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巫夏希

第二十五話 炎と水


 フル達はレガドール一の港町であるラムガスにたどり着いた。

「ここが…レガドール…」
「見た感じは…普通だな」

 メアリーとルーシーはそれぞれ言った。
 ルーシーの言った通り、港町らしい喧騒に包まれていた。

「ちょっとそこのお嬢ちゃん!」

 後ろから声が聞こえた。

「え…わたし?」

 メアリーが答えた。

「そう、あなた以外に誰がいると言うんだ。」
「知ってるかい?ラムガスの名物は新鮮な魚介類とあとひとつ…」
「塩マッサージだ」
「???」
「まぁ、物は試しだ!やってみないかい?」
「メアリー」

 フルが言った。

「大丈夫。いくらリュージュの支配下とはいえ、」

 メアリーは家に入った。




 しばらくして、

「キャアアアア!!」

 メアリーの悲鳴が聞こえた。
 屋根を見ると、
 何者かに抱えられたメアリーの姿があった。

「メアリー!!」

 フルとルーシーが言うと、その何者かはジッと睨み付けた。


 ヒュン


 何者かは凄いスピードで消え去った。

「追うぞ!」
「う、うん!」

 フルとルーシーも屋根に乗り、その何者かを追った。

(…難しいな。奴らを…)
(出来るだけ、引き付けねばならない、というのは…)

 その先には砂地があった。まわりには何もない。

(しめた、そこに行こう)


 ヒュン


 何者かは砂地で足を止めた。

「なぜ、足を止めた?お前は、リュージュの手先か?」
「違う!私は…」
「ならば、なぜメアリーを誘拐した!!」
「…いいか、君たちは、リュージュを倒しに来たのだろう?」


 コクリ


「リュージュは今この国には居ない。ある計画を実行する為だ。」
「ある…計画?」
「あぁ…それは…」


 シュウウウウ…


 突然、その何者かから謎の音が聞こえてくる。

「もう…来てしまったか…」


 ドサッ


 男の後ろから女が現れた。

「ふぅ…危ない危ない。あれ?もしかして君たちが…予言の勇者ご一行ですか」
「…なに」
「兄さんから聞いてますよ。」


 ドクン


 フルはその容姿に見覚えがあった。
 銀髪のロングヘアー、水色のワンピース…。

「…バルト・イルファか…!!」
「そう…その通り。私はロマ・イルファ。バルト・イルファの妹です」

 と。

「私の専門エキスパートはさっき見たから分かるでしょうが、水を自由自在に操る事が出来ます。例えば、水が枯れている所で溺れ死にさせたり、人の水を吸い取って脱水症状を起こして殺したり、ね。そんな私に敵うというのですか?」

 フルは後ずさる。

「賢明な判断ね。あなたたちは逃げたり、リュージュ様を追う事も出来ない。このレガドールで叩き潰してあげるわ!!」


 ヒュン


 ロマ・イルファは消え去った。
 気付けば、ラムガスの方が騒がしい。
 フル達は村に戻った。





〔ラムガス〕


 ボォォォォォ
 船が、燃えていた。
 フル達が乗って来た、船が。
 人はそれぞれ悲鳴を出す。

「…彼奴が言ったのは、本当だったのか!」
「…そのとおり」

 聞き覚えのある声が響いた。
 フル達は声のする方を向いた。

「…バルト・イルファ…」
「…炎は素晴らしい。みるみる内に全てを飲み込み、無にする…。これこそ究極のものが何処にあるというんだい?」
「…だからといって、これは…」
「…私は炎が放てれば、何でもいい。」
「…私利私欲の為に…動いていいと思ってんのか!!」
「…僕は人間の考えている事が全く理解出来ない。…また会おう」


 シュン
 バルト・イルファは火の粉の中、何処かに消えていった…。

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