引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―
ただの村人なわけがなかった
「な、なんだ……」
人型モンスターはぽかんと口を開け、意識を失ったゴブリンを見下ろした。
ーーいったいなにが起きた。
ロニンの側近として、長い年数を戦いに費やしてきた。それだけに経験は豊富であると自負していた。
魔王や勇者には適わないまでも、そこそこの実力は持ち合わせているはずだと。
しかし、いま目の前に繰り広げられた光景は、その自尊心を完璧に抉るものだった。
まったく見えなかった。
いや、かろうじて、シュンがゴブリンに攻撃したところまでは見えた。
しかしそれがどんな攻撃だったのか、どれほど重い一発だったのか、人型モンスターにはこれっぽちも捉えることができなかった。
ーーありえない。この俺が……!
そのシュンが、今度はこちらに目を合わせてきた。
ぞくりと寒気が走る。
無意識のうちに、人型モンスターは戦闘の構えを取った。
シュンの構えは正直、素人感丸出しだ。これまでろくに《戦闘》というものをしてこなかったことが窺える。
だからこそ油断していた。あんな奴はゴブリンですら簡単に倒せると。
それが命取りだった。俺の軽率な判断で、部下を一体、死なせてしまった。
ーーくそったれが……!
「ディスト様……」
脇のゴブリンが不安げに名前を呼んできた。
「ディスト様、あの人間は何者でしょう……? ただの村人のくせに、仲間を一瞬で……」
「馬鹿者が!」
人型モンスター……ディストは声を荒らげた。
「奴が《ただの村人》なわけなかろう! 奴が報告にあった要注意人物Bだ!」
要注意人物B。
オーク軍団を全滅せしめるに留まらず、魔王の娘までをも誘拐した危険人物。
ただし、その素行は謎に包まれている。
てっきりモンスター側の敵なのかと思っていたが、報告によると、彼はあの《勇者》アルスを戦闘不能にしたらしい。ちなみに要注意人物Aこそが、その勇者アルスだ。
飛び抜けた強さ。
そして意味不明な行動。
それらをもって、魔王はこの村人を要注意人物に認定した。
「ほーん。俺、そんなふうに呼ばれてんのか」
話を聞いていたシュンが、どこかとぼけた調子で言う。
「なら話がはええや。無駄な戦いだってわかってるだろ? めんどくせーから消えてくんねえかな」
ーーくそっ。
ディストは思わず舌打ちした。
不思議に思うべきだった。
ただの人間が、待ちかまえるようにこの場所に立っていたことを。
きっとこの村人は、我々が村にやってくることを予見していたのだ。
だから先手を打って、自分ひとりでここへ出向いたに違いあるまい。
人型モンスターはぽかんと口を開け、意識を失ったゴブリンを見下ろした。
ーーいったいなにが起きた。
ロニンの側近として、長い年数を戦いに費やしてきた。それだけに経験は豊富であると自負していた。
魔王や勇者には適わないまでも、そこそこの実力は持ち合わせているはずだと。
しかし、いま目の前に繰り広げられた光景は、その自尊心を完璧に抉るものだった。
まったく見えなかった。
いや、かろうじて、シュンがゴブリンに攻撃したところまでは見えた。
しかしそれがどんな攻撃だったのか、どれほど重い一発だったのか、人型モンスターにはこれっぽちも捉えることができなかった。
ーーありえない。この俺が……!
そのシュンが、今度はこちらに目を合わせてきた。
ぞくりと寒気が走る。
無意識のうちに、人型モンスターは戦闘の構えを取った。
シュンの構えは正直、素人感丸出しだ。これまでろくに《戦闘》というものをしてこなかったことが窺える。
だからこそ油断していた。あんな奴はゴブリンですら簡単に倒せると。
それが命取りだった。俺の軽率な判断で、部下を一体、死なせてしまった。
ーーくそったれが……!
「ディスト様……」
脇のゴブリンが不安げに名前を呼んできた。
「ディスト様、あの人間は何者でしょう……? ただの村人のくせに、仲間を一瞬で……」
「馬鹿者が!」
人型モンスター……ディストは声を荒らげた。
「奴が《ただの村人》なわけなかろう! 奴が報告にあった要注意人物Bだ!」
要注意人物B。
オーク軍団を全滅せしめるに留まらず、魔王の娘までをも誘拐した危険人物。
ただし、その素行は謎に包まれている。
てっきりモンスター側の敵なのかと思っていたが、報告によると、彼はあの《勇者》アルスを戦闘不能にしたらしい。ちなみに要注意人物Aこそが、その勇者アルスだ。
飛び抜けた強さ。
そして意味不明な行動。
それらをもって、魔王はこの村人を要注意人物に認定した。
「ほーん。俺、そんなふうに呼ばれてんのか」
話を聞いていたシュンが、どこかとぼけた調子で言う。
「なら話がはええや。無駄な戦いだってわかってるだろ? めんどくせーから消えてくんねえかな」
ーーくそっ。
ディストは思わず舌打ちした。
不思議に思うべきだった。
ただの人間が、待ちかまえるようにこの場所に立っていたことを。
きっとこの村人は、我々が村にやってくることを予見していたのだ。
だから先手を打って、自分ひとりでここへ出向いたに違いあるまい。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
1
-
-
3
-
-
439
-
-
4405
-
-
17
-
-
4503
-
-
3087
-
-
969
-
-
124
コメント