かみさま、殺してきました「テヘ♡」

なぁ~やん♡

殺之心(2)

『よし、もういいだろう・・・楽しみだなぁ・・・』
サランの意外な一面がだんだんわかってくる。でも、楽しみなのは否定しない。極楽に感じるのだ。憎き相手を抹殺しに行くのは・・・。
サランはにたりと笑った。また雨で汚れた服。長く伸びてしまった髪。なぜかわからない悪い極楽心。それらを抱いて、少女は行くのだ。
サランは櫛をガッ!とつかみ、ボードを持ち、髪をときながら、
『さぁかぁのぉはぁしぃ~かぁんなぁ・・・かぁとぉお~れぇいじぃ・・・』
を繰り返す。繰り返すうちに見える殺意のつまりきらきらと光を放つ歯。ばっとサランは立った。
『いぃまぁかぁらぁい~く~よぉ・・・』
サランは人差し指をくるりと回した。すると汚れた服は綺麗になり、靴はハイヒールになる。
あぁ、もう行くのだと、少女は思った。
「ねぇ、サラン、その歌は・・・」
どうしても知りたいことがある。
「どうして、あいつの名字までしっているの・・・?」
『あれ?教えてもらえなかったの?』
また憎しみが増してくる。
【オレ?オレは、名字をつけてもらえなかったから】
と、確かにかとうれいじはそう言ったのを少女は覚えている。もともと魔法の性質を持っていた少女は覚える力が人一倍ついている。ただ、心が純粋すぎていたため、嘘か見分けることをできなかった。人を疑うのは、当の少女の弱き純粋な心では到底できなかったのだ。
なんだよ、それ。名字あるんじゃねぇか。嘘ついてどうすんだよ!!!
もう恨むことも殺すことも恐れない今の少女の心は、黒く濡れていた。手に入れた力が「天使」でパートナーが「天神ユリ」なのならば、この感情は押さえれたのだろう。でも、少女の力は「悪魔」で、パートナーは「魔王サラン」なのだから・・・。
「名字をつけてもらえなかったって・・・いってた。」
『うっわ・・・そりゃないわ・・・』
サランは完全に自分のことがわからない。でも、少しでもわかってくれる人がいればと少女は思ったのだった。だって、セルステアもれいじも、私のことがわからない・・・。
「サラン・・・ずっと一緒にいて・・・!」
もう、悪魔だったって魔王だったってどうでもいい。ただ、分かってほしい。でも少女は忘れていた。いや、知らなかった。魔王の持つ「力」と「卑怯」を。
『いいよ・・・?ただね・・・、あ!いや、なんでもない。居よう。』
「ほんと!?」『うん』
意外に出入り口は遠かった。鍵で閉められた出入り口。でもサランはその鍵に目も移さずにドアを開けた。軽い魔法を使ったのだ。これぐらいは、魔王にとっては簡単だ。
サランの漆黒の長い髪と、少女の美しい顔がよく似合う。そう。一歩踏み出した瞬間、秋の始まりの風がその髪を揺らすのだった―――――――――――。

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