる《魔王》は悪の権化なのだと。

 だが、それはまったくの誤りだった。
 現代魔王のロニンが、外見、内面を問わず、こんなにも美しい女性なのだから。そして他のモンスターも、人間に負けず劣らず、真面目で働き者なのだから。それは国王のシュンがよくわかっている。

 たぶん、人間とモンスターは《呪い》にかかっていただけなのだ。意味もなく互いを恨み合いーーそして殺し合う、理由なき呪いに。
 なんのことはない。最初からシュンたちに《敵》なんていなかった。勝手に別種族を悪者と認定していただけだ。
 建国してから、シュンにはそれがよくわかった。そして、ひたすらに戦争をすることの無意味さも。

 そんなことを考えていると、ロニンがもごもごと口ごもりながら言った。
「私も……っしゅ」
「え? なんて?」
「私も……その、あなたと結婚して、幸せ、です!」
 妻の顔は相変わらず真っ赤っかだった。
「ほう。そりゃ良かった良かった」
 シュンはけらけら笑いながら、ロニンの額に唇を重ねた。
「あ……んっ」
 ロニンがびくりと身を震わせる。

 ーー負けねえぞ。俺は。
 妻を強く強く抱きながら、シュンは決意を新たにするのだった。

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コメント

  • ノベルバユーザー234707

    とっても素敵!いいね!

    4
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