腹ぺこ令嬢の優雅な一日
0 ある、お伽噺
――昔あるところに、大きな大陸がありました。そしてそこに、一人の王が国を興しました。
王は、元から住んでいた人々と共に、海に囲まれた大陸を国として作り上げました。国は大きくなり、人々はそこに移住してきたのです。
多くの民であふれたその国に、人々はこれから始まる新たな生活に期待を抱いてそこに移住しました。
王は賢く、そして土地と民を愛していました。そんな王を、国民も愛しました。
そんな王には3人の妃が居たのです。
1人目の妃は王が、王になる前からずっと支えてきた賢い妃。彼女は王の隣で、民が平和に暮らせるように豊かな暮らしができるようにと政治を手伝いました。
2人目の妃は、王が国を興すのを傍で助けた腕の立つ妃。彼女は王宮騎士団を作り上げ、王の、また民を守る手伝いをしました。
3人目の妃は、見る者が見惚れてしまうほどの美しさを持つ、この国が国になる前から住んでいた原住民の娘。彼女はただ穏やかに、この土地を愛し、この国を見守りました。そんな彼女が王たちの心の慰めになりました。
そして、惜しまれながら初代の王が死にました。その年は一年、国は喪に服し、初代王の死を悼みました。
そして1人目の妃の息子が国を継ぎ、2人目の妃の娘たちが他国へ嫁ぎ国と国の結びつきを強めました。
――王の妃たちは王の後を追うように亡くなりました。たった一人、3人目の妃を除いて。
彼女は不思議な妃でした。いつまでもとても美しく、穏やかに歴史を眺めてたのです。長い歴史の中では、戦いも争いもありました。けれど妃はただ穏やかに、須らく王たちの尽力で平和な日々を取り返していく様を見守ったのです。
美貌の妃は、美しいままに、けれど決して主役にはならないまま時が経つとともに眠りにつくように、ある時突然いなくなりました。
3人目の妃は、美しい金髪とサファイア色の瞳を持つ美しい人でした。
匂い立つような美しさは、見る者を圧倒しました。陽だまりの中で静かに見守る彼女は、すべての人間から愛されていました。
だからこそ、その不思議な妃が居なくなったことを誰もが悲しみました。
彼女のゆくえは誰も知りません。けれど、彼女は、もしかしたら。この土地の精霊だったのではないかと、民たちは考えました。
そこで彼女を祀る祠を立てたのです。往生の一角に建てられたそこは、毎年欠かさずに、彼女の瞳の色であるサファイア色を宿す花が咲くと言われています。
古いおとぎ話。国に伝わる、嘘のような童話。
この国ができたのはもう、昔の事だ。歴史は500年を超える。
本に書かれたそのおとぎ話を暗い部屋にいる女は熱心に読んでいた。
読み終わった途端に、本をパタンと閉じて、金髪の髪を背中におろした美貌の女は興味を失ったように本を床に落とした。ばさり、という音と共に落ちた本に目もくれないで女はつややかな髪をそっと手で触る。
足元にはたくさんの紙と本が散乱している。寝間着姿のまま、女はサファイア色の瞳を窓の外に向けた。
もうすぐ、夜明けがやってくるだろう。そして、世界は明るい陽射しに包まれるのだ。
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