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巫夏希

第四十五話 三種三様

 
「ふ……フフ、さすがは『予言の勇者』ね」

 リュージュは態勢を取り直し、再び笑いはじめた。

「そうね……。ここでひとつ、ゲームと行きましょうか」
「ゲーム?」

 フルは言い返した。

「そう。こっちも3人、あなたたちも3人。 だから1対1でバトルするの。そして、2勝したほうが、この『 オリジナルフォーズ』をどうするか決める。どう? おもしろそうじゃない?」

 フルにはリュージュが考えていることなぞ、全くわからなかった。 いや、分かりたくもなかった、というのが正解だろうか。

「決まりね。さて」

 リュージュは、そこまで言って、両手を上にかかげた。
 と、同時に空中に3本の糸が“つくられる”。
 ゆっくりと落ちてくるそれを、リュージュは手にする。

「さて」
「ここに、なんの仕掛けもない3本の糸があるわ」
「これを、2人が1本の糸の端を持ちます」

 リュージュの話し方は楽しそうであった。
 まるで“誰に当たったとしても倒すことができる”、 とでも言っているように。
 そこまで言って、リュージュは糸の間に黒い布をかぶせた。
 ひとまず、フル、メアリー、ルーシーの三人は、糸の端をつかむ。
 リュージュ、サリー、ゴードンも同様。
 同時に、6人は糸を引っ張る。
 糸の間に、隠されていたものは外され……。

「……決まったようね」

 リュージュは一言、言った。
 フルの持つ糸は、ゴードンが。
 ルーシーの持つ糸は、サリーが。
 そして、メアリーの持つ糸は……。

「……運命というのは、皮肉なものねぇ? メアリー」

 リュージュが握っていた。

「んじゃ、始めますか」

 リュージュはその一言を言って、 メアリーに多数の魔法弾を打ち放つ。
 それと同時にサリーは錬金術であたりの金属から剣を創り、
 ゴードンは変身し、獣の姿となった。

「行くぞ!! 小童!! 今度こそは、前のようにはいかん!!」

 ゴードンは、自らの腕を鋭くとがらせる。 まるでそれは氷で出来た剣のように。


 ――そうだ、あいつは“氷”で出来ている。 だからあのときだってメアリーの錬金術で……


 フルはそんなことを考えながら、転機をさぐろうと逃げていた。

「逃げるか!? 逃げるか!? そんなんじゃあ、つまらないなあ……!!」

 ゴードンは、自らのからだを細かく、砕いた。

「!?」

 そして、ゴードンは風を放つ。
 その“ゴードンの体の一部”は、フルに降り注ぐ。
 それは、まるで、雹のようだった。

「う……ぐはぁっ!!」

 フルは、その雹を、すべてまともに食らってしまった。

「……う」

 フルは、倒れそうになるのを、こらえ、さらに走る。
 走る、走る、走る。

「おやぁ!? なんで逃げるのかなぁ!? そんなに走ると、」
「僕の攻撃が当たらないじゃないか!!」

 ドスン!! ドスン!! とゴードンはその右手にある剣をところどころに刺していく。
 石や、袋が突き刺さる。
 袋が突き刺さった瞬間、同時に中に入っていたであろう、 粉が舞い散る。

「!!」

 同時に、フルは何かを思い出し、立ち止まる。

「おや? もう逃げないのかね? ならば一思いに“殺してやろう”」
「……何もわからねえようだな」

 フルはいきなり、そんなことを言い出した。

「!?」
「……俺がここで足を止めた理由。それは……」

 フルがそれを言うと同時に、剣を振り下ろした。
 剣から、火花が散り……。
 あたり一面が、ズドォォォォンという轟音と共に爆発した。

「……あれは、フルたちのほう! いったいなにが……?」
「余所見をしている場合かしら!?」

 リュージュはさらに魔法弾を撃つ。
 メアリーは、それを錬金術で作った壁で防御。
 それの、繰り返しだった。

「このままじゃ……らちがあかない!」
「……わかってるようね? じゃあ、そろそろ」
「死んでくれるかしら?」

 刹那、リュージュは先ほどよりも多くの魔法弾を打ち放つ。
 ドゴン!! ドゴン!! ドゴン!! とその弾は一発一発が当たるたび、そのような爆音が、 あたりに響く。

「……しね」
「?」
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!!!!!!!」

 ヒュン!! という空気をきるような音と共に、リュージュは消えた。

「!?」

 メアリーは、息をひそめる。
 ……ようとした、そのときだった。
 メアリーの、懐にリュージュがいた。

「な……!!」

 リュージュのその手には、さっきより一回り大きい魔法弾。

「…………シネ」

 リュージュのその目は、戦いを陶酔している、目だった。

「な……!!」

 メアリーの身体に、魔法弾が命中。同時に爆音をあげた。

「あの音は……メアリーの方だ!」
「よそ見をしている場合かしら!? アドバリー!!」

 ヒュン!! と空気を切り裂く音が聞こえ、ルーシーはわれに返り、 即座にその攻撃をよけた。

「サリー先生!! なんであなたは……!!」

 ルーシーは守護霊――ラルクと主従融合し、 サリーの攻撃から身を守っている。

「いい? この世界はね……。 リュージュ様がスノーフォグの王になったとき、いや、 この世界が生まれた時から、“脚本”があったのよ!!」
「“脚本”?」

 ルーシーは、一瞬立ち止まった。

「そう……ウフフ。偉大なる闘い、セカンド・インパクト、 そして予言の勇者……すべてが“計画通り”だったの」
「そんな……今まで俺達がやってきたことも…… 貴様らがやってきた愚行も……すべては“脚本通り”だったのか! !」
「ええ……。それじゃあ、 今まで頑張ってくれた道化師達には最高の幕引きを用意してあげましょうか」

 ガギン!! といった音と共に、ルーシーの体の自由が奪われる。

「な、なんだ……!?」

 ルーシーがそれを言うと同時に、ラルクとルーシーがわかれる。

「そんな!! 意志なしに主従融合が解けるなんて!!」
「やってしまいなさい? ラルク」

 ラルクは、とてもとても冷たい声で言った。

「かしこまりました」

 気づくとラルクの手には、剣が握られていた。

「さて? あなたは守護霊なしで彼女に勝てるのかしら?」

 サリーは、リュージュのように、笑いながら言った。

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