引きこもりLv.999の国づくり! ―最強ステータスで世界統一します―

魔法少女どま子

人間と魔王

 シュンは強烈な葛藤に見舞われた。

 こんなに悩むのは生まれて初めてかもしれないと思った。

 さっき自分が守った女の子。
 その子こそが魔王の娘なのだとアルスは言った。

 にわかには信じがたい。この子が魔王の子どもだったとは。

 この場所を訪れたとき、ロニンはただのひ弱な女の子だった。アルスにいじめられている、ただの一般人にしか思えなかった。

 だから勘違いしてしまった。
 ロニンは被害者であり、魔王の子息にいたぶられているのだと。

 ーー嘘だろ。こんなことがあるかよ……

 ちらと、背後のロニンに顔を向ける。

 魔王の娘は、ひいっと身を縮こませ、シュンから数歩離れた。その瞳には、死に対する恐怖がありありと浮かんでいる。

「ぐ……」

 相手が女の子だからというわけではない。シュンにはどうしても、ロニンが忌むべき仇敵には思えなかった。

 ただひとりの、どこにでもいる普通の女の子なのだと。

「さあ、わかったな」

 シュンの葛藤なぞ露知らず、アルスは安心したように言った。

「その女が魔王の娘だ。悪の根は絶たねばならん。さっさと始末するぞ」

 その言い分は正しかった。
 いまは未熟でも、ロニンは正真正銘の魔王の娘。将来、どんな脅威になるかわからない。

 背後では、ロニンが泣き出しそうなほどに顔を歪めている。
 それを見て、シュンはひとつの決断をくだした。


「……認めねェよ。本当は、おまえが魔王なんだろ?」


「……は?」

 アルスが再び表情を固くした。

「また意味不明なことを。おまえにはそいつの尻尾が見えーー」

「そういうことを言ってんじゃねえ」

 シュンはアルスの話を遮った。

「相手が魔王の子だからって、一方的にいたぶって殺そうとして。おまえ、この子のこと実際はよくわかってないだろ?」

 アルスはむっとしたように目を細めた。

「なにを言うかと思えば。よーくわかってるさ! そいつは魔王の娘だ! いずれ世界征服をたくらむようになる!」

「……やれやれ」

 シュンは呆れたように肩を竦める。

 相手がモンスターだからといって、問答無用で殺そうとする。
 その野蛮性。残虐性。
 俺たち人間だって、魔王のようなものではないのか。
 珍しく、シュンはそんなことを考えていた。

「ともかく、だ。この子は殺させない。俺が全力で阻止する」

 シュンが宣言した瞬間。
 ロニンは、驚いたように目を見開いた。



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コメント

  • ward8

    いいところで話をおわるので、続きが気になります。

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