大嫌いから大好きへ

片山樹

大嫌いから大好きへ

蝉が鳴き声をあげて更に暑さがこみあげてくる 。俺は最近エアコンなどがある生活に慣れていたため、こんなに暑いとは 思ってもみなかった。 俺は今、森を歩いている。
なぜ、森を歩いているのか?それは、どこかの異世界転生したとか、徳川の埋蔵金を探しに来ただの、とても強い敵と戦っているだの、地球環境の為にごみ拾いをしているだの、そんな事では断じて無い。だが、最後に言ったごみ拾いはちゃんと皆もした方がいい。それはさておき、なぜ俺がこんな所を歩いているのか?と言うと、それは田舎の実家に行く為だ。田舎の方にはバスがあるが、朝の7時と夜の7時にしかバスが無い。 その為歩きという手段しか無かった。
田舎にある実家は今は妹しかいない 。親父は地域の病院にいて母は俺が小学校3年生の時に亡くなった。俺が子供の時にはじいちゃんとばぁーちゃんも一緒に暮らしていたのだが、どちらも亡くなった。俺は人の生とか死とかはよく分からない 。特に死というものがよく分からない。 俺は死というものが小学校2年の時から怖かった。理由はばぁーちゃんが死んだからである。 じいちゃんは俺が5歳の時に死んだ 。俺は初めて人の死というものに出会った。 しかし、5歳の時は何が起きていたのかわからなかったが小2の頃のばぁーちゃんが死んだ時はとても覚えている。
ばぁーちゃんは俺に最後に「自分がしたい事を精一杯するんじゃぞ」と言って息を引き取った。俺はその日から真面目に頑張った。勉強を精一杯した。そのはずなのだが俺は勉強との
変わりに大切な物を無くしていたのだった……
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俺は久しぶりに実家に帰ってきた。ちなみに帰ってきた理由は、嫁さんを連れてきたとか言うそんなおめでたい話ではない。ちなみに、俺は30歳で独身もちろん男だ‼上京してから実家に帰ってきた事は無かったが今年は親父が危ないと妹に言われ帰ってきた 俺は親父とはあまり仲良くは無かった。親父は酒癖が酷くいつも暴力ばかりであった。 それで俺は高校生の時あまりの辛さに家を飛び出した。最初は勢いで飛び出して家に帰ろうとか思ったが親父の暴力があったので帰ろうとは思っていなかった。俺の母は俺が小学校3年生の時に死んだ。 原因は持病だ。元から心臓が悪かったらしい。
親父は母が死んでから酒をよく飲むようになっていった。多分あまりのショックを酒でごまかしていたのだろう。
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気がつくと、もうそこには俺が見たことがある
風景がそこにはあった。そこが自分にとっての故郷と言える場所であり、自分が愛した場所だった。昔とちっとも変わっていない玄関のドアを見て、昔に戻ったような気がした。そして俺は恐る恐るドアを開けみた。すると、妹が出てきた。「おかえり〜 お兄ちゃん」俺は妹が俺が勝手に高校生の時に飛び出した事を怒っているのではないか?と思っていたが妹は笑顔で迎えてくれたので 正直とても嬉しかった。
俺は「ただいま〜」と言って家に入った。
家は俺が居た時と一緒という感じだった。 妹がリビングで待っててと言ったので俺はリビングで待つ事になった。俺の家は昔ながらの感じの家で畳や障子がある。なんか懐かしくて子供の頃に戻ったような感覚に襲われた。そして何よりここには家族という温もりがあった (人は妹しかいなかったのだが、俺はそう感じた)
リビングで待っていると妹が氷の入ったコップとお茶を持ってきた。とても、気がきく妹である俺はそんな事を考えながら、妹からコップを貰いお茶を注いだ。俺はとても、喉がかわいていたのでお茶を一気飲みした。しかし、俺は吐き出してしまった。その理由は俺は上京してからお茶の種類を烏龍茶に変えたので実家が麦茶という事を忘れてしまっていて、びっくりしたのだ。そのせいで吐き出してしまった。
妹が大丈夫お兄ちゃん?と心配そうに言う姿は今も昔も変わってはいなかった 。俺は大丈夫と答え急いで布巾を探しに台所に行ったが見つからなかった が、妹がすぐに見つけてくれた。俺は特に役にたたなかった。
それで、妹が下処理をしてくれる間に俺はテレビでも見ようと思った。 俺の実家にはチャンネルが5つしかない。 それも放送系列もバラバラなのだ。 それに再放送の物が多い。
しかし、今まで仕事がいつも夜遅くまでという事でこの番組は全然見た事がなかった。
俺が昔から見ていた番組なんかももう今では見る事がない。とりあえずどんな番組があるのか、確かめる為に適当にチャンネルを変えてみる。すると、心霊特番とかいう怖い感じの奴を放送するチャンネルを発見!俺は昔からこういう感じの番組が好きだったので俺はこの番組をみることにした。「番組変えない?」と妹が言った。突然言われたら、普通に怖いよ。妹よ。
妹は昔からこういう番組が嫌いと言っているが結構みている。結構ドMなのかもしれない……
でも、自分を傷つけるからドSなのかもな……
そういう人はよくいますよね?
例えば、苦手とかいいながら
ジェットコースター乗る人そんな感じです。
俺は妹の事も考えて番組を変えようと思った。が、ちょうど心霊映像になったので俺はそれをやめた。
俺は一言「これが終わってからな‼」と言ってテレビを見続ける。
俺はこういう心霊映像がとても好きだ。 このリアルに取られている感じでモザイクがかかっている人の顔があってなにより、ナレーターの声が怖い。
それでおわかりいただけただろうか?っていう声がとても怖くてそれが好きだ。
そして、本当に撮られたって感じがする奴はとても怖くてとても面白かった。
それでチャンネルを変えて、他のテレビを見ようとした時に電話がなった。
妹が電話に取りにいって険しい顔で喋っている。それで妹が言った。「すぐ、行きます」
そう言って受話器を置いた。
実家の電話は黒電話なので珍しく感じた。
それで俺は妹から、
「お父さんがなんか苦しそうにしているから早くにきてください。多分今日でお父さんはもう無理だろう。ってさっき看護師さんから言われた」と告げられた。

「俺も行く‼だから、タクシーの準備を頼む」
俺はそう言って東京からの土産を持った。
それでタクシーが来るまで待った。

タクシーは近くを走っていたようですぐに来てくれた。
俺と妹は急いで病院にと言った。
病院まではどんなに早くても大体25分ぐらいかかるらしい。タクシーの中では何も喋る事ができなかった。それに妹は泣いていた。
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病院に着いた。俺と妹は後からお金は払いますから待っていて下さいと言って親父がいる病室まで駆けつけた。親父の周りには看護師さんや
先生などがいた。先生達から最後に何か言ってあげて下さいと言われた。
最初は妹が
「お父さん、死んだら嫌だよ
嫌だよ、本当に私どうすれぱいいのさ? 私が1人でどうすればいいのさ?1人じゃ無理だよ
何もできないよ!ねぇーどうすればいいのさ 」と泣きながら妹は言っていた。
親父は何も喋らなかった。ただ、目でじっくり妹を見ているだけだった。俺は妹を抱きしめて妹の慰めた。

そして俺が親父に、
「親父帰ってきたぞ!俺はあの時家をでて1人で頑張った 。まだ、俺は結婚する人もいないがいつかは結婚する。その時には俺が親父にみたいになるのかな? 親父が母さんが死んだ時は本当にショックだったんだろうな⁈今ならその気持ちがよくわかる 俺は今まで、暴力親父だったのに親父が俺が小さい頃はめっちゃ優しかった事を思い出したよ その記憶が頭の中に残っているんだ‼俺は親父いや父さんが好きだった」と俺は泣きながらこんな事を言ってしまっていた。親父も俺をみながら泣いていた。
親父はそのまま泣きながら亡くなった。
親父を泣いてお別れにしちまったな……
俺はそういう罪悪感が生まれた。
俺はこの後の事をあまり覚えていない……
____
そして、何日かたった後に葬式が行われた。
葬式の事もあまり記憶にない。
本当にこの気持ちがわかるのは本当に大切な人が死んだ時にしかわからないだろう‼

俺は葬式か終わってから会社に連絡したら少しの間会社を休んでいいと言われた。
本当に会社の上司はいい人だ。今の会社はとても楽しい。俺はそれでこの家でゆっくりする事になった。
____
 そして東京に帰る日になった。俺は妹から弁当を作って貰った。そして俺はバスの中でそれを食べようと思って弁当の風呂敷を開けたらそこには封筒があった。中身を見ると、それは父親の字だった‼「 すまない、母さん……
俺は遥をちゃんと育てる事ができなかった 。遥は母さんから頼まれていたのに俺は何もできなかった。仕事で身体が疲れていた。そればかりか酒を飲んでその疲れを無くそうと思っていた。本当にすまない母さん……
俺は何もあの子達に何もできなかった 。俺は本当にあの子達の父親でよかったのだろうか?
とかそんな事を考えていた病院生活もあとちょっとで終わりそうです 。自分の命があとどのくらいなのか?なんてものは自分の方がわかります。母さん俺が死んだらまた、あなたに会いに行きます。だから絶対に待っていて下さい」
この手紙には父さんのと思われる涙の跡がいくつもあった。父さんは自分が死ぬのが怖かったのだろう。 それと自分が生まれたわけの理由を知りたかったのだろう。誰かの役にたてたのたろうか?とかそういうのを考えたのだろう
どんなに辛い生活だったのだろう。
母さんが死んだのは俺が小3の時だから、妹は小1だったはずだ。それもどちらとも騒がしくしていた時期だったはずだ。それに朝は俺たちを起こしたり、弁当を作ってくれたり洗濯物をしたりなどの家事と仕事を自分1人で行っていたのだ‼それに帰りは遅くならないようにすぐに帰ってきていた。俺らがお腹をすかして待っていたので早くに帰ってきていた。
「本当にありがとう父さん」
俺は涙を流しながらそう言った。
聞こえるはずも無いのに……もう伝える事もできないのに……そして、封筒の中にもう一つ何か入っていた。それは俺が昔欲しがっていたシールだった。今ではこれは100万円ぐらいの価値があるレア物である。当時はやっていたのだが、俺の家は貧しかったので買ってくれなかった。だから、俺がクリスマスに一度だけお願いしたのがこのシールだった 。俺は全力で泣いた。今まで大嫌いだったはずなのに俺は今親父が大好きだ‼なぜか?俺は親父が恋しくなっていた 。そして俺は思った。
「親父みたいに親父になりたい」と思った。
親父が生きてきた理由が今わかった気がした。俺の為だったんだ。俺にこの事をわかって貰う為に今まで生きていたんだ‼と俺は思った。
もっと親孝行すればよかったと俺は後悔した‼
でも、時間は一方通行なので戻る事はできない。でも、未来は変えられる。俺はその未来へと歩きはじめたのであった。

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