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巫夏希

第十八話 海の荒くれもの


 ついに海賊船は2人の船に並んだ。

「敵…多くない?……」

 フルは思わず言う。
 敵の船は予想以上に大きく、何十人もの海賊がこちらに野次を飛ばしている。
 2人は唖然。
 いつの間にか海賊船は1メートルまで接近。武器を持った海賊たちが乗り込んできた。

「そこの乗組員2人! 子供のくせにこんな大層な船をどこで手に入れたか知らんが、我々に明け渡す気はあるか?」

 海賊はすぐに攻撃するのではなく、交渉――いや、一方的な明け渡しを求めた。

「そんな気は、微塵もない!!」

 フルは叫ぶ。

「そうか…さすが子供…勇気の意味を履き違えている…… それは無謀と言うんだよ! お前ら! やっちまえ!!」
「「「おぉぉぉぉ!!!」」」

 海賊たちはついに攻撃を始めた。
 フルはそのまま応戦。
 ルーシーはすかさずマストに登り、上から矢を放つ。

「この剣を手に入れてから、毎日練習したんだ! メアリーもまだ助けてない…… こんなところで負けてたまるかぁぁぁあ!!」

 型とはほど遠い太刀筋で剣を振る。
 敵とはいえ人間。フルは腕や足を集中的に狙った。
 シルフェの剣に導かれてか、囲まれるという絶望的な状況下でありながら、3人を無力化した。

「これだけの数…かなりきついな!」

 愚痴を言いつつ、剣で相手の攻撃をはじき返す。

「でも…こっちは真剣なのに、なんで木刀なんだ?!」

 そんな疑問を口にしていると、一人がそれに答えた。

「船長に、おまえらを捕縛するように言われてるからな」
「え?!」


 ガツッ


 フルの注意がそれた瞬間、後ろにいた海賊がフルの頭に木刀を叩きつけた。

「グッ…くそ……」

 意識は遠のいてゆき、全身が床に叩き付けられるのを認知できなかった。




「う……」

 フルは顔に吹き付ける潮風と、全身の痛みで目を覚ました。
 顔をブルブルとふり、目を覚まさせる。
 体を動かそうとしても全く動かない。
 そして、自分が甲板の柱にグルグル巻きにされるという、古典的な縛り方で縛られていることに気付いた。

「そうだ、ルーシーは?!」
「ここにいるよ、フル」

 右から声。
 ルーシーも柱にグルグル巻きにされていた。
 すると、巡回だろうか、海賊の一人が現れた。

「おまえら、や~っとおきたか。船長を呼んでくる、覚悟しとけよ」

 にやりとすると、後ろの見えない方に走って行った。

「フル…大変なことになっちゃったね……」
「そうだね…どうなるのか、見当もつかないや……」


 スタスタスタスタ……



 何人もの足音が聞こえ始めた。
 その音は、どんどん大きく、近寄ってくる。

「おまえら! 船長のお出ましだ!!」

 何人もの船員が目の前に現れた。
 先頭の男が船長らしい。
 しかし、その男は海賊らしくない黒衣――真っ黒な研究衣をまとっていた。

「?!」

 フルはその男に見覚えがあった。
 細くて悪人らしい顔……

「あっ! タイソン・アルバ!!」

 男は、王リュージュから依頼を受けてた尋ね人。
 錬金術師、タイソン・アルバだった。

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