夢破れて山河あり……心砕けて束縛あり
夢破れて山河あり……心砕けて束縛あり
初めて売れた!!
信じられないと思い、何度も確認する。
本当に売れていた!!
自分の作ったピンクッションセット。
ネットフリマで売り出した、手作りのピンクッションである。
大小セットに、待ち針をつけて、ラッピングをして売るのだ。
送料はこちらもちであり、手数料もサイトに渡すので、そんなに収入にはならないが、それでもほんの少しでもお金になれば嬉しい。
作った材料は本当に布の端の端まで使う。
それと、材料のほとんどはただ同然で集めたものである。
それほど、けちってまで何の意味があるのか……自分には、裁縫の腕と、レアコアネタのいらねぇだろ?そこまでの知識、どこで調べた!!と言われるほどの、三国志のネタと、日本史、中国、イギリスの歴史に、世界中の神話の知識はある方だと思う。
でも、はっきり言って、裁縫の腕はあっても集中力はなく、
「服を作ったら?」
などとなると、面倒な……と眉を寄せる。
でも、
「ぬいぐるみ、作りたいんだけど!!」
になると、気持ちが高揚し、ウキウキと準備を始める。
好き嫌いと言うよりも神経質だが大雑把と言う、矛盾した性格のせいである。
ちなみに、乙女座なので、女性脳であり、女性的なものが好き……では余りない。
高い服を買うのなら、テディベアや、資料を買いたい。
実際、ドイツにいきたい人間である。
シュタイフ社に通って、修復を見てみたい!!
できれば、ドイツ語を習得したい!!
中国語とドイツ語があれば何とかなる!!
と大雑把なB型の性格が囁く。
英語は無理だから……中国語なら、何とか筆談に持ち込める。
だから……。
神経質で心配性の乙女座の性格と、B型の大雑把で目分量!!これでいける!!と、鉄板でクッキーを焼いたら、弟に、
「く、食えんの?」
と言われ、
「スコーンに似た味になっとるよ。食べとうみ?」
と勧め、意を決した弟が、口に入れると、感激した顔で、
「姉貴、料理しか出来んのかと思ったわ。ちゃんと、お菓子作れるんやな!!」
「失敬な!!ドーナツも、ホットケーキも作りよったやろがね!!失礼な!!」
「いやぁ……いつも、『適量!!目分量!!その日の勘!!』とかいよるけん……」
と言う弟に、
「そりゃぁ、うどん屋でうどんこねとったら感覚わかるわ。そばを打つときの菊練り出来るか?」
「専門用語……無しでお願いします」
「うどんのローラーに手ぇ挟まれて、骨折してなかった私の手を甘くみんなよ!!」
フッ!
と答えた刹那に、弟は、ボソッと、
「どんだけ頑丈やねん!!」
「当時はな~。4キロを自転車で12分で走っていきよったし、信号さえうまくいけば、止まらずに行けるんよね~。あの頃は若かった」
「そうよなぁ……あの頃の姉貴は……」
急に黙り込んだ弟は、横を向き、
「こぇぇ……姉貴。あの頃とそんなに変わってねぇ!!顔!!」
「昔は老けてたってことか!!」
ヘラを煌めかせると、ブンブンと首を振る。
「姉貴、整形したか!?それとか特別ななんかしとるんか!?」
「昔からベビーソープで顔を洗い、髪はベビーシャンプーのシャンプーとリンス。化粧水、面倒やけん、全くしとらん!!するならベビーローション!!文句あるか!!」
「こえぇぇ!!それで、化粧は……」
「二十歳までにはめんどくさくなって止めたな。化粧せいって言われたら、色のつくリップと、眉毛だけ整えたら何とも言われんもん」
正直に伝える。
「めんどくさいの嫌いやけん。そんなのに金かけるなら、テディベアの勉強したいわ」
「……女完全に捨てたな、姉貴……」
「要らんわ。そんなもん。三国志の資料を探しに行くけん、後は、あんたがおし。こっちに帰ってきて嬉しいんは、大きい図書館が二つ、散歩くらいで行ける位やわ。ほんじゃ」
出ていく。
最近はうちにいる子達にも会いに戻れない。
可愛くて可愛くて……そんなあの子達を置いて死ぬつもりはなかったけれど、きっと悲しんでいる……。
だから、一人ずつだっこして、頬を寄せて、大丈夫だよと伝えたいのに……自分の行為がこんなに、子供たちに影響を与えるとは思わなかった。
悔しい……自分に腹が立つ。
こんな母で、ごめんなさい。こんな母が、お家に迎えたなんて……他のおうちの方がいいと思われていないか、それだけが不安で哀しい。
実家を追い出されたとき、自分は一人ではなく、ライカちゃんというライオンの女の子のぬいぐるみに、懸賞で当たったシュタイフ社のベア、他に数人の子供たち……。
その子たちもきっと泣いている。
どうして、私は忘れたのだろう。
大事な家族はちゃんといたのに……。
しかし、現在半分軟禁中の刹那にとって、最近は本当に辛い。
自業自得とはいえ、自分が薬を飲んだのは事実で、覆らないが、今まで無視、もしくは財布としてしか見ていなかった刹那を、急に干渉するようになったのだ。
妹は変わらない。それは当然だ。元々意思の疎通はある程度メールでやり取りをしていたからである。
だが、今になって両親……母の干渉がきつい。
電話を何度もかけてくるのだ。
「今どこにいるの?」
「お昼のお弁当食べた?」
「こっちに戻っていらっしゃい」
今までは、全く電話を掛けて来なかったのに、一日2回電話が入る。
「あぁ、今日は帰らない。いいでしょ。明日こっちの病院があるから!!」
「じゃぁ明日、戻りなさい!!お父さんも心配しよるけんね?いい?解っとる?」
「何でよ!?月曜日は、予約があって、また病院なんよ!!」
イライラとする。
「もうええやんか!!今までほっといて、今さら言わんといてや!!逆にうっとうしい!!」
「じゃぁ、お母さんが!!」
「こんでええ!!ばあちゃんのこと心配やろ!!来るな!!」
昨年末、転んだ祖母は骨折。その手術の経過が良くなく、その上、叔母たちが、あれこれと看護師さんに文句を言うため、病院を追い出され、病院の系列の老人福祉施設に入ることになった。
痴呆も悪化しており、その上ろくな面倒を見ていなかった事に院長先生が心配し、叔母たちには入ってくるなと言っていたらしい。
母は、文句を言うことなく、看護師さんに頭を下げて、
「母を、よろしくお願いいたします。あの、大丈夫ですか?」
看護師さんは、
「おばあちゃんですか?大丈夫ですよ?」
「いえ、私の姉妹が済みません。ご迷惑をお掛けしていませんか?母が言うのは可愛いんですが……」
「は、ぁ……」
返答がなかったという。
来週祖母が転院する……それからは、母が来る……。
あの時の自分を本当に止めたい。
あぁ、自分は逃げようとして、逆に囚われてしまったのかもしれない。
国破れて山河あり……
心砕けて束縛が始まる……
信じられないと思い、何度も確認する。
本当に売れていた!!
自分の作ったピンクッションセット。
ネットフリマで売り出した、手作りのピンクッションである。
大小セットに、待ち針をつけて、ラッピングをして売るのだ。
送料はこちらもちであり、手数料もサイトに渡すので、そんなに収入にはならないが、それでもほんの少しでもお金になれば嬉しい。
作った材料は本当に布の端の端まで使う。
それと、材料のほとんどはただ同然で集めたものである。
それほど、けちってまで何の意味があるのか……自分には、裁縫の腕と、レアコアネタのいらねぇだろ?そこまでの知識、どこで調べた!!と言われるほどの、三国志のネタと、日本史、中国、イギリスの歴史に、世界中の神話の知識はある方だと思う。
でも、はっきり言って、裁縫の腕はあっても集中力はなく、
「服を作ったら?」
などとなると、面倒な……と眉を寄せる。
でも、
「ぬいぐるみ、作りたいんだけど!!」
になると、気持ちが高揚し、ウキウキと準備を始める。
好き嫌いと言うよりも神経質だが大雑把と言う、矛盾した性格のせいである。
ちなみに、乙女座なので、女性脳であり、女性的なものが好き……では余りない。
高い服を買うのなら、テディベアや、資料を買いたい。
実際、ドイツにいきたい人間である。
シュタイフ社に通って、修復を見てみたい!!
できれば、ドイツ語を習得したい!!
中国語とドイツ語があれば何とかなる!!
と大雑把なB型の性格が囁く。
英語は無理だから……中国語なら、何とか筆談に持ち込める。
だから……。
神経質で心配性の乙女座の性格と、B型の大雑把で目分量!!これでいける!!と、鉄板でクッキーを焼いたら、弟に、
「く、食えんの?」
と言われ、
「スコーンに似た味になっとるよ。食べとうみ?」
と勧め、意を決した弟が、口に入れると、感激した顔で、
「姉貴、料理しか出来んのかと思ったわ。ちゃんと、お菓子作れるんやな!!」
「失敬な!!ドーナツも、ホットケーキも作りよったやろがね!!失礼な!!」
「いやぁ……いつも、『適量!!目分量!!その日の勘!!』とかいよるけん……」
と言う弟に、
「そりゃぁ、うどん屋でうどんこねとったら感覚わかるわ。そばを打つときの菊練り出来るか?」
「専門用語……無しでお願いします」
「うどんのローラーに手ぇ挟まれて、骨折してなかった私の手を甘くみんなよ!!」
フッ!
と答えた刹那に、弟は、ボソッと、
「どんだけ頑丈やねん!!」
「当時はな~。4キロを自転車で12分で走っていきよったし、信号さえうまくいけば、止まらずに行けるんよね~。あの頃は若かった」
「そうよなぁ……あの頃の姉貴は……」
急に黙り込んだ弟は、横を向き、
「こぇぇ……姉貴。あの頃とそんなに変わってねぇ!!顔!!」
「昔は老けてたってことか!!」
ヘラを煌めかせると、ブンブンと首を振る。
「姉貴、整形したか!?それとか特別ななんかしとるんか!?」
「昔からベビーソープで顔を洗い、髪はベビーシャンプーのシャンプーとリンス。化粧水、面倒やけん、全くしとらん!!するならベビーローション!!文句あるか!!」
「こえぇぇ!!それで、化粧は……」
「二十歳までにはめんどくさくなって止めたな。化粧せいって言われたら、色のつくリップと、眉毛だけ整えたら何とも言われんもん」
正直に伝える。
「めんどくさいの嫌いやけん。そんなのに金かけるなら、テディベアの勉強したいわ」
「……女完全に捨てたな、姉貴……」
「要らんわ。そんなもん。三国志の資料を探しに行くけん、後は、あんたがおし。こっちに帰ってきて嬉しいんは、大きい図書館が二つ、散歩くらいで行ける位やわ。ほんじゃ」
出ていく。
最近はうちにいる子達にも会いに戻れない。
可愛くて可愛くて……そんなあの子達を置いて死ぬつもりはなかったけれど、きっと悲しんでいる……。
だから、一人ずつだっこして、頬を寄せて、大丈夫だよと伝えたいのに……自分の行為がこんなに、子供たちに影響を与えるとは思わなかった。
悔しい……自分に腹が立つ。
こんな母で、ごめんなさい。こんな母が、お家に迎えたなんて……他のおうちの方がいいと思われていないか、それだけが不安で哀しい。
実家を追い出されたとき、自分は一人ではなく、ライカちゃんというライオンの女の子のぬいぐるみに、懸賞で当たったシュタイフ社のベア、他に数人の子供たち……。
その子たちもきっと泣いている。
どうして、私は忘れたのだろう。
大事な家族はちゃんといたのに……。
しかし、現在半分軟禁中の刹那にとって、最近は本当に辛い。
自業自得とはいえ、自分が薬を飲んだのは事実で、覆らないが、今まで無視、もしくは財布としてしか見ていなかった刹那を、急に干渉するようになったのだ。
妹は変わらない。それは当然だ。元々意思の疎通はある程度メールでやり取りをしていたからである。
だが、今になって両親……母の干渉がきつい。
電話を何度もかけてくるのだ。
「今どこにいるの?」
「お昼のお弁当食べた?」
「こっちに戻っていらっしゃい」
今までは、全く電話を掛けて来なかったのに、一日2回電話が入る。
「あぁ、今日は帰らない。いいでしょ。明日こっちの病院があるから!!」
「じゃぁ明日、戻りなさい!!お父さんも心配しよるけんね?いい?解っとる?」
「何でよ!?月曜日は、予約があって、また病院なんよ!!」
イライラとする。
「もうええやんか!!今までほっといて、今さら言わんといてや!!逆にうっとうしい!!」
「じゃぁ、お母さんが!!」
「こんでええ!!ばあちゃんのこと心配やろ!!来るな!!」
昨年末、転んだ祖母は骨折。その手術の経過が良くなく、その上、叔母たちが、あれこれと看護師さんに文句を言うため、病院を追い出され、病院の系列の老人福祉施設に入ることになった。
痴呆も悪化しており、その上ろくな面倒を見ていなかった事に院長先生が心配し、叔母たちには入ってくるなと言っていたらしい。
母は、文句を言うことなく、看護師さんに頭を下げて、
「母を、よろしくお願いいたします。あの、大丈夫ですか?」
看護師さんは、
「おばあちゃんですか?大丈夫ですよ?」
「いえ、私の姉妹が済みません。ご迷惑をお掛けしていませんか?母が言うのは可愛いんですが……」
「は、ぁ……」
返答がなかったという。
来週祖母が転院する……それからは、母が来る……。
あの時の自分を本当に止めたい。
あぁ、自分は逃げようとして、逆に囚われてしまったのかもしれない。
国破れて山河あり……
心砕けて束縛が始まる……
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