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巫夏希

第十九話 知識の代償

「むむぅ?なぜ私がタイソン・アルバだと分かった?」
「リュージュ…王に頼まれた」

 フルは言った。

「…そうか。ならちょうどいい。リュージュからはどうせ何も聞いてないだろう…」
「お前は、『知恵の木の実』を錬成して何をする気なんだ!!」

 フルは言った。

「…まぁ、待て。等価交換と行こうじゃないか」
「…等価交換?」

 ルーシーが反応した。

「そう!君らの情報と私の情報を、だ。」
「…分かった。」





「むむぅ…友達が行方不明、か。分かった。探してみるとしよう。」
「ほら、次はそっちだ。」

 フルが促した。

「結論から言おう。メタモルフォーズを作り出したシグナルを復活させたのは、」
「リュージュだ」
「え!?」

 二人は驚いた。

「私は…平和の為に、ASLに協力した。」
「『知恵の木の実』はその地球アースの莫大な記憶エネルギーの塊だ。故に限りがある。そこでリュージュは、あることを考え付いた。」
「『知恵の木の実』の錬成だ」
「まず錬金術師を20~30人呼ぶ。」
「錬成陣の一定の場所に4~6人置き、錬成を実行する」
「そして『知恵の木の実』が出来る」
「…ちょっと待った」

 フルが話を遮った。

「錬金術の原則は等価交換。それはどうなんだ?」
「錬金術師にしか持っていないものがあるだろう?」
「え…?」
「ま、まさか…」
「そう、」
「『錬金術の知識』そのものだ。」
「『知識』を代償に錬成するだと?そんなバカな!」


 ゴソ


 タイソン・アルバは服のポケットから何かを取り出す。
 金色の林檎…そう、『知恵の木の実』だった。

「これが…証拠だ」
「!!」
「…分かった。」
「…信じる。だから」
「「メアリーを探してくれ!!」」

 二人は同時に言った。

「…いいだろう」
「何か手がかりになる物はあるかね?」
「これだ」

 フルは側にある杖を指差した。

「分かった」

 タイソン・アルバは木箱にコンパスを置いた。
 そしてコンパスの上に杖を置く。


 キュウウウウ…


 キリキリ…


 コンパスの針は『N』と『W』の間─北西をさした。

「北西…となるとチャール島か」
「チャール島にメアリーは居るのか!?」
「あぁ。このコンパスは百発百中だ」
「分かった。ありがとう」


 ゴソ


 タイソン・アルバは小さな卵を取り出した。

「マジックエッグはとても便利でな、こんなことも出来るのだよ」


 ポトン


 海に卵を落とす。
 すると、卵を落とした所に泡が発生し、まるで水の中から出てきたかのように船が出てきた。
 そう、フルとルーシーが乗っていた船だ。

「す、すごい…」
「マジックエッグは何も殻が卵でなくちゃいけない訳ではない。封じ込めている物によって変えれば、多大な効果を生み出すだろう。」
「ありがとう!タイソン・アルバ!」

 フルとルーシーは船に乗り込んだ。
 どんどん船は離れていく。

「良かったのですか」

 海賊の一人がタイソン・アルバに言った。

「あぁ…」


 ピク


「待て、その前に、」
「上客が来てしまったようだな」

 後ろには銀髪の男。バルト・イルファだった。

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