ODD
第三十話 一つの考え
「もうひとつ、強い反応がこっちにある」
そういうルーシーに導かれて、城の方向、騒ぎの中心へと走った。
進むにつれて、より多くの操られたハイダルクの人々が、3人に襲いかかってくる。
彼ら自体は“悪”ではない。ただ、なにか大きな力によって行動の全てを乗っ取られているだけなのだ。
そこで、フルはスタンガンで人を気絶させるように電撃を放ち、
メアリーは錬金術で人々の足を地面に縛り付け、
ルーシーは主従融合で得た運動能力、常人には残像すら見えない速さで動きまわり、人々に拳を加えて気絶させていった。
それでも人は、どこからともなく、まるでわき出るように3人の周りに群がってくる。
「もう、きりがない…… フル! メアリー! ちょっとこっちに来て!」
ルーシーは、近寄ってきた2人の胴体に腕をまわし、しっかりと抱えた。
「飛ぶよ!」
一瞬腰を落として地面をける。
すると、瞬く間に数十メートル上空へ跳ね上がった。
「うおぉ…… すげぇ……」
フルは、思わず感嘆の声を漏らした。
跳躍は頂点に達し、一瞬の無重力体験の後、降下が始まった。
そして3人は、道が放射状に広がる、何も無い円形の大きな広場、その端に着地した。
辺りに、操られた人達の姿は無い。
しかし、広場の中心に、3人の反対の方向――ハイダルク城を眺めている少女がいた。
フル達の存在に気が付いたのか、腰まで届きそうな長い金色の髪と、ぶかぶかの真っ白いワンピースを棚引かせて、こちらを向いた。
少女の顔には“表情”がまったく見えなく、まるで作られたかのような、機械的なものだった。
そして、少女はこう言葉を放つ。
『領域内に生命体3体の侵入を感知しました』
日本語だった。
しかも、少し違和感のある機械音声。
『目視により身体的特徴を確認。リストに該当者1名』
次の瞬間、フルの頬をシュッと、何かが横切った。
「いてっ!……」
フルは左の頬をなぞると、血のこすれた跡が手にのこった。
傷はあまり深くないようだ。
そして再び少女の方を向く。
すると、少女の右手には先程まではなかった血糊が、手の平を覆うように付着していた。
「!? 今のスピード…… 主従融合した僕でも視えなかった……」
ルーシーは、次はさせまいと構える。
『DNA情報一致。生命体3体のうち1体をコールドスリーパーと断定』
「!? え?……」
DNAがなんだと言い出したからには、血をとられたフルのみ。
しかし、フルは冷凍保存された覚えなどなかった。
「いや…… もしかして……」
科学の進んだ現代とは違う、魔法の混じったこの世界。
この世界にどのようにたどり着いたのだろう。
フルの頭には、1つの考えが浮かんだ。
「ここは…… 未来?」
『人類補完計画をファイナルフェイズに移行。生還者への状況説明を開始します。改めまして、コールドスリープからの御生還、おめでとうございます。私は、[Messiah]型アンドロイド、「アリス」と申します』
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