天女×天姫×天使…天華統一

ハタケシロ

第5話 Mっ娘

「どうですか?大和さま?」

驚愕に震えている俺に、アマは聞いてくる。
正直分からない。ただ、異世界の、おそらくアマの国だと思われる島を下から覗いただけだから。

「なんつーか、分からん。下から覗いてるだけだし」

その旨を伝える。

「え?まあ、そうですよね下から見るだけじゃ」

そういうと、アマは手を顎に当てながら何かを考える。

「では、こうしましょう!大和さま!」

そして、元気いっぱいに提案する。

「上から見ましょう!」

「え?上!?」

どうなんだ?それは?
下から覗いたのと大差ないんじゃ…。いや、下からよりは全貌が見えるか。

「つか、上ってアマ?どうやって行くんだ?もしかしてお前に羽とかが生えて、俺ごと空中に連れてってくれんのか?」

ずいぶんとファンタジーな発想をしてるな俺は。
いや、異世界だからアリなんじゃないのか?おっやべ、そう思うと楽しみになってきたぞ。
雲にも立ってることだしな。

しかし、アマは顔を曇らせる。

「すいません大和さま。羽はまだ生えてこないんです。なので、私が大和さまとご一緒に空中に飛ぶことはかないません」

「そうなのか」

まだ。
というのに、少し疑問を感じたが今はいい。
今はどうやって、どうしたら上に行くのかだ。

アマはちゃんと何か方法を考えてたらしく、フフフと意味深な笑い声を含みながら言う。

「でも、天空に行く方法なら。この私、アマ=テラスがちゃんと用意してあるので安心してください」

「ドヤ顔がうざい。殴るぞ」

「そんな!いいんですか!?」

いいんですか!?

「やめろ!顔を近づけるな!俺はMっ娘は嫌いなんだよ!」

「……………」

「よーし、よしよしよしよし。えらいぞ!」

おっとこんなところに(ポケット)に棒はうまいが。

「よーし!とって来い!ポチ!」

「わんわん!はい!ご主人様!」

遠くに放り投げた棒はうまいを、一心不乱にアマは追いかけていった。
腰まで伸びているピンク髪を、右に左に一生懸命揺らしながら、不格好な四つん這いでかけていくその姿を見て、俺の何かがゾクゾクした。

そして、何をしてるんだ俺はと、賢者タイムのごとく、冷静になっていた。

「って!早く戻ってこい!ポチ!じゃない!アマ!お前が戻ってこないとすすまねぇ!」

何故か途中から、棒はうまいが落ちた場所とは若干ずれてるところに向かっているアマに声をかける。

「アマ……お前には何が見えてるんだ」

そして、あられもない方向に進んだアマを見て俺はぼそっと呟いた。



「お前って方向音痴なのか?」

行ったきり、なかなか戻ってこないアマを結局俺が迎えに行き、最初の場所に戻ることができたのはあれから1時間やそこら立っていたりする。

「私は方向音痴じゃないですよ?」

小首を傾げ、上目づかいのアマが言う。

「嘘つけ。途中から、ここはどこ?みたいになって、辺りをキョロキョロした挙句、半泣きになって俺の名前を叫んでたんじゃねーか」

「~♪~♪」

「微妙にうまい口笛でごまかすな」

このまま、こんなどうでもいい口論を続けてても意味ねーか。
早く本来の目的に戻ろう。

「で、上に行く方法って?」

「はい!それはですね…ちょっと待っててください今呼びますので」

「呼ぶ?」

アマはどっから取り出したのかも分からない、携帯電話みたいなものを取り出して、どこかに電話を掛ける。

「…はい。…はい。二人です…」

なんかタクシー会社に電話してる人みたいだ。

「もう少し待ってくださいね。すぐ来ると思うので」

「おう」

よく分からんが、ここはアマに従おう。
ここは異世界だし。

 しばらく待つと、上にまで行くための手段がやってきた。

「筋斗雲?」

「はい!筋斗雲タクシーの筋斗雲です!」

目の前にまさに、飛んできたのはドラゴン○ールで見たことがある筋斗雲その物だった。
しかし、ドラゴン○ールのそれと違うのは、雲みたいな形ではなく、いや、雲でできているものではなく、天使の羽で作ったような筋斗雲だった。

「こんなもんが実在してるとはな…ちょっと見てきたものと若干違うか」

「こちらの世界ではこれは普通ですよ?材質は大天使様の羽を使用してますから、壊れることは滅多になく、また、乗り心地も最高なんですよ!」

「背筋ピーン!とかしそうだな」

「…?それとですね!」

「分かった。分かったから落ち着け。近いって」

どんだけテンション上がってんだよこいつは。
筋斗雲がそんなに好きなのか?

「つかこいつってさ。自我とかあんの?」

ここまで来れたし、自我があっても不思議じゃない。
オートコントロールっていう可能性もあるけど。

「はい!ありますよ!言葉はしゃべれませんけど」

「ふ~ん。そうなのか」

自我がある……ねぇ…


人の子には秘められた力があるという。
ひとえにそれは、潜在能力というのかもしれない。
人の子それぞれが性格や思考が違うように、秘められた潜在能力もまた、違う。
大和さまのそれは「支配」。王権とも言うかもしれない。人の子を従えることが許された力の持ち主。
身体の周りをオーラみたいなものが渦まき、筋斗雲を委縮させる。「格下が」と言わんばかりに。


「ん?なんだこれ?」

大天使の翼…筋斗雲の側面の翼に、一瞬の光とともに何かが書き込まれた。

「大和さん…さっきのは…」

「あん?さっきの?」

「はい…あの、威圧みたいなものは…?」

「はっ?威圧?」

「無意識…ですか」

「?つかアマ、これなんだ?この翼に書かれてるやつ」

「翼に?ああそれは識別番号、筋斗雲の名前ですよ!これにかかれてある名前はM777(エムトリプルセブン)ですね!あっMというのは大天使様の名前のイニシャルで」

「それじゃない。これだこれ」

俺は、今さっき書かれたであろう識別番号とは違う、文字列を指さし、アマに見せる。

「えっと、これは…」

識別番号とは別に書かれた文字。

『MASTER=大和』

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