引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
皇女の決意
騎士たちは相当数殺されたようだ。
馬車から降りたセレスティアは、戦場のあまりの悲惨さに思わず息を呑んだ。
砕かれた赤鎧。
そして飛び散っている血液。
周囲一帯は死の赤色に染められていた。
人型モンスターなる者はかなり強いようで、防具ごと身体が分断されている遺体がそこかしこにある。
騎士たちには最高の防御性を誇る鎧を分け与えた。それをこうもスッパリ切り裂くということは、物理攻撃力がべらぼうに高いのだろう。
おそらく、あの勇者アルスよりも。
セレスティアの頬に冷や汗が伝う。
これまでの人生で、死体など何度も目にしてきている。
だがーー
敵がここまで強いとは予想していなかった。兵力はこちらが圧倒的に上だが、それでも勝てるかどうかわからない。勝てたとしても、大勢の騎士が犠牲になる。
ーーシュンくんはなにをしているのかしら……
王都を出るとき、彼は姿を見せなかった。騎士のひとりを寮に向かわせたが、「後でいく」という答えが返ってきたらしい。なにやら考え事をしているとか。
この戦争の勝敗は彼にかかっている。だから早く、一秒でも早く来てほしいのに……
いや。
私は次期国王になるのだ。
他人に頼ってなどいられない。自分の道は自分で切り開く。
必ず終わらせるのだ。永かったモンスターとの戦いを。
「道を開けなさい!」
セレスティアは大きく声を張った。
戦っていた騎士たちはびくりと背筋を伸ばし、左右の列に分かれる。そうして開かれた隙間を、セレスティアは凛乎として突き進んだ。
やがて、一体だけ異様に存在感を放っているモンスターが視界に入った。
長髪で色白。見た目はたしかに人間そっくりだ。ひ弱そうな見てくれとは裏腹に、すさまじい速度で騎士たちを次々と屠っている。彼のまわりだけ死体の数がすさまじい。
人型モンスターは近くにいた騎士の首を切断すると、なにかを感じたかのように、ぴたりとセレスティアに視線を合わせた。
「……ディスト様、どうかされましたか」
近隣のゾンビモンスターが人型モンスターに問いかける。
「いや、気にするな。おまえは戦っていろ」
「はっ」
ーーディスト。それが奴の名か。
セレスティアも同じくディストに視線を向ける。
「……騎士をこんなに殺したのはあなたかしら? ディストさん」
「いかにも。そういう貴様はかなりやんごとなき身分に見えるが……何者だ」
「皇女セレスティア。次期国王になる者よ」
「なに……?」
さすがに予想外だったのだろう。ディストが大きく目を見開いた。
馬車から降りたセレスティアは、戦場のあまりの悲惨さに思わず息を呑んだ。
砕かれた赤鎧。
そして飛び散っている血液。
周囲一帯は死の赤色に染められていた。
人型モンスターなる者はかなり強いようで、防具ごと身体が分断されている遺体がそこかしこにある。
騎士たちには最高の防御性を誇る鎧を分け与えた。それをこうもスッパリ切り裂くということは、物理攻撃力がべらぼうに高いのだろう。
おそらく、あの勇者アルスよりも。
セレスティアの頬に冷や汗が伝う。
これまでの人生で、死体など何度も目にしてきている。
だがーー
敵がここまで強いとは予想していなかった。兵力はこちらが圧倒的に上だが、それでも勝てるかどうかわからない。勝てたとしても、大勢の騎士が犠牲になる。
ーーシュンくんはなにをしているのかしら……
王都を出るとき、彼は姿を見せなかった。騎士のひとりを寮に向かわせたが、「後でいく」という答えが返ってきたらしい。なにやら考え事をしているとか。
この戦争の勝敗は彼にかかっている。だから早く、一秒でも早く来てほしいのに……
いや。
私は次期国王になるのだ。
他人に頼ってなどいられない。自分の道は自分で切り開く。
必ず終わらせるのだ。永かったモンスターとの戦いを。
「道を開けなさい!」
セレスティアは大きく声を張った。
戦っていた騎士たちはびくりと背筋を伸ばし、左右の列に分かれる。そうして開かれた隙間を、セレスティアは凛乎として突き進んだ。
やがて、一体だけ異様に存在感を放っているモンスターが視界に入った。
長髪で色白。見た目はたしかに人間そっくりだ。ひ弱そうな見てくれとは裏腹に、すさまじい速度で騎士たちを次々と屠っている。彼のまわりだけ死体の数がすさまじい。
人型モンスターは近くにいた騎士の首を切断すると、なにかを感じたかのように、ぴたりとセレスティアに視線を合わせた。
「……ディスト様、どうかされましたか」
近隣のゾンビモンスターが人型モンスターに問いかける。
「いや、気にするな。おまえは戦っていろ」
「はっ」
ーーディスト。それが奴の名か。
セレスティアも同じくディストに視線を向ける。
「……騎士をこんなに殺したのはあなたかしら? ディストさん」
「いかにも。そういう貴様はかなりやんごとなき身分に見えるが……何者だ」
「皇女セレスティア。次期国王になる者よ」
「なに……?」
さすがに予想外だったのだろう。ディストが大きく目を見開いた。
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