最強は絶対、弓矢だろ!
いつもの朝
☆☆☆
翌日の朝は晴れ晴れとしていて、雲一つの淀みもない。俺たち一行は、少々無作法ながらもエルフィアのいる寝室(?)に集まり、侍女に朝食を運ばせてそこで飯を喰らっていた。
これからの話をするためだ。
「まずはお兄様たちとのお話を、私が掻い摘んで説明するね?」
エルフィアはそう前置きをしておき、そっと説明する。第一王子ハンニバル、並びに第二王子アレクセン……二人ともに王位を諦めるつもりもなければ、勿論譲るつもりはないらしい。それはエルフィアも同じで、三者ともに徹底抗戦の意を示しているとのこと。
劣勢であるエルフィア派に敗北を続けるアレクセン派は、次なる手を用意しているようで、本日中にはアレクセン派からの接触があるとのこと。王都に三勢力が集結している間に、伝説の武器をいくつか回収しておきたいのだろう。
ハンニバルとアレクセンは、それに関して同意見だそうだ。つまり、今日の接触はハンニバルとアレクセンの合意のもと……何かが行われるということ。力関係で圧倒的に不利なエルフィアに拒否権も決定権もない。
「ん〜儂が裏で得た情報じゃとなのぉ?三勢力で一つずつ伝説の武器を賭けて国として大きな催しを開くつもりらしい」
「催し……ですか?闘技大会のような……でしょうか」
シールの推論にいち早く反応したのは、こういう血が滾ることを好むディースだ。
「おぉ!それは……うむ!いいな!」
「まーだ決まっとらんがのぉ〜」
たしかに、まだ決まってはいない。が、俺もどうせなら闘技大会みたいな楽しいものがいい。
ふっ……しかも、まあ?俺が?優勝するのは?確定?し・て・る・しぃ?
この俺様の名声を高めるにはこれ以上ないというくらい、いい方法だ。この手に乗らない理由はないだろう。ただ、やはりというべきか……慎重派のレシアは反対なようで不満げだ。
とはいえ、どんな無理難題でも今は首を縦に振らなければならない状況だ。たしかに、王位継承権では第二位の位置するが、勢力図的にはアレクセンには遠く及ばない。本格的に物量で押さえ込まれれば、いかに一騎当千の猛者が四人いようとも非戦闘員二人を抱えて戦うのは厳しい。
――ロアが一騎当千?……ふっ。
「おいてめぇ!目みりゃあで分かるんだよ!ぶっ殺されてぇのかレシア!」
「ロアこそ目を見れば何を考えているのか丸わかりだと自覚してください!何が一騎当千ですか!矢を千本持てるんですか!?」
こ、この女!あーいえばこーいう……っ!!
「あれ?ロア、今何か言ってたかな……?」
「つい先日から、二人とも目を合わせて会話できるようになってたね」
シールとエルフィアがそんなことを言っていた。たしかに、そうだ。今日までの付き合いの中で、何となくだがレシアの考えていることは目を見れば直ぐに分かるようになった。それはまた逆も然り……俺たちはアイコンタクトのみで意思疎通が図れる。何ともまあ、便利であるが……何を勘違いしたのか、ハニーが恍惚とした表情で言った。
「おぉ〜もはや熟年の夫婦じゃな〜」
「誰が夫婦だぁ!」
「誰が夫婦ですか!」
俺とレシアは、ハニーの煽りに対してほぼ同時に叫んだ。それをハニーはさらに攻撃材料として拾っていく。
「ん〜息もピッタリじゃ」
「違う」
「違います」
「なら嫌いかえ?」
「「…………」」
嫌いという一言で、ふと昨夜の出来事を思い出してしまった。チラッとレシアを盗み見ると、耳まで真っ赤にして俯き……そして俺と同じようにチラッとこっち見てきたので目が合う。
――き、昨日のは……その……。
――別に……か、勘違いなんかしてぇねぇし……。
その一瞬の後、俺らは纏めて視線を逸らす。全く調子が狂って仕方がない……。
「と、とにかくだ!今はそんなことよりもこれからだろ?」
「そ、そうですね!今のところはハンニバル様もアレクセン様も動きはないようですし……私たちにできることはないでしょう!ええ!」
俺に便乗する形でレシアもそう捲くして立てる。その程度で逃げられるとでも?と言いたげなハニーの視線を受け、途方に暮れるとディースからまさかの助け舟が来た。
「ふむ……そうであるな!時に、昨日ロア殿は第一王子に呼ばれていた。昨日はなんでもないとはぐらかされてしまったが、良い機会。ここで昨日のことを教えて欲しいが……構わないかね?」
と、ディースは俺に訊いてきた。俺はとにかくハニーの追及から逃れようと、掻い摘んでハンニバルのところで起こった出来事をエルフィア達に話した。
最初、俺がハンニバルに引き抜かれかけたことに不安そうだったエルフィアとシールだったが……俺が蹴ったと言った時には安堵の息を漏らしていた。
「ふっ……やっぱ、俺様がいねぇと寂しいぃのか?」
「うん。でも、どうして上のお兄様のお話を断ったの?ロアさんが残ってくれるのはとっても嬉しい……けど、私のところよりも……」
「バカいえ」
俺は下を向きながら巫山戯たこと言うエルフィアに向かって椅子から立ち上がり、朝食の盛られたテーブルに身を乗り出して向かい側にいたエルフィアの頭を軽く小突く。
「あいた……??」
どうして小突かれたのか分からないという表情のエルフィアに対して、俺は呆れながらも言ってやった。
「俺様の中じゃあ、お前たちはもう俺の仲間……ダチなんだよ。命賭けてるダチ見捨てて、金やら名誉やら地位を手に入れる……そんな男は男じゃねぇ」
「……っ!その通りである!そんな者は男に非ず!男は、女子供を守り、己が道を貫き通す者のこと……さすがロア殿であるな。感服した!」
ガシッと……俺とディースは腕と腕で握手を交わす。何やら女どもが暑苦しいものを見る目で見ているが……知らん。これが男というものだ!
「「ガーハッハッハッハッ!」」
「うるさいです」
レシアの一喝で俺とディースはシンっと静かになり、席に戻る。と、隣でレシアがポツリと呟く。
「お嬢様へ手をあげたので……死刑です」
「小突いただけじゃねぇか!この馬鹿!」
「なっ……なんですか!この阿保!」
んだとこのアマぁ!!
「……け、結局喧嘩になるだね」
「前よりも仲良しになってる……しょ、証拠だと思うなー……多分」
「お嬢様!そこは自身持って下さい……」
翌日の朝は晴れ晴れとしていて、雲一つの淀みもない。俺たち一行は、少々無作法ながらもエルフィアのいる寝室(?)に集まり、侍女に朝食を運ばせてそこで飯を喰らっていた。
これからの話をするためだ。
「まずはお兄様たちとのお話を、私が掻い摘んで説明するね?」
エルフィアはそう前置きをしておき、そっと説明する。第一王子ハンニバル、並びに第二王子アレクセン……二人ともに王位を諦めるつもりもなければ、勿論譲るつもりはないらしい。それはエルフィアも同じで、三者ともに徹底抗戦の意を示しているとのこと。
劣勢であるエルフィア派に敗北を続けるアレクセン派は、次なる手を用意しているようで、本日中にはアレクセン派からの接触があるとのこと。王都に三勢力が集結している間に、伝説の武器をいくつか回収しておきたいのだろう。
ハンニバルとアレクセンは、それに関して同意見だそうだ。つまり、今日の接触はハンニバルとアレクセンの合意のもと……何かが行われるということ。力関係で圧倒的に不利なエルフィアに拒否権も決定権もない。
「ん〜儂が裏で得た情報じゃとなのぉ?三勢力で一つずつ伝説の武器を賭けて国として大きな催しを開くつもりらしい」
「催し……ですか?闘技大会のような……でしょうか」
シールの推論にいち早く反応したのは、こういう血が滾ることを好むディースだ。
「おぉ!それは……うむ!いいな!」
「まーだ決まっとらんがのぉ〜」
たしかに、まだ決まってはいない。が、俺もどうせなら闘技大会みたいな楽しいものがいい。
ふっ……しかも、まあ?俺が?優勝するのは?確定?し・て・る・しぃ?
この俺様の名声を高めるにはこれ以上ないというくらい、いい方法だ。この手に乗らない理由はないだろう。ただ、やはりというべきか……慎重派のレシアは反対なようで不満げだ。
とはいえ、どんな無理難題でも今は首を縦に振らなければならない状況だ。たしかに、王位継承権では第二位の位置するが、勢力図的にはアレクセンには遠く及ばない。本格的に物量で押さえ込まれれば、いかに一騎当千の猛者が四人いようとも非戦闘員二人を抱えて戦うのは厳しい。
――ロアが一騎当千?……ふっ。
「おいてめぇ!目みりゃあで分かるんだよ!ぶっ殺されてぇのかレシア!」
「ロアこそ目を見れば何を考えているのか丸わかりだと自覚してください!何が一騎当千ですか!矢を千本持てるんですか!?」
こ、この女!あーいえばこーいう……っ!!
「あれ?ロア、今何か言ってたかな……?」
「つい先日から、二人とも目を合わせて会話できるようになってたね」
シールとエルフィアがそんなことを言っていた。たしかに、そうだ。今日までの付き合いの中で、何となくだがレシアの考えていることは目を見れば直ぐに分かるようになった。それはまた逆も然り……俺たちはアイコンタクトのみで意思疎通が図れる。何ともまあ、便利であるが……何を勘違いしたのか、ハニーが恍惚とした表情で言った。
「おぉ〜もはや熟年の夫婦じゃな〜」
「誰が夫婦だぁ!」
「誰が夫婦ですか!」
俺とレシアは、ハニーの煽りに対してほぼ同時に叫んだ。それをハニーはさらに攻撃材料として拾っていく。
「ん〜息もピッタリじゃ」
「違う」
「違います」
「なら嫌いかえ?」
「「…………」」
嫌いという一言で、ふと昨夜の出来事を思い出してしまった。チラッとレシアを盗み見ると、耳まで真っ赤にして俯き……そして俺と同じようにチラッとこっち見てきたので目が合う。
――き、昨日のは……その……。
――別に……か、勘違いなんかしてぇねぇし……。
その一瞬の後、俺らは纏めて視線を逸らす。全く調子が狂って仕方がない……。
「と、とにかくだ!今はそんなことよりもこれからだろ?」
「そ、そうですね!今のところはハンニバル様もアレクセン様も動きはないようですし……私たちにできることはないでしょう!ええ!」
俺に便乗する形でレシアもそう捲くして立てる。その程度で逃げられるとでも?と言いたげなハニーの視線を受け、途方に暮れるとディースからまさかの助け舟が来た。
「ふむ……そうであるな!時に、昨日ロア殿は第一王子に呼ばれていた。昨日はなんでもないとはぐらかされてしまったが、良い機会。ここで昨日のことを教えて欲しいが……構わないかね?」
と、ディースは俺に訊いてきた。俺はとにかくハニーの追及から逃れようと、掻い摘んでハンニバルのところで起こった出来事をエルフィア達に話した。
最初、俺がハンニバルに引き抜かれかけたことに不安そうだったエルフィアとシールだったが……俺が蹴ったと言った時には安堵の息を漏らしていた。
「ふっ……やっぱ、俺様がいねぇと寂しいぃのか?」
「うん。でも、どうして上のお兄様のお話を断ったの?ロアさんが残ってくれるのはとっても嬉しい……けど、私のところよりも……」
「バカいえ」
俺は下を向きながら巫山戯たこと言うエルフィアに向かって椅子から立ち上がり、朝食の盛られたテーブルに身を乗り出して向かい側にいたエルフィアの頭を軽く小突く。
「あいた……??」
どうして小突かれたのか分からないという表情のエルフィアに対して、俺は呆れながらも言ってやった。
「俺様の中じゃあ、お前たちはもう俺の仲間……ダチなんだよ。命賭けてるダチ見捨てて、金やら名誉やら地位を手に入れる……そんな男は男じゃねぇ」
「……っ!その通りである!そんな者は男に非ず!男は、女子供を守り、己が道を貫き通す者のこと……さすがロア殿であるな。感服した!」
ガシッと……俺とディースは腕と腕で握手を交わす。何やら女どもが暑苦しいものを見る目で見ているが……知らん。これが男というものだ!
「「ガーハッハッハッハッ!」」
「うるさいです」
レシアの一喝で俺とディースはシンっと静かになり、席に戻る。と、隣でレシアがポツリと呟く。
「お嬢様へ手をあげたので……死刑です」
「小突いただけじゃねぇか!この馬鹿!」
「なっ……なんですか!この阿保!」
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