ODD
第三十八話 火球と水柱
瞬間、イルファ兄弟は空へ跳躍した。
兄弟は、降下に転じたそのとき、ルーシーとメアリーに向かって必殺の魔法を放つ。
もちろん、兄バルトは火の魔法を。
妹ロマは水の魔法を。
「そんなの当たらないわよ! 水と火なんて相反する魔法、一緒に打ったら意味ないんじゃない!?」
二人は左右に跳ぶ。
空から落ちてくる小さな火球と、その周りを螺旋状にまとわりつく水柱は、ただ跳ぶだけで避けられるとメアリーは考えていた。
しかし、その球は着弾と同時に、二人の予想を大きく上回る炎を生み出す。
二人はその爆発に巻き込まれ、体を焼かれて地面に叩きつけられた。
もがき苦しむルーシーは「そんな…バカな……」と微かな声で驚きを漏らす。
爆発でできあがったクレーターに兄弟は着地する。
するとロマは、地面にうずくまるメアリーの元に歩いて、思い切り鳩尾を蹴った。
「ぐはぁ゛……」
メアリーは地面を転がる。
ゼェゼェと息を荒くして、とても苦しそうにしていた。
しかし、そんな状況であっても、心は折れていない。
ロマのことを、思い切り睨んでいた。
イルファは、もう勝負ありと決め込み、着地点で妹を見つめていた。
ロマはまたメアリーに近づいてきて、こう言った。
「リュージュ様の子供だからって、警戒なんかして損だったわ。ただのバカ砂利じゃないの」
ふんっ、とメアリーの体を追い打ちをかけるように踏みつける。
「水と火は相性悪いですって?! 笑わせないでよね。水はいったい何でできてるのかしら? H2OよH2O。水素と酸素に決まってるでしょう。水素は火で爆発するし、酸素は火の燃焼を拡大させる。水そのままならまだしも、分解しちゃえば相性ばっちりなのよ! 私とお兄さまの様にね!!」
今まで、冷たい水の様に冷静沈着だったロマは、明らかに熱を帯びていて、まるであふれ出す蒸気のように、次々言葉を放った。
ロマの感情の高ぶりとは逆に、メアリーはニヤリと小さな笑みを浮かべてこう言う。
「たしかに、私たちもまだまだ読みが甘かったわ…… だけど、あなた達も、まだまだってことね」
すると、メアリーの向かい側、イルファ兄弟を挟んだ向こう側で光が爆発した。
いや、それは爆発ではない。衝撃も破壊もない、ただ、強烈な光が当たりに拡散し、素早くイルファ兄弟の視界を奪っていったのだ。
兄弟は腕で顔を隠すも、怯み、一瞬の隙が生まれる。
その一瞬に、何者かが大地をかけた。
「僕が魔法を使えることを、忘れてもらっちゃ困るな」
ルーシーがバルトの耳元でささやく。
「しまった!……」
さすがの大魔術師でも、隙には弱かった。
ルーシーはバルトに攻撃するのではなく、その手に持っていた物を奪って、瞬時に距離をとる。
「そうか……守護霊使い、君は治癒魔法も使えるのか……」
バルトは「クソッ」と罵倒を吐く。
「そういうことさ」
そして、いつの間にかルーシーはメアリーも抱えて、フルの元にいた。
「ほら、君の剣さ」
フルに、先ほど引ったくった“シルフェの剣”を渡す。
「ありがとう。これでやっと戦える」
フルは立ち上がって剣を構える。
「2対2で舐められたもの? いや、舐めてなんかいないさ。旗からみてて、正直言ってかなうかどうか、ものすごく自信なかった。でも案外そうでもなかったね。メアリーとルーシー、力あわせての陽動。これで出し抜けて、互角に渡り合ってたんだから」
そして、イルファ兄弟を睨みつけてこう言った。
「でも、これで3対2だ」
兄弟は、降下に転じたそのとき、ルーシーとメアリーに向かって必殺の魔法を放つ。
もちろん、兄バルトは火の魔法を。
妹ロマは水の魔法を。
「そんなの当たらないわよ! 水と火なんて相反する魔法、一緒に打ったら意味ないんじゃない!?」
二人は左右に跳ぶ。
空から落ちてくる小さな火球と、その周りを螺旋状にまとわりつく水柱は、ただ跳ぶだけで避けられるとメアリーは考えていた。
しかし、その球は着弾と同時に、二人の予想を大きく上回る炎を生み出す。
二人はその爆発に巻き込まれ、体を焼かれて地面に叩きつけられた。
もがき苦しむルーシーは「そんな…バカな……」と微かな声で驚きを漏らす。
爆発でできあがったクレーターに兄弟は着地する。
するとロマは、地面にうずくまるメアリーの元に歩いて、思い切り鳩尾を蹴った。
「ぐはぁ゛……」
メアリーは地面を転がる。
ゼェゼェと息を荒くして、とても苦しそうにしていた。
しかし、そんな状況であっても、心は折れていない。
ロマのことを、思い切り睨んでいた。
イルファは、もう勝負ありと決め込み、着地点で妹を見つめていた。
ロマはまたメアリーに近づいてきて、こう言った。
「リュージュ様の子供だからって、警戒なんかして損だったわ。ただのバカ砂利じゃないの」
ふんっ、とメアリーの体を追い打ちをかけるように踏みつける。
「水と火は相性悪いですって?! 笑わせないでよね。水はいったい何でできてるのかしら? H2OよH2O。水素と酸素に決まってるでしょう。水素は火で爆発するし、酸素は火の燃焼を拡大させる。水そのままならまだしも、分解しちゃえば相性ばっちりなのよ! 私とお兄さまの様にね!!」
今まで、冷たい水の様に冷静沈着だったロマは、明らかに熱を帯びていて、まるであふれ出す蒸気のように、次々言葉を放った。
ロマの感情の高ぶりとは逆に、メアリーはニヤリと小さな笑みを浮かべてこう言う。
「たしかに、私たちもまだまだ読みが甘かったわ…… だけど、あなた達も、まだまだってことね」
すると、メアリーの向かい側、イルファ兄弟を挟んだ向こう側で光が爆発した。
いや、それは爆発ではない。衝撃も破壊もない、ただ、強烈な光が当たりに拡散し、素早くイルファ兄弟の視界を奪っていったのだ。
兄弟は腕で顔を隠すも、怯み、一瞬の隙が生まれる。
その一瞬に、何者かが大地をかけた。
「僕が魔法を使えることを、忘れてもらっちゃ困るな」
ルーシーがバルトの耳元でささやく。
「しまった!……」
さすがの大魔術師でも、隙には弱かった。
ルーシーはバルトに攻撃するのではなく、その手に持っていた物を奪って、瞬時に距離をとる。
「そうか……守護霊使い、君は治癒魔法も使えるのか……」
バルトは「クソッ」と罵倒を吐く。
「そういうことさ」
そして、いつの間にかルーシーはメアリーも抱えて、フルの元にいた。
「ほら、君の剣さ」
フルに、先ほど引ったくった“シルフェの剣”を渡す。
「ありがとう。これでやっと戦える」
フルは立ち上がって剣を構える。
「2対2で舐められたもの? いや、舐めてなんかいないさ。旗からみてて、正直言ってかなうかどうか、ものすごく自信なかった。でも案外そうでもなかったね。メアリーとルーシー、力あわせての陽動。これで出し抜けて、互角に渡り合ってたんだから」
そして、イルファ兄弟を睨みつけてこう言った。
「でも、これで3対2だ」
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