ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最凶生体兵器少女と働いたら

稲荷一等兵

61話ー水中二脚機甲戦闘

 ひっくり返ったガーネットは涙目になりながら頭を押さえ……。

「はっ……はぁ……わ、悪い……!!」

 雛樹は目覚め、息苦しそうに随分咳き込みながらも左手をガーネットに差し出し、右手でベリオノイズのシステム調整を行う為コントロールボードを叩く。
 覚醒したばかりで視界はおぼろげだがのんびりしている暇はない。

「あたしも勝手なことしたしぃごめんなさいだけどぉ……ちょっとひどぉい」

「吐いた海水被るよりはましだったろ……。げほっ……クソ、まずいな脚部が取り込まれつつある……スラスターの出力も安定してないな……」

「ふぅん、下の大きな子の気配ってそういうこと……随分大きくなっちゃったみたいねぇ。それにこの子水中稼働ぶっつけでしょお? つぎはぎなんだからあんまり無茶させちゃだめよぅ」

 ベリオノイズのステータスを細かく示したインジケーターに視線を走らせながらコクピットシートに座っている雛樹の膝の上に乗った。
 小さなお尻をもそもそと動かし、据わりの良い場所を見つけて落ち着いた。
 慌ただしくシステムの再調整を進めていた雛樹はコントロールパネルに伸ばした腕が激しく引きつるのを感じて一瞬動きを止めた……。

「……。なんだ、随分といつもの調子に戻ったな」

 再び手を動かしながら雛樹は膝の上に座るガーネットに皮肉っぽく言った。

「あのしどぉはあたしのしどぉじゃなかったからぁ。しどぉはしどぉだけどぉ」

「しどぉだらけでよくわからないな……。後で詳しく聞かせてくれ」

「いいわよぉ。で、今からどぉしたいのぉ?」

「潜水艇は……今から出ても間に合わないだろうからな。とりあえずこのデカブツを外に出る前に仕留めることが優先だ」

「ふぅん……じゃあこのシャフトの底から一度海溝に引きずり下ろした方がいいかもぉ」

 この装備じゃ結構難しいわよぉと雛樹に言うが、雛樹はやるしかないと操縦桿を握った。
 まずは脚部に絡みついている変異体を振り払わなければ話にならない。

「しどぉ、何度も言ってるけど感覚よぉ。この状況で考えて動かしてるようじゃ死ぬからぁ」

「はいよ。ありがたい助言サンキュー」

「ぜんぜんサンキュー思ってなぁい!」

 アイドリング状態でのスラスターの出力は安定していなかったが、いざ出力を上げてみると驚くほどスムーズに稼働した。

 おそらくベリオノイズのスラスターは本来の二脚機甲ではありえないことではあるが逆流してくる海水のせいで稼働不良を起こしているのだ。
 流れ込んでくる海水を全て機関部から吐き出してやれば問題なく動く。
 と、なればスラスターコントロールはかなりシビアなものとなってくるが……。

 
 「足が捕まっているならそのまま引きずり出してやる……」



「ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最凶生体兵器少女と働いたら」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「SF」の人気作品

コメント

コメントを書く