ノアの弱小PMC—アナログ元少年兵がハイテク都市の最凶生体兵器少女と働いたら
第4節5部ー偽りの任務ー
 紛れもなく、人間そのものなのだと思わされた。
途端に淀む、侵食体への敵意。同じ部隊の部下を救わなければならないという決意も、ひどいノイズにより薄れていく。
これを撃てば、人殺しになるのか。
引き金を引くのをためらい過ぎた。最高集束点を逃し、携行型粒子砲から射出されるはずだったエネルギーは一度初期値に戻る。チャージをし直している間に、つかまった仲間は取り込まれてしまう。
「なにやってる。仲間と、誰とも知らない化け物どっちが大切なんですか」
進み出て、触腕を防いだ男から、吐き捨てるようにそんなことを言われた。 言われた直後、銃声が鳴り響く。触腕が変化した複数の表情その中心を、幾つもの鉛の弾丸が打ち抜き穴を開けた。間髪入れずセレクターを弾き、フルオート射撃からセミオートへ切り替えその先……、部隊の兵士を引き摺る触腕の側面を捉えた。
10発ほど発砲したあたりで触腕がちぎれ、捕らえられていた兵士が解放された。だが、まだ一人だ。あと数人いるが……。
「右側面から増援が到着!! うお、射線上だ。集落に走るぞ、急げ!!」
あとは、増援部隊に任せるしかない。雛樹、ステイシスはすぐに走り出したが、来栖川准尉は放心する荒木一等を起こしてからだったために少し出遅れた。
後方では凄まじい数の銃声、そして侵食体の悲鳴と兵士らの驚愕の声。
今や先ほどまで自分たちがいたところは蜂の巣だろう。
「しどぉ」
「っは、っは……なんだ!」
「あの二人ぃ、付いて来させてよかったのぉ? あっち、さっきのと一緒のがうじゃうじゃよぉ?」
「ああ……っ、目撃者が必要になるかもしれないっ、からな」
「もくげきしゃあ?」
「侵食体にあそこまで変異できる人間は500人に1人くらいっなんだ。普通は人の細胞が完全に壊死して侵食が止まるからなっ……」
自分より歩幅が狭いくせに、涼しい顔で自分の全力疾走についてきて、しかも息ひとつ乱していないステイシスに若干の憎たらしさを覚えながら、雛樹は後方から来ているであろう二人を確認するために一瞬だけ振り向いて、前を向く。
「それがこの島には複数いる……っのは、おかしいだろ。あれは方舟と言った……。おそらく、元は海上都市にいたんだ……!」
天然の侵食体は、500分の1。だが、耐性のある人間を使って、さらに人為的な操作で作り出されたものならどうだ。
どう見てもあれは失敗作だ。そして、今自分の隣には成功作と思われるステイシスがいる。
失敗したものはどう処分する。廃棄か、ひとところに集めて行く末を記録するのか。
なんにせよ……、あの侵食体は作られたものだ。作られて、失敗し、廃棄された。
「へぇ、じゃああれはアルマの失敗作ぅ?」
「その可能性が高い。最悪、輸送任務などは建前で、あれとぶつけるために部隊が編成された可能性だってある」
「なんのためにぃ?」
「それはまだわからない。でも……俺個人の手に負える事態じゃないのは確かだ。圧倒的な火力が必要だ。それを可能にする兵器なら後ろで待ちわびてる」
一秒でも早く対空、対地兵器のシステムをダウンさせ、二脚機甲部隊を動かす必要があった。
途端に淀む、侵食体への敵意。同じ部隊の部下を救わなければならないという決意も、ひどいノイズにより薄れていく。
これを撃てば、人殺しになるのか。
引き金を引くのをためらい過ぎた。最高集束点を逃し、携行型粒子砲から射出されるはずだったエネルギーは一度初期値に戻る。チャージをし直している間に、つかまった仲間は取り込まれてしまう。
「なにやってる。仲間と、誰とも知らない化け物どっちが大切なんですか」
進み出て、触腕を防いだ男から、吐き捨てるようにそんなことを言われた。 言われた直後、銃声が鳴り響く。触腕が変化した複数の表情その中心を、幾つもの鉛の弾丸が打ち抜き穴を開けた。間髪入れずセレクターを弾き、フルオート射撃からセミオートへ切り替えその先……、部隊の兵士を引き摺る触腕の側面を捉えた。
10発ほど発砲したあたりで触腕がちぎれ、捕らえられていた兵士が解放された。だが、まだ一人だ。あと数人いるが……。
「右側面から増援が到着!! うお、射線上だ。集落に走るぞ、急げ!!」
あとは、増援部隊に任せるしかない。雛樹、ステイシスはすぐに走り出したが、来栖川准尉は放心する荒木一等を起こしてからだったために少し出遅れた。
後方では凄まじい数の銃声、そして侵食体の悲鳴と兵士らの驚愕の声。
今や先ほどまで自分たちがいたところは蜂の巣だろう。
「しどぉ」
「っは、っは……なんだ!」
「あの二人ぃ、付いて来させてよかったのぉ? あっち、さっきのと一緒のがうじゃうじゃよぉ?」
「ああ……っ、目撃者が必要になるかもしれないっ、からな」
「もくげきしゃあ?」
「侵食体にあそこまで変異できる人間は500人に1人くらいっなんだ。普通は人の細胞が完全に壊死して侵食が止まるからなっ……」
自分より歩幅が狭いくせに、涼しい顔で自分の全力疾走についてきて、しかも息ひとつ乱していないステイシスに若干の憎たらしさを覚えながら、雛樹は後方から来ているであろう二人を確認するために一瞬だけ振り向いて、前を向く。
「それがこの島には複数いる……っのは、おかしいだろ。あれは方舟と言った……。おそらく、元は海上都市にいたんだ……!」
天然の侵食体は、500分の1。だが、耐性のある人間を使って、さらに人為的な操作で作り出されたものならどうだ。
どう見てもあれは失敗作だ。そして、今自分の隣には成功作と思われるステイシスがいる。
失敗したものはどう処分する。廃棄か、ひとところに集めて行く末を記録するのか。
なんにせよ……、あの侵食体は作られたものだ。作られて、失敗し、廃棄された。
「へぇ、じゃああれはアルマの失敗作ぅ?」
「その可能性が高い。最悪、輸送任務などは建前で、あれとぶつけるために部隊が編成された可能性だってある」
「なんのためにぃ?」
「それはまだわからない。でも……俺個人の手に負える事態じゃないのは確かだ。圧倒的な火力が必要だ。それを可能にする兵器なら後ろで待ちわびてる」
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