零番目の童話

海沼偲

第三話 悪魔はただひたすらに黒しー2

「おお、戻ってきたのう。どうじゃった? 書き換えられたか?」
 そう質問してきたのは神物学文皇トムであった。なんだかんだ言っても戦争はあまりやりたくないことは知っているからな。可能性が潰れることに期待しているのだろう。
 俺たちはニッと自慢げに笑うと彼らも安心したように顔をほころばせた。
「ばっちりだ、爺さんども」
 蘭は手をあげて美和子に近づく、それに気づいた美和子も同じように手をあげ、ハイタッチをする。
「おめでとうございます。で、これからどうするのですか?」
 魔学文皇である、ミラノがそう言った。
「決まっているだろ? アタシたちも乗り込む」
「できるだけ無傷にしておいてくださいね。イレギュラーさえなければ魔学文明の世界なんですから」
 その発言に別に誰も反応しない。それは全員が理解していることだった。世界はできるだけ壊さずに事件を解決させるのがADSの使命だからな。
「向こうの世界の矛盾量がわかるか?」
『何とも言えません。四〇前後をうろちょろしています』
「そうか……」
 ちょっと動きづらいな。たくさんのADSが乗り込んでいるから確かにそれぐらいの量になるのはわかるけど、どうしたものか……。
「何も考えるな。今考えてもどうしようもない。今やることは、どれだけ早く敵を見つけられるかだ」
「おい、ジジイ。男の方は殺しても構わねえよな」
「ああ、かまわんぞ。子供を作る前に引き離せばよい」
「何時間でやれる?」
「一時間だ」
「……じゃあ三〇分」
「一〇分もかかりませんわ」
「てめえら、競い合っているんじゃねえよ! 俺様は、五分で片つけてやる」
「結局、お前も競っているんじゃねえかよ」
 俺たちのそばに爺さんが寄ってくる。
「お主たち。死ぬなよ」
「誰に言っているんだ爺さん。俺たちは天下のADSだぞ。死ぬわけねえだろ」
「ああ、安心しろ、槙之助以外誰も死なん」
「いや、健一以外誰も死なない」
「は? ケンちゃんが死ぬわけないじゃん。殺すよ?」
「ほらほら、喧嘩は止めろよ。じゃあ、行ってきます」
「よろしくな」
 爺さんはとびっきりの笑顔を見せる。それに合わせて俺たちも笑顔を見せて問題の世界へと飛んだ。

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