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巫夏希

第四話 三人旅と上級生

 生徒たちは騒然とした。
 
「みなさん落ち着いて。旅といっても、そんな危険なものではありません。みなさんに世界の広さというのを知ってもらうための旅です」
 
 それを聞いても、生徒たちの声は止まない。
 
「静かにしなさい! 大丈夫です。旅とはいえ海を渡って北の『スノーフォグ』や、南の『レガードル』、別の国に行くわけではありません。さらにハイダルク国内、しかもこのレキギ島の中のみです。各班に1人ずつ上級生もつきます。大丈夫です。安心してください」
 
 多少話し声が聞こえるものの、生徒たちは落ち着いた。
 少し間をおいてから先生がしゃべりだす。
 
「それじゃあ班決めね。班分けはくじで決めるわ。同じ番号の人と組みなさい。」


「「「え~ぇ」」」


 ブーイングの嵐が教室を包む。
 
「うるさい、うるさい。ほら、並んで。チャッチャと引きなさい」
 
 先生はめんどくさそうにそういう。
 生徒たちはあきらめたのか、律義に一列に並んでくじを引いていく。
 当然、フルも並ぶ。
 前に数人、フル、メアリー、ルーシーの順だ。
 メアリーは誰と組むことになるのか不安なのか、女の子らしく両手を合わせて胸に当てている。
 ルーシーは「誰でも来い」と、男らしくどっしりと構えていた。
 フルに順番が回ってきた。箱に手を入れて紙を一枚引く。
 
「2番か……」
 
 紙には「2」と書かれていた。紙の隅には小さな「○」。
 続いてメアリーが引く。

「私は……2だわ」
 
 ルーシーも引く。
 
「俺も2だ……」
「それじゃ次は上級生の振り分けと行き先の選択ね。これもくじで決めるわよ」
 


「「「え~ぇぇ」」」
 

 
 再びブーイングの嵐。
 
「くじは偶然で決まる。偶然は運命。運命はあなた達が今すべきことを教えてくれる。だから、私たちが決めつけるよりいいの!」
 
 一気に静まる。
 全く、ここの学生は理解が速い。
 
「班長はくじを引きなさい。さっきのくじの端に『○』が書いてある人が班長ね」
「あっ! フルが班長だね」

 そう言ってメアリーはフルの背中を押す。
 目の前には2つの箱。フルは、まず右の方からくじを引いた。
 
「また2番……」
 
 左の方からも引く
 
「またまた2番……」
「えっと……2班――ヤタクミ班のサポートは『ルイス・ディスコード』。目的はトライヤムチェン族の儀式見学……」
 
 先生が手元の資料を見ながらそう言った。

「みんな行き先決まったわね。それじゃ最後に連絡。旅の期間は7日間までよ。それ以降は授業も始まるから、遅れることのないように」

 そして、一呼吸間を空けて先生は言う。
 
「良い旅にしてきてね!」




 フル一行は目的地に着くまで、3日を用した。野を越え、山を越え、川を越え、深い森に入った。さほど危険な道のりではなかった。
 2日目は野宿だったが、さほど気にならなかった。
 上級生のルイスは、道中フルたちにたくさんの話をしてくれたり、的確な指示を出してくれた。
 とても友好的で、模範と言うべき生徒だった。
 森深く、トライヤムチェン族の村に着くと、フルたちは長老の小屋に案内された。
 受け入れてくれたことに感謝の言葉を述べ、少し話をした。
 会話は終了し、フルたちは小屋を出ていこうとする。
 
「待ちなされ」
 
 長老はフルの肩をたたいた。
 
「え? なんでしょう……」
 
 フルは答える。
 そして、長老はこう言った。
 
「あなたの周りに不穏な気配がしますぞ…… 命を落とさぬよう、気をつけてくだされ」

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