天女×天姫×天使…天華統一

ハタケシロ

第25話 仕掛ける

「そろそろ俺らも攻めるか」

日本から異世界に戻ってきた俺は、アマとパールに軍議室で提案していた。

国の整備や、戦力把握も一通り終えたし、そろそろ俺たちから仕掛けてもいいと思ったからだ。

ゲームでも俺は、戦力を回復したら速攻で攻めたがるタチだから、待っているというのが出来ないというのもある。バンバン攻め落として早く姉ちゃんのところに帰らないといけないし。

「うむ。いいかもしれないな。我は大和の判断に従おう」

「私もいいと思いますよ」

二人の了承を得た俺は、具体的にどこを攻めるかの話し合いに話題をシフトした。これはパールに聞きながらのほうがいい。俺個人の勝手な判断よりもパールの第3位の時の情報の方が戦を有利に進めるだろう。

「俺的にはこの隣国よりも、ここにある大国を攻め落としたいんだが」

俺がパネルに表示されている地図を指さしながら、どこを落としたいのかを言う。

俺が指差している場所は、俺たちの国の隣にある小国の更に隣にある大国だ。大国と言っても俺たちの国ほど領地面積を持ってはいない。が、ここら一帯の国では一番の国だ。あとあとめんどくさそうになる前に潰しておきたい。

「ほう。ここか。ここは最近力をつけている国だな。確かに更に大きくなる前に落としておくのがいいだろう。だが、この隣の隣国はどうするのだ?」

パールが隣国である小国を指差しながら聞いてくる。確かに隣国だから放って置くわけにもいかない。いかに小国であろうとも。

「あぁ。一応かんがえている。聞きたいんだが、ここには強い奴はいるのか?」

「いや、この小国には強者はいないはずだ。我の耳には何の情報も入ってはおらぬぞ?」

「なら大丈夫だ。ここには勧告するつもりだ。もし拒否されるようなら少数で攻め落とす。できればこの国に戦力を割きたくはないからな」

「勧告か……。いいかもしれぬな。この国とまでは言わずともこの小国は二つの大国に挟まれているからな。日々プレッシャーを感じているはずだ。勧告を受け入れるだろう」

パールも俺と同じ予想を立てたな。
この小国は少なからずプレッシャーを感じているということ。やっぱりパールは戦慣れしてやがる。

「で、具体的なこの大国を落とす算段だが。アマ、なんかいい案はあるか?」

「え!?私ですか!?」

おい。そんなに驚くな。

「お前だって参加してるんだ。なんかあるだろ?」

「え、えーと。ど、どうですかね〜あはは〜」

頬をポリポリと掻きながら、困った顔をするアマ。
うん。そうだと思ってた。

「まぁはなっから期待はしてなかったら大丈夫だ」

「そのグッドはどう言う意味でのグッドなんですか!?」

「大和よ。お主にはなんの考えもないのか?」

「まぁ、あるっちゃある」

「酷いですよ!?二人共!」

アマちょっと黙っていてくれ。俺たちは今、大事な作戦会議中なんだから。

「どんな感じで攻めようと思っておる?」

「正面突破」

「正面突破?」

「あぁ。下手に作戦を建てるよりも真正面からやったほうが俺はいいと思う」

「それも一理はあるが……勝算はあるのか?」

「俺とパールお前がいる。十分すぎる戦力があるんだ。大丈夫だろ」

パールの瞳を見ながら俺は言う。
誇張でも嘘でもなんでもなく、事実として。

「う、うむ。そうか……。がんばらねばいかんな」

「無理をしない程度にな」

頬を赤くしながらパールは頷いた。なんだ?照れているのか?そんなにも戦力として期待していることが嬉しかったのか?

「大和さま!私は!私は!?私は何をすれば!」

まるで子犬のようにクゥーンとでも言いたそうな顔をしながら、仕事を欲するアマ。
アマの仕事ね。

「お前は留守番だ。主が帰ってくるのを待ってろ」

「わんわん!」

「ってのは冗談でお前も連れて……って頷くなよ」

「だって〜御主人様の命令には服従しないとだめじゃないですか〜」

「言い方とそのクネクネ。キモい。えいっ」

「あうっ!」

うん。やっぱりデコピンはアマには有効だな。
つか、お前を連れて行かないわけがないだろ。サポートとしてのお前は俺やパールなんかより断然に優れてるんだから。



「ご報告します。ルシファー様」

「うん。なんだい?」

古城では、一人の少女が主であるルシファーに手に入れたばかりの情報を報告しようとしていた。

玉座に座りながら、ルシファーは少女の報告を聞く。
少女がしゃべる度に、少し動く度に鳴る、じゃらんじゃらんという鎖のぶつかり合う心地良い音色を聞きながら。

「……とのことです」

「ふぅ〜ん。そうなんだ」

ルシファーは少女の報告を聞き終えると、玉座から立ち上がり、少女の元へと近づく。少女はビクビクと体を震わせながらルシファーの接近を待つ。

「報告ご苦労さま。今日の労働は君の功績に免じて無くしてあげるよ」

ニッコリとルシファーはそう言い放つ。
それを聞いた少女もまた、下をむいていた顔を上にあげ、顔を明るくさせて喜ぶ。

「あ、ありがとうございます……!」

ルシファーはその後、少し思案する。
そして、少女に聞いた。

「で、それは何時なのかな?」

「え?」

「いつ、僕の国は攻められるのかな?」

「えと……」

少女は顔を右往左往しながら考える。が、考えても知らない情報は言えるはずがない。

「うん」

ニッコリとルシファーは笑った。
逆に少女の顔は恐怖へと変わる。

「連れてけ」

ルシファーは近くにいた兵士に命令する。
兵士は少女に近づくと両腕を抑えて連行しようとする。

「お、お待ち下さいルシファーさまっ!いま確認を……!」

が、少女の言葉はルシファーには届かなかった。

「い、いや!離してっ!お願いしますルシファー様!なんでも、なんでもするので!いや、いやーー!!」

バタンと扉は締まり、一瞬の静寂が訪れる。
そして、

「いやぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

少女の絶叫が古城に響き渡った。

「はぁー。やっぱり若い娘の叫び声は格別にいい音色だ」

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