悪役令嬢は隣国で錬金術を学びたい!
第四十五話 リューネブルク王国へやってきた
せっせとダークマターを布袋に詰めながら、ある物を見て手を止める。
「あっ、先生! このダークマターは、可愛いのでとっておきたいです」
リヴァイが教えてくれた鳥の形をしたダークマター。見てたら可愛く思えて愛着が湧いちゃった。
「俺も、これもらってもいいですか?」
くの字の形をしたダークマターをリヴァイは握りしめている。ブーメランにでもするのだろうか?
「リオーネが初挑戦して作ったものだから、記念にとっておきたいです」
え、そんな失敗作を!?
「ええ、構いませんよ。初めて作ったものは、何でも愛着が湧きますからね」
「はい! 大切に飾っておきます!」
「いや、リヴァイ……流石に飾るのは……」
「安心してくれ、一番目立つ所に飾っておこう!」
リヴァイはそう言って瞳をキラキラと輝かせている。
「あ、はい……ありがとう……ございます」
笑顔がまぶしすぎて、止めてくれと言えなかった。完成品出来たら、それと交換してもらおう。飾るものを。
三袋使ってようやく全部詰め込めた。ミニマムリングで小さくして、冒険用の鞄に詰める。
その間、先生はテレポートブックにサラサラと行き先を書いて、入り口の扉にペタッと張り付けてゲートを作ってくれた。
「それでは、リューネブルク王国へ行きましょう」
ゲートを抜けた先には、リューネブルク王国の中央広場に繋がっていた。ゲームの画面上越しによく見た景色が現実に!
ここから北に真っ直ぐ行くと、錬金術師の養成学校『アルケミアシード学園』があるんだよね。
あぁ、私が行きたかった学園が目と鼻の先に!
「リオーネ、そちらではありませんよ」
「…………あ、はい!」
「学園に興味があるのですか?」
私の視線の先を見て、先生が尋ねてくる。
「先生が来てくれなかったら、家を出てアルケミアシード学園に行きたいなと思ってました」
「そうだったのか!?」
リヴァイがとても驚いている。
「私は何の楽器も弾けませんし、音楽学科しかないローゼンシュトルツ学園に通っても、レイフォード公爵家の名誉を傷付けてしまうだけですしね」
「確かに、リオーネの体質では通いたくないよな。俺がお前の立場だったとしても、そう思うだろう……」
リヴァイは悲しそうに目を伏せた。
「リオーネ。君はアルケミアシード学園で学ぶ教育課程の約八割は、もう既に習得しています」
「え、そうなのですか!?」
「ええ。後の二割は野外訓練です。出来る限り外へ連れ出して、教えてあげますのでご安心下さい」
「はい、ありがとうございます!」
「では、早速雑貨屋へ行きましょう」
先生はどこの雑貨屋に行くんだろう?
ゲームの中では、この本拠地であるリューネブルク王国の中心街クロスシールドを育成する機能があったんだよね。
良いアイテムを納品して行くことで、街の発展度を上げていける。どこの雑貨屋と取引して発展させていくかによって、街の発展の方向性が変わっていく。
例えば、雑貨屋『プリティ』に可愛らしいアイテムを多く納品していくと、街並みがどんどんファンシーになっていく。
雑貨屋『フォール』に攻撃系アイテムを多く納品していくと、冒険者の集うアウトローな街並みになっていく。
お菓子の街や妖精の街、聖職者の街にしたり、縛りプレイして目的の街並みに発展させるのも中々楽しかった。
見た感じ、現状はまだ普通の街だ。
周囲を観察しながら先生に付いていくと、目的の雑貨屋についたようだ。
雑貨屋『エトワール』
なるほど、先生はあらゆる分野の専門家を集めたエリートの街にしたいのね。
エトワールを発展させると、作中でも後半色んなアイテムが手に入りやすくなってすごく便利だった。普通にプレイする人は、まずこの雑貨屋を発展させる。
「セシル様、ようこそお越しくださいました!」
「こんにちは、ケビン君」
「今日は可愛いお客様をお連れですね!」
「ええ、この子は私の弟子リオーネと、その友人のリヴァイド君です」
「初めまして、リオーネです」
「リヴァイドです」
家名は名乗らない方がいいよね、ややこしい事になりそうだし。
ケビンさんは私達の目の高さまで屈んで「二人とも、ゆっくり見ていってくださいね」と優しく声をかけてくれた。
「今日はダークマターの買取をお願いしてもいいですか?」
「勿論です! セシル様が納品してくださるものは高純度の魔力が込められていて、魔力燃料としてとても優秀なので助かります!」
「今回は私が作ったものではなくて、リオーネが作ったものです。リオーネ、この台の上にダークマターを置いてもらえますか?」
「はい、先生」
冒険鞄からミニマムリングで小さくしていた布袋を三つ取り出す。リングを外して元の大きさに戻した。
「これは大量ですね! 少し拝見させて頂きます」
袋からダークマターを取り出したケビンさんは、胸にぶら下げている小型のルーペで観察し始めた。
「こ、これは! 本当にセシル様が作られたものではないのですか!?」
「ええ、鑑定してみて下さい」
ケビンさんは真実の指輪でアナライズして、さらに驚いた声を上げた。
「流石はセシル様のお弟子さんです! なんて素晴らしいダークマターだ!」
「あ、ありがとうございます」
失敗作を素晴らしいと誉められ、とても複雑な気分になった。
「一つ、2万リルでいかがでしょうか? 全てうちに納品してくださるなら、大口納品得点としてプラス10万リルもお付けします!」
「え、そ、そんなに!?」
驚く私に、先生がこっそりと耳打ちして教えてくれた。
「五属性の魔力の籠った魔力燃料は、それだけで価値があるのです。古属性は数をこなすしかありませんから、失敗しても中々美味しい特権でしょう?」
こういう利点も含めて、あの時先生はオリジナルアイテムの製作は古魔法の特権を使えと仰ったのだろう。
「ケビン君の雑貨屋はとても良心的なので、悪い条件ではありません。リオーネ、どうしますか?」
「お願いします!」
「ありがとうございます!」
ダークマターは全部で55個あった。
その場で私は、120万リルの資金を手に入れてしまった。
「ケビン君。リオーネは中々ここまで来れないので、転送売買の登録をお願いできますか?」
転送売買? と私が首をかしげていたら、ケビンさんが説明してくれた。
「転送売買とは、遠方からでも気軽にアイテムの売買ができる機能です。登録費と転送装置のリース料として事前に20万リルかかりますが、午前9時から午後8時までの間、いつでもどこでもアイテムや素材の売買、依頼の受付や納品が可能になります」
ゲーム内だと、わざわざその場に行かなくてもボタンを押すだけで簡単に納品出来たのって、そんな仕組みがあったからなのかな?
どちらにせよ、自由に外に出れない身としてはとてもありがたい!
「登録したいです!」
「はい、ありがとうございます!」
20万リルを支払って、専用の登録書にサインして私専用の転送装置を手に入れた。私の身長より大きなその装置をミニマムリングで小さくして、冒険鞄に収納した。
「ケビン君の雑貨屋では依頼案件などもありますから、作成できるアイテムの依頼を見つけた時は受けてみると良いですよ」
「はい、分かりました!」
その時、リヴァイがカゴいっぱいにアイテムを入れてレジへ持ってきた。
「これを買いたい」
中に入っていたのは大量の『風のコア』だった。
「確か、このアイテムを錬金術に使っていただろう?」
「はい、確かに風のコアは欠かせないアイテムですが……」
「リオーネの初めて作ったダークマターをもらったからな。お礼にプレゼントさせてくれ」
「リヴァイ、さすがにそれは釣り合いがとれません!」
あの失敗作のくの字のダークマター1個に、こんなお礼は受け取れない!
断固拒否しようとしたものの、「はやく包んでくれ」とさっさとリヴァイは会計を済ませてしまった。
「俺が持っていても、どうしようもないアイテムだ。貰ってくれるか?」
「…………ズルいです」
「ああ、自覚はある。錬金術でアイテムを作ってる時のお前の楽しそうな笑顔がまた見たいから贈る、ズルい男だよ」
「……っ、ずっとそれを見てたんですか!?」
「ああ、そうだが?」
私がダークマターを製造してた間、リヴァイがそんなものを見ていたなんて。
「これは俺が自分の欲を満たすために贈るんだ。だからリオーネは何も遠慮する必要はない」
それでも申し訳なくて断っていたら、「要らないなら捨てる」とか終いには言い出すから、そんなの勿体なさすぎる! と、結局貰ってしまった。
くっ、やられたらやり返す。
こうなったらリヴァイには、拒否権のないとても素敵な贈り物を貰って頂こうと心に誓った。
「あっ、先生! このダークマターは、可愛いのでとっておきたいです」
リヴァイが教えてくれた鳥の形をしたダークマター。見てたら可愛く思えて愛着が湧いちゃった。
「俺も、これもらってもいいですか?」
くの字の形をしたダークマターをリヴァイは握りしめている。ブーメランにでもするのだろうか?
「リオーネが初挑戦して作ったものだから、記念にとっておきたいです」
え、そんな失敗作を!?
「ええ、構いませんよ。初めて作ったものは、何でも愛着が湧きますからね」
「はい! 大切に飾っておきます!」
「いや、リヴァイ……流石に飾るのは……」
「安心してくれ、一番目立つ所に飾っておこう!」
リヴァイはそう言って瞳をキラキラと輝かせている。
「あ、はい……ありがとう……ございます」
笑顔がまぶしすぎて、止めてくれと言えなかった。完成品出来たら、それと交換してもらおう。飾るものを。
三袋使ってようやく全部詰め込めた。ミニマムリングで小さくして、冒険用の鞄に詰める。
その間、先生はテレポートブックにサラサラと行き先を書いて、入り口の扉にペタッと張り付けてゲートを作ってくれた。
「それでは、リューネブルク王国へ行きましょう」
ゲートを抜けた先には、リューネブルク王国の中央広場に繋がっていた。ゲームの画面上越しによく見た景色が現実に!
ここから北に真っ直ぐ行くと、錬金術師の養成学校『アルケミアシード学園』があるんだよね。
あぁ、私が行きたかった学園が目と鼻の先に!
「リオーネ、そちらではありませんよ」
「…………あ、はい!」
「学園に興味があるのですか?」
私の視線の先を見て、先生が尋ねてくる。
「先生が来てくれなかったら、家を出てアルケミアシード学園に行きたいなと思ってました」
「そうだったのか!?」
リヴァイがとても驚いている。
「私は何の楽器も弾けませんし、音楽学科しかないローゼンシュトルツ学園に通っても、レイフォード公爵家の名誉を傷付けてしまうだけですしね」
「確かに、リオーネの体質では通いたくないよな。俺がお前の立場だったとしても、そう思うだろう……」
リヴァイは悲しそうに目を伏せた。
「リオーネ。君はアルケミアシード学園で学ぶ教育課程の約八割は、もう既に習得しています」
「え、そうなのですか!?」
「ええ。後の二割は野外訓練です。出来る限り外へ連れ出して、教えてあげますのでご安心下さい」
「はい、ありがとうございます!」
「では、早速雑貨屋へ行きましょう」
先生はどこの雑貨屋に行くんだろう?
ゲームの中では、この本拠地であるリューネブルク王国の中心街クロスシールドを育成する機能があったんだよね。
良いアイテムを納品して行くことで、街の発展度を上げていける。どこの雑貨屋と取引して発展させていくかによって、街の発展の方向性が変わっていく。
例えば、雑貨屋『プリティ』に可愛らしいアイテムを多く納品していくと、街並みがどんどんファンシーになっていく。
雑貨屋『フォール』に攻撃系アイテムを多く納品していくと、冒険者の集うアウトローな街並みになっていく。
お菓子の街や妖精の街、聖職者の街にしたり、縛りプレイして目的の街並みに発展させるのも中々楽しかった。
見た感じ、現状はまだ普通の街だ。
周囲を観察しながら先生に付いていくと、目的の雑貨屋についたようだ。
雑貨屋『エトワール』
なるほど、先生はあらゆる分野の専門家を集めたエリートの街にしたいのね。
エトワールを発展させると、作中でも後半色んなアイテムが手に入りやすくなってすごく便利だった。普通にプレイする人は、まずこの雑貨屋を発展させる。
「セシル様、ようこそお越しくださいました!」
「こんにちは、ケビン君」
「今日は可愛いお客様をお連れですね!」
「ええ、この子は私の弟子リオーネと、その友人のリヴァイド君です」
「初めまして、リオーネです」
「リヴァイドです」
家名は名乗らない方がいいよね、ややこしい事になりそうだし。
ケビンさんは私達の目の高さまで屈んで「二人とも、ゆっくり見ていってくださいね」と優しく声をかけてくれた。
「今日はダークマターの買取をお願いしてもいいですか?」
「勿論です! セシル様が納品してくださるものは高純度の魔力が込められていて、魔力燃料としてとても優秀なので助かります!」
「今回は私が作ったものではなくて、リオーネが作ったものです。リオーネ、この台の上にダークマターを置いてもらえますか?」
「はい、先生」
冒険鞄からミニマムリングで小さくしていた布袋を三つ取り出す。リングを外して元の大きさに戻した。
「これは大量ですね! 少し拝見させて頂きます」
袋からダークマターを取り出したケビンさんは、胸にぶら下げている小型のルーペで観察し始めた。
「こ、これは! 本当にセシル様が作られたものではないのですか!?」
「ええ、鑑定してみて下さい」
ケビンさんは真実の指輪でアナライズして、さらに驚いた声を上げた。
「流石はセシル様のお弟子さんです! なんて素晴らしいダークマターだ!」
「あ、ありがとうございます」
失敗作を素晴らしいと誉められ、とても複雑な気分になった。
「一つ、2万リルでいかがでしょうか? 全てうちに納品してくださるなら、大口納品得点としてプラス10万リルもお付けします!」
「え、そ、そんなに!?」
驚く私に、先生がこっそりと耳打ちして教えてくれた。
「五属性の魔力の籠った魔力燃料は、それだけで価値があるのです。古属性は数をこなすしかありませんから、失敗しても中々美味しい特権でしょう?」
こういう利点も含めて、あの時先生はオリジナルアイテムの製作は古魔法の特権を使えと仰ったのだろう。
「ケビン君の雑貨屋はとても良心的なので、悪い条件ではありません。リオーネ、どうしますか?」
「お願いします!」
「ありがとうございます!」
ダークマターは全部で55個あった。
その場で私は、120万リルの資金を手に入れてしまった。
「ケビン君。リオーネは中々ここまで来れないので、転送売買の登録をお願いできますか?」
転送売買? と私が首をかしげていたら、ケビンさんが説明してくれた。
「転送売買とは、遠方からでも気軽にアイテムの売買ができる機能です。登録費と転送装置のリース料として事前に20万リルかかりますが、午前9時から午後8時までの間、いつでもどこでもアイテムや素材の売買、依頼の受付や納品が可能になります」
ゲーム内だと、わざわざその場に行かなくてもボタンを押すだけで簡単に納品出来たのって、そんな仕組みがあったからなのかな?
どちらにせよ、自由に外に出れない身としてはとてもありがたい!
「登録したいです!」
「はい、ありがとうございます!」
20万リルを支払って、専用の登録書にサインして私専用の転送装置を手に入れた。私の身長より大きなその装置をミニマムリングで小さくして、冒険鞄に収納した。
「ケビン君の雑貨屋では依頼案件などもありますから、作成できるアイテムの依頼を見つけた時は受けてみると良いですよ」
「はい、分かりました!」
その時、リヴァイがカゴいっぱいにアイテムを入れてレジへ持ってきた。
「これを買いたい」
中に入っていたのは大量の『風のコア』だった。
「確か、このアイテムを錬金術に使っていただろう?」
「はい、確かに風のコアは欠かせないアイテムですが……」
「リオーネの初めて作ったダークマターをもらったからな。お礼にプレゼントさせてくれ」
「リヴァイ、さすがにそれは釣り合いがとれません!」
あの失敗作のくの字のダークマター1個に、こんなお礼は受け取れない!
断固拒否しようとしたものの、「はやく包んでくれ」とさっさとリヴァイは会計を済ませてしまった。
「俺が持っていても、どうしようもないアイテムだ。貰ってくれるか?」
「…………ズルいです」
「ああ、自覚はある。錬金術でアイテムを作ってる時のお前の楽しそうな笑顔がまた見たいから贈る、ズルい男だよ」
「……っ、ずっとそれを見てたんですか!?」
「ああ、そうだが?」
私がダークマターを製造してた間、リヴァイがそんなものを見ていたなんて。
「これは俺が自分の欲を満たすために贈るんだ。だからリオーネは何も遠慮する必要はない」
それでも申し訳なくて断っていたら、「要らないなら捨てる」とか終いには言い出すから、そんなの勿体なさすぎる! と、結局貰ってしまった。
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