天女×天姫×天使…天華統一
第16話 もう一人の異世界人
「アマ。お前たち天女は異世界人を必ず呼び出すものなのか?」
俺以外にも異世界人がいると聞き、確認する。
もし、天女が必ず異世界人を呼び出すものだとしたら、俺の価値が下がってしまうかもしれない。それは嫌だ。
異世界人というステータスは貴重だ。
それが何人も居るとなれば別、無価値に等しくなる。
姉ちゃんは昔、言っていた。
誰かのでいい、私のでいい、特別な存在になりなさいと。だから俺は異世界人という特別な存在になりたい。
「はい。必ずとは言いませんが、呼び出しますよ?」
「そう……なのか」
やべ、なんか急にやる気が無くなってきた。
ごめん姉ちゃん。俺、特別な存在になれなかったよ。
「天下を取るためには、いろいろな手段を用いますからね。その中でも異世界のお方を呼び出すのはポピュラーなものなんです。でも、それも一昔前のことなんですけど」
「一昔前?」
「はい。前はそれが主流だったんですけど、今は違います。天日にも日に日に力を持った人の子は産まれますし、なにより、天女たちが力をつけてきたんですよ」
「なるほど。そうなると、わざわざ呼び出す必要もなくなるわけか。自分自身が強いわけだし、もし仮に弱くてもこの世界の強い奴を味方に付ければいいわけだから」
「その通りです。私みたいに大和さまを、異世界の方をお呼びするのは、今の時代では少数です」
「なのか」
やる気が戻って気たぞ。
姉ちゃん!俺、この世界で特別な人間に慣れたぜっ!
「お前が俺を頼ったのはアマ自身が弱かったってのもあるのか」
「えへへ…その通りです」
ポリポリと頬を掻き、苦笑いをするアマ。
頭はいい……うん。いい、いいはずだ。俺を見つけたんだから。頭はいいのに体術や戦闘には向いてなかったのかこいつは。だから、6畳しか領地がなかったのか?まぁどうにせよ、アマはあまり戦場には連れてかない方がいいかもな。
「でもその考えだとパールが呼び出すのは必要なくないか?大剣を扱えるんだし、何より強いんだろ?」
俺が言うのもなんだが、一瞬でパールを倒してしまった俺は、パールの本当の実力を知らない。大剣を自在に操ることができるのは知ってることだが、パールがどの程度の強さなのかは分からない。アマは凄いと言うし、3位の領地面積を持っていることから強いんだろうなという憶測はたつが。
こうした俺の問に、パールはポツリポツリと言葉を放つ。
「我は前は大剣なんぞ操れなかった。アマと同じく、いや、それ以上に弱かったであろうと自負しておる」
「パールがアマ以上に弱い時があった?」
アマの戦闘の実力も分からない俺だが、今のアマとパールならどちらかが強いかなんて、雰囲気で直感で憶測で分かる。そして、パールのほうが強いというオーラみたいなものを感じ取ることも。パールの今の実力は相当なものなんだろう。
「あったのだ。第一線に自ら出向く事が怖気づいて出来ない日々が」
「そうなのか」
昔の自分を思い出して、悔しいのか、哀しいのか分からない表情で語るパール。これは言わばあれなんだろう。誰しもが大なり小なり持っているもの。黒歴史または、トラウマ。この俺にもこう言ったものはある。忌まわしき過去が。
「我自身にある程度の実力があれば、この世界の人の子に協力を申請することもできた。が、あの時の我にはそんな実力はなく、協力を申請できる人の子も天下を争うには、少々頼りない者だけだった。そこで我は、異世界の者を呼ぶ事にした。この世界の事情を深く知っておらず、我に協力してくれる、天下を争える者を」
「アマと同じような感じだな」
パールもアマと同じように考え、行動した時期があったのか。
実力が無ければ、強い奴にも協力を頼めない。
パール言った言葉は戦国時代とはこういう時代だと物語っていた。
「そして、我は見つけたのだ。天下を争える力を持ち、また、野心溢れる者を」
「良かったですね」
パールの話をこれでもかと、頷いていたアマが言葉を据える。
「良かったってアマ。お前は知ってたんじゃないのか?」
「知らなかったです。パールさんが私と同じように異世界のお方を呼び出していたなんて。私がパールさんを知ったのは、たぶん、お強くなった時のパールさんですから」
「そうなのか」
てっきり、隣国同士というか、パールの領地の中に国を構えていたアマだから、知ってるものだと思っていた。
「ふふ。アマが知らないのは無理もない。私もアマを知ったのは、先程アマが言った通り、我が少々実力をつけた頃だったからな」
パール自身もアマを認識し始めたのは最初からじゃないんだな。
「ん?つーか、どうしてパールは力を付けだしたんだ?異世界人に頼んだんなら、パール自身は力は必要ないだろ?」
「その通りなんだが、いかんせん、こっちに来たばかりのあやつは弱くてな。うまくこの世界に適合してなかったのかも知れん。本来の実力を出せれば良かったのだが、出せない。出せれないとでも言えばいいのか、とにかく、弱かった。そこで、我はあやつに修行をしてみればどうだ?と提案してみたのだ」
「修行か」
「山篭りといったああいう修行ではないぞ?あやつはもともと実力はあったのだ。この世界に徐々に慣れていこうという意味あいでの修行だ」
「なるほどな」
まぁ最初から適合出来るはずはないよな。
俺が適合出来ているのはアマのおかげだ。
ん?そう考えるとアマは本当に凄い奴なんじゃないのか?
「一人でやらせるのもあれなんでな。我も参加したのだ。そこで、我は武術を会得し、徐々に力を付けることが出来たのだ。これが我に力がついたキッカケなのだが?」
「へぇなるほどな。つか、凄いな。修行して力を確実につけるなんてな、パールはもともと戦闘の才能があったんだな」
「そう……なのかな」
頬を染めて、照れるパール。
女子が戦闘の才能があるって言われて喜ぶなんて……すごい世界だ。
「でもな、あやつの方が凄いのだぞ!?この世界にも慣れ、実力を取り戻したかと思いきや、どんどん強く、逞しくなりおったのだから!」
目を輝かせ、そいつの事を褒め称えるパール。
しかし、その表情は見る見るうちに、失われていく。
「でもな、あやつは強くなり過ぎたのだ。我なんかより、いや、誰よりも戦闘の才能がありすぎた。その結果、我には手が負えぬ存在になり、あやつもまた、自分の力に溺れた。あやつは、我の元から居なくなり、姿を消した。我は今度はあやつと対等に戦えるように、また、力に溺れているあやつを説き伏せれるように、力を追い求めた。そうしているうちに領地面積3位にまでになっていのだ。まぁ大和に破れて目が覚めたのは私なんだがな」
語り終えたパールは寂しげだった。
「これらが、我の知っている大和以外での異世界人の情報だ。情報と言っても我の思い出話になってしまったな」
「いや、俺以外の異世界人の情報をありがとよパール。因みになんだが、そいつの名前は?いつか、やりあう相手かもしれないから知っておきたい」
「それもそうだな。あやつがそこらへんでくたばっているというのも想像出来んしな。あやつの名前はフェライト=ジークス。もしかしたら大和と対等に戦える相手かもしれぬぞ?」
「大和さまはどんな相手であれ、圧倒できますよ!」
「ふふ。それはそうかもしれぬな」
「勝手に変な期待をするのは辞めてくれると助かるんだが?」
なに、どんな相手であれ圧倒するって。
どこぞのワンパンヒーローだよ俺は。
まぁ、圧倒は出来ないにしろ、どんな相手であれ負けるつもりは毛頭無いけどな。
『ヴーンヴーンヴーン』
突如として警告音みたいなものが響き渡る。
敵が襲来したという知らせを伝えるために。
「なんの音だ?」
瞬時にこの城に詳しいパールに聞く。
パールは俺が聞くよりも前に行動していたらしく、ディスプレイを慣れた手つきで操作していた。
「敵の襲来だ。この城は敵が襲来すると今みたいに警告音を発するようにできている。しかし、本来の敵の襲来ならば敵が近づいて来た所で注意音がなり、領地に入ったら瞬時に警告音に切り替わる筈なのだが……」
「もう、敵が領地に入ってるって事かよ」
「そういうことになるな」
「え!?敵の襲来……ですか!?」
ズバンっ!!!!
という、何かを斬った音と、その後に訪れた爆発の音が鼓膜を揺さぶる。
「発見した!敵の居場所は……その窓から見えるぞ!」
パールの声に従い、窓を全開に開け放つ。
外の明るさに一瞬目がくらんだが、俺の瞳はさっきの斬撃の発信元であろう人物を捉えた。
「機は熟した……さぁこれからは俺の時代だァ!!」
パールと同じ、大剣を背中に構えているが、遠目でも分かるのは、パールのとは形状が違うこと。パールのは剣みたいな形だが、あいつが持っている大剣は包丁が巨大化した形をしている。
「さぁ!出てこい!パールヴァティー!!この俺がお前を倒して3位に名乗りを上げっからよ!」
「パール……お前の知り合いらしいが……あいつか?もしかして」
「その通りだ大和。間違いない。あやつはジークスだ!」
あいつが、俺以外の一異世界人!
「そうだぁ……俺がフェライト=ジークスだ」
そう、ジークスは俺の耳元で囁いた。
俺以外にも異世界人がいると聞き、確認する。
もし、天女が必ず異世界人を呼び出すものだとしたら、俺の価値が下がってしまうかもしれない。それは嫌だ。
異世界人というステータスは貴重だ。
それが何人も居るとなれば別、無価値に等しくなる。
姉ちゃんは昔、言っていた。
誰かのでいい、私のでいい、特別な存在になりなさいと。だから俺は異世界人という特別な存在になりたい。
「はい。必ずとは言いませんが、呼び出しますよ?」
「そう……なのか」
やべ、なんか急にやる気が無くなってきた。
ごめん姉ちゃん。俺、特別な存在になれなかったよ。
「天下を取るためには、いろいろな手段を用いますからね。その中でも異世界のお方を呼び出すのはポピュラーなものなんです。でも、それも一昔前のことなんですけど」
「一昔前?」
「はい。前はそれが主流だったんですけど、今は違います。天日にも日に日に力を持った人の子は産まれますし、なにより、天女たちが力をつけてきたんですよ」
「なるほど。そうなると、わざわざ呼び出す必要もなくなるわけか。自分自身が強いわけだし、もし仮に弱くてもこの世界の強い奴を味方に付ければいいわけだから」
「その通りです。私みたいに大和さまを、異世界の方をお呼びするのは、今の時代では少数です」
「なのか」
やる気が戻って気たぞ。
姉ちゃん!俺、この世界で特別な人間に慣れたぜっ!
「お前が俺を頼ったのはアマ自身が弱かったってのもあるのか」
「えへへ…その通りです」
ポリポリと頬を掻き、苦笑いをするアマ。
頭はいい……うん。いい、いいはずだ。俺を見つけたんだから。頭はいいのに体術や戦闘には向いてなかったのかこいつは。だから、6畳しか領地がなかったのか?まぁどうにせよ、アマはあまり戦場には連れてかない方がいいかもな。
「でもその考えだとパールが呼び出すのは必要なくないか?大剣を扱えるんだし、何より強いんだろ?」
俺が言うのもなんだが、一瞬でパールを倒してしまった俺は、パールの本当の実力を知らない。大剣を自在に操ることができるのは知ってることだが、パールがどの程度の強さなのかは分からない。アマは凄いと言うし、3位の領地面積を持っていることから強いんだろうなという憶測はたつが。
こうした俺の問に、パールはポツリポツリと言葉を放つ。
「我は前は大剣なんぞ操れなかった。アマと同じく、いや、それ以上に弱かったであろうと自負しておる」
「パールがアマ以上に弱い時があった?」
アマの戦闘の実力も分からない俺だが、今のアマとパールならどちらかが強いかなんて、雰囲気で直感で憶測で分かる。そして、パールのほうが強いというオーラみたいなものを感じ取ることも。パールの今の実力は相当なものなんだろう。
「あったのだ。第一線に自ら出向く事が怖気づいて出来ない日々が」
「そうなのか」
昔の自分を思い出して、悔しいのか、哀しいのか分からない表情で語るパール。これは言わばあれなんだろう。誰しもが大なり小なり持っているもの。黒歴史または、トラウマ。この俺にもこう言ったものはある。忌まわしき過去が。
「我自身にある程度の実力があれば、この世界の人の子に協力を申請することもできた。が、あの時の我にはそんな実力はなく、協力を申請できる人の子も天下を争うには、少々頼りない者だけだった。そこで我は、異世界の者を呼ぶ事にした。この世界の事情を深く知っておらず、我に協力してくれる、天下を争える者を」
「アマと同じような感じだな」
パールもアマと同じように考え、行動した時期があったのか。
実力が無ければ、強い奴にも協力を頼めない。
パール言った言葉は戦国時代とはこういう時代だと物語っていた。
「そして、我は見つけたのだ。天下を争える力を持ち、また、野心溢れる者を」
「良かったですね」
パールの話をこれでもかと、頷いていたアマが言葉を据える。
「良かったってアマ。お前は知ってたんじゃないのか?」
「知らなかったです。パールさんが私と同じように異世界のお方を呼び出していたなんて。私がパールさんを知ったのは、たぶん、お強くなった時のパールさんですから」
「そうなのか」
てっきり、隣国同士というか、パールの領地の中に国を構えていたアマだから、知ってるものだと思っていた。
「ふふ。アマが知らないのは無理もない。私もアマを知ったのは、先程アマが言った通り、我が少々実力をつけた頃だったからな」
パール自身もアマを認識し始めたのは最初からじゃないんだな。
「ん?つーか、どうしてパールは力を付けだしたんだ?異世界人に頼んだんなら、パール自身は力は必要ないだろ?」
「その通りなんだが、いかんせん、こっちに来たばかりのあやつは弱くてな。うまくこの世界に適合してなかったのかも知れん。本来の実力を出せれば良かったのだが、出せない。出せれないとでも言えばいいのか、とにかく、弱かった。そこで、我はあやつに修行をしてみればどうだ?と提案してみたのだ」
「修行か」
「山篭りといったああいう修行ではないぞ?あやつはもともと実力はあったのだ。この世界に徐々に慣れていこうという意味あいでの修行だ」
「なるほどな」
まぁ最初から適合出来るはずはないよな。
俺が適合出来ているのはアマのおかげだ。
ん?そう考えるとアマは本当に凄い奴なんじゃないのか?
「一人でやらせるのもあれなんでな。我も参加したのだ。そこで、我は武術を会得し、徐々に力を付けることが出来たのだ。これが我に力がついたキッカケなのだが?」
「へぇなるほどな。つか、凄いな。修行して力を確実につけるなんてな、パールはもともと戦闘の才能があったんだな」
「そう……なのかな」
頬を染めて、照れるパール。
女子が戦闘の才能があるって言われて喜ぶなんて……すごい世界だ。
「でもな、あやつの方が凄いのだぞ!?この世界にも慣れ、実力を取り戻したかと思いきや、どんどん強く、逞しくなりおったのだから!」
目を輝かせ、そいつの事を褒め称えるパール。
しかし、その表情は見る見るうちに、失われていく。
「でもな、あやつは強くなり過ぎたのだ。我なんかより、いや、誰よりも戦闘の才能がありすぎた。その結果、我には手が負えぬ存在になり、あやつもまた、自分の力に溺れた。あやつは、我の元から居なくなり、姿を消した。我は今度はあやつと対等に戦えるように、また、力に溺れているあやつを説き伏せれるように、力を追い求めた。そうしているうちに領地面積3位にまでになっていのだ。まぁ大和に破れて目が覚めたのは私なんだがな」
語り終えたパールは寂しげだった。
「これらが、我の知っている大和以外での異世界人の情報だ。情報と言っても我の思い出話になってしまったな」
「いや、俺以外の異世界人の情報をありがとよパール。因みになんだが、そいつの名前は?いつか、やりあう相手かもしれないから知っておきたい」
「それもそうだな。あやつがそこらへんでくたばっているというのも想像出来んしな。あやつの名前はフェライト=ジークス。もしかしたら大和と対等に戦える相手かもしれぬぞ?」
「大和さまはどんな相手であれ、圧倒できますよ!」
「ふふ。それはそうかもしれぬな」
「勝手に変な期待をするのは辞めてくれると助かるんだが?」
なに、どんな相手であれ圧倒するって。
どこぞのワンパンヒーローだよ俺は。
まぁ、圧倒は出来ないにしろ、どんな相手であれ負けるつもりは毛頭無いけどな。
『ヴーンヴーンヴーン』
突如として警告音みたいなものが響き渡る。
敵が襲来したという知らせを伝えるために。
「なんの音だ?」
瞬時にこの城に詳しいパールに聞く。
パールは俺が聞くよりも前に行動していたらしく、ディスプレイを慣れた手つきで操作していた。
「敵の襲来だ。この城は敵が襲来すると今みたいに警告音を発するようにできている。しかし、本来の敵の襲来ならば敵が近づいて来た所で注意音がなり、領地に入ったら瞬時に警告音に切り替わる筈なのだが……」
「もう、敵が領地に入ってるって事かよ」
「そういうことになるな」
「え!?敵の襲来……ですか!?」
ズバンっ!!!!
という、何かを斬った音と、その後に訪れた爆発の音が鼓膜を揺さぶる。
「発見した!敵の居場所は……その窓から見えるぞ!」
パールの声に従い、窓を全開に開け放つ。
外の明るさに一瞬目がくらんだが、俺の瞳はさっきの斬撃の発信元であろう人物を捉えた。
「機は熟した……さぁこれからは俺の時代だァ!!」
パールと同じ、大剣を背中に構えているが、遠目でも分かるのは、パールのとは形状が違うこと。パールのは剣みたいな形だが、あいつが持っている大剣は包丁が巨大化した形をしている。
「さぁ!出てこい!パールヴァティー!!この俺がお前を倒して3位に名乗りを上げっからよ!」
「パール……お前の知り合いらしいが……あいつか?もしかして」
「その通りだ大和。間違いない。あやつはジークスだ!」
あいつが、俺以外の一異世界人!
「そうだぁ……俺がフェライト=ジークスだ」
そう、ジークスは俺の耳元で囁いた。
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