ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最凶生体兵器少女と働いたら

稲荷一等兵

72話-情報整理

馬鹿正直にステイシス=アルマであると公表するよりは断然平和的でややこしくないが。
この場で彼女の正体を知らないのは、新田大尉と蘇芳少佐のみ。
静流はもちろん、アルビナもRBも知っているのだが……。

「まあそれはええとして……、結局本土の連中は何をしとったって?」

 蘇芳や新田、RBの認識としては海上都市に入り込み害をなすかもしれない本土軍及びブラックボックスの捜索が今回の任務の目的であった。
それは雛樹としても同様であり、また雛樹にとっては別のオーダーもこなさなければならなかった任務でもあった。

きっかけは匿名非通知での連絡。
裏切りに遭う少年と少女を助けてほしい。
自分がガスマスクの男だということも知っていた。おそらくは本土関係者ではあるだろうが……。
ボイスチェンジャーを使用され、男性か女性かもわからない声だったため特定は難しいだろう。
特にガスマスクの男としては誰にも頼れない状態では。

「奴らの目的はパレード襲撃事件の時から一貫している。我々方舟の最高戦力、ステイシスアルマを手に入れること。そしてその先にあるのはドミネーター、もしくはその因子の軍事利用だ」

 アルビナは事前に雛樹から今回の採掘シャフトであったことを聞いていた。それは雛樹から直接伝えたいと申し出があったためだ。
その報告は雛樹だけでなくガーネット……ステイシスとしての彼女からも行われた。
それは報告に、より信憑性を持たせるために他ならない。

「奴らが持ち出したのはステイシスアルマだ」

「……はぁ? アルビナはん、それは聞いてへんよ。そもそも方舟の護り神が奪われたとあれば即奪還作戦部隊が組まれるはずやないの?  そもそもうちらこんなゆっくりしてられへんやろ」

「ああ、お前の言う通り今現在方舟に存在するステイシスではない」

RBはちらりと壁にもたれているガーネットの方に視線のみを向けた……が彼女はそれに気づき不機嫌そうにふいっと顔を逸らす。

「6年後のステイシスを奴らは持ち去っている」

「6年後……?ってこたぁ、奴らが企業連合のタイムゲートシステムを起動させた理由ってのは」

ガスマスクの男が起動させたとされるタイムゲートシステムの設定年月日は6年後。
そしてそのタイムゲートシステムを通過してきたものは例の強大なドミネーターコード、ブラックボックスのみだと考えられていた。

「そうだな? 祠堂雛樹」

「そうです。この目で確認しました」

「なんやルーキーはん。護り神のこと知ってはるん?」

「私はパレード襲撃の際、ステイシスの奪還に関わってます。容姿は守秘義務が課されてるため言えませんが」

またそこでバレないように視線をこちらに一瞬だけ向けてくるRBに対し、その予感がしていたガーネットはすかさず腕組みをしたまま右手の親指を下に向けて立て、暗に殺すと伝える。


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