引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
戦争の予兆
ロニンはひとり、王都の路地を歩いていた。
さすがの大都市でも、夜になれば多くの人が寝静まるらしい。人っ子ひとり見あたらない住宅街を、ロニンはとぼとぼと歩いていた。
等間隔で設置されている明かりのおかげで、なんとか道に迷わずに済んでいる。
さすがは王都だ。
モンスターの文化とは一歩も二歩も進んでいる。
ーーモンスター……
今日の試験のことを考えると、どうしても暗い気分にならずにはいられない。
人間はモンスターをとことん嫌っている。そこに理由などない。ただ昔から嫌い合っているから、いまもそれを引きずっているだけ。
そんなふうにロニンは思えた。
ーー私は、仲良くなりたいのに……
次の瞬間。
「魔王の娘、ロニン殿とお見受けする」
ぞくりと。
ロニンは全身の鳥肌が立つのを感じた。
ーーこの声、後ろから!
慌てて振り返ろうとするが、その前に口元を抑えられてしまう。
「……ん! んー!」
とてつもない力だった。おそらく人間のなかでもトップクラスの実力者だろうと思われる。
しかも相手はひとりだけじゃない。複数人だ。
背後の人間はきつくロニンを羽交い締めにすると、嫌らしい笑い声を発しながら言った。
「悪く思うなよ。あんたには明日の戦争のための人質になってもらう」
明日の戦争だと……?
刹那、ロニンの全身を鋭い悪寒が通り抜けた。
なるほど。そういうことか……!
人間たちはまだ私が魔王だと気づいていない。だから魔王の娘たる私を人質に取り、モンスター側に対する切り札にしようとしている。
なんて。
なんて汚い……!
「はああああああっ!」
気づいたとき、ロニンは叫びだしていた。どす黒い魔王の力が、漆黒の霊気となって沸き起こってくる。
「なに!」
人間たちは目を見開き、ロニンから数歩引いた。
「馬鹿な、判定Eじゃなかったのか!」
ロニンの尋常ならざる力の波動に、男たちは近寄ることさえできない。下手に近づけば殺されることが、本能的にわかってしまったから。
ロニンは堂々たる眼光で人間たちを見据えた。
「人間よ。あなたたちは大変な誤算を抱いています」
「ご、誤算……?」
「私は娘ではありません。正当な現在の魔王、ロニンです」
「ま、魔王、だって……!」
人間たちが驚愕の表情を浮かべる。
だが、もう遅かった。ロニンの手刀が、神速のごときスピードで人間たちに襲いかかったのである。
「あなたたちの王に言っておきなさい。我々は戦う準備をすでに整えていると」
人間たちは悲鳴をあげる間もなく、静かに膝を落とした。あまりにも呆気ない結末だった。
ーー殺しはしない。お兄ちゃんは、闘うときだって優しかったから。
固い覚悟を胸に、ロニンはひとり、魔王城へ戻るのであった。
さすがの大都市でも、夜になれば多くの人が寝静まるらしい。人っ子ひとり見あたらない住宅街を、ロニンはとぼとぼと歩いていた。
等間隔で設置されている明かりのおかげで、なんとか道に迷わずに済んでいる。
さすがは王都だ。
モンスターの文化とは一歩も二歩も進んでいる。
ーーモンスター……
今日の試験のことを考えると、どうしても暗い気分にならずにはいられない。
人間はモンスターをとことん嫌っている。そこに理由などない。ただ昔から嫌い合っているから、いまもそれを引きずっているだけ。
そんなふうにロニンは思えた。
ーー私は、仲良くなりたいのに……
次の瞬間。
「魔王の娘、ロニン殿とお見受けする」
ぞくりと。
ロニンは全身の鳥肌が立つのを感じた。
ーーこの声、後ろから!
慌てて振り返ろうとするが、その前に口元を抑えられてしまう。
「……ん! んー!」
とてつもない力だった。おそらく人間のなかでもトップクラスの実力者だろうと思われる。
しかも相手はひとりだけじゃない。複数人だ。
背後の人間はきつくロニンを羽交い締めにすると、嫌らしい笑い声を発しながら言った。
「悪く思うなよ。あんたには明日の戦争のための人質になってもらう」
明日の戦争だと……?
刹那、ロニンの全身を鋭い悪寒が通り抜けた。
なるほど。そういうことか……!
人間たちはまだ私が魔王だと気づいていない。だから魔王の娘たる私を人質に取り、モンスター側に対する切り札にしようとしている。
なんて。
なんて汚い……!
「はああああああっ!」
気づいたとき、ロニンは叫びだしていた。どす黒い魔王の力が、漆黒の霊気となって沸き起こってくる。
「なに!」
人間たちは目を見開き、ロニンから数歩引いた。
「馬鹿な、判定Eじゃなかったのか!」
ロニンの尋常ならざる力の波動に、男たちは近寄ることさえできない。下手に近づけば殺されることが、本能的にわかってしまったから。
ロニンは堂々たる眼光で人間たちを見据えた。
「人間よ。あなたたちは大変な誤算を抱いています」
「ご、誤算……?」
「私は娘ではありません。正当な現在の魔王、ロニンです」
「ま、魔王、だって……!」
人間たちが驚愕の表情を浮かべる。
だが、もう遅かった。ロニンの手刀が、神速のごときスピードで人間たちに襲いかかったのである。
「あなたたちの王に言っておきなさい。我々は戦う準備をすでに整えていると」
人間たちは悲鳴をあげる間もなく、静かに膝を落とした。あまりにも呆気ない結末だった。
ーー殺しはしない。お兄ちゃんは、闘うときだって優しかったから。
固い覚悟を胸に、ロニンはひとり、魔王城へ戻るのであった。
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