引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―

魔法少女どま子

明日からは村人じゃなく学生です

 出発の日。

 今日は入寮日だ。
 さらに翌日には入学式がある。今日までに王都に到着し、入学式に備えなければならない。
 ちなみに、村から都までは馬車でも半日はかかる。そこから荷物を移動し、部屋を整理するのはなかなかのハードワークだ。

 だから朝早くには出発しないといけないのに。

「おにーちゅわーん!」

 シュンは昼に差し掛かってもまだ眠っていた。
 まあ、ロニンもロニンで、シュンと一緒のベッドに寝る幸福感で寝過ぎてしまっったのだが。

「早く起きてよぉ! まずいってば!」

「……んだよ、うっせぇなぁ」

 寝ぼけた声を出すシュン。
 彼は元々引きこもり。早朝に起床することは、彼の最も苦手とするところだった。

「早く起きてよ! 入学式に間に合わないよ!」

「いいじゃんか……あと五分……」

「うわーん!」

 必死こいて村人を揺する魔王であった。




「……で、この時間になったわけね」

 母親が呆れたようにため息をつく。もう夕方だ。

「ごめんなさい……お兄ーーじゃなくて、シュンくんがなかなか起きなくて」

「いいのいいの。シュンに規則正しい生活なんて無理なんだから」

 村の出入り口にて。
 母親は呆れ顔でシュンたちを見送りにきた。他にも数名の村人たちが待っていてくれた。なにせシュンは村の英雄なのだから。

「シュン様、学園でも頑張ってくださいね!」
「さらなる立派なお姿が見られるよう、期待しています!」 

「お、おう。ありがとな」

 ぎこちなく返事をするシュンに、母親が心配そうに問いかける。

「でも、本当に馬車いらないの? せっかく村長が用意してくださったのに」

「いらねぇよ。馬車じゃおせぇ」

 シュンは面倒くさそうに後頭部をかく。
 彼は引きこもりレベル999。
 そしてロニンも正式な魔王となり、さらに《引きこもりレベル》を上げている。

 この最強の引きこもり二人に、馬車など無用の長物だった。むしろ走ったほうが早いくらいである。シュンの計算では、夜になるまでには都に着く。

「じゃ、行ってくるかな。……あ、えっと」

 出発する前に、シュンは母親に目を向けた。

「へ?」

「色々とありがとな。そんだけだ」

「……うん。そっちでも、頑張って」

 若干目を潤ませながら、母親はシュンに手を振った。

 かくしてシュンは、《村人》から《学生》になるべく、王都に向かうのであった。

「引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く