天女×天姫×天使…天華統一

ハタケシロ

第2話 アマ=テラス

「……ぇ?大名…?」

素っ頓狂な声が出た。

大名?
大名ってあの大名か?
戦国時代に諸国を支配し、近隣の国と領地を争い己の欲、また、何かのために時代を作り、天下を治める。戦国大名。……のことなのか?

「はい!大名です!国の主ですっ!」

俺の問いに答えるように、侵入者は聞いた質問が大名だということで間違いないことを肯定する。

「え…いや、意味が分かんね」

いきなりの侵入もそうだし、いきなりの俺が大名だという発言もそうだが、俺の少ない脳みその頭じゃ、どうにも理解が及ばない。この状況ですべてを悟るような主人公質では、俺はないようだ。

「ですから貴女様は私の………って!大名様!?」

続きを言おうとし、再び俺の方を見た侵入者は、さっきの俺みたいな素っ頓狂な声じゃなく、純粋に驚いた声を上げた。

「な、なんだ?」

俺の問いに、侵入者は顔をMAXレベルまで赤く紅葉させ、秋の山々の木々と並んだら違和感がないくらいまでにさせた。そして両手を使って顔を隠す素振りを見せるが、指のすきまからこちらを覗いていた。

「ななな、なんでお召し物を着ておられないのででで、すか!?」

「え、いや、それはだって、風呂場だし、俺は浴槽に浸かってるわけだから…」

慌てふためく侵入者とは打って変わって俺は、逆に冷静さを取り戻していた。
そして、今置かれてある状況を悟る。
良かった。俺は常人レベルの悟り力はあるみたいだ。

「………おうわっ!!!」

瞬間、腰を浮かしていた身体を浴槽へと戻し、肩までしっかりと浸かりなおす。
角度的にもそうだが、浴槽の壁のおかげで、どうにか俺の秘部は見られないで済んだだろう。
女子は男子に裸を見られるのは恥ずかしいと聞くが、立場が変わり、男子が女子に裸を見られるのも十分に恥ずかしいというのを立証した瞬間だった。

「み、みたか?」

しかし、口は正直なもので、ほんとに見られてないのかを確認する。

「い、いえ!大名さまの殿方は見ておりません!黒いのが見えただけです!」

それは二割は見られたということだ。
しかし、案ずることはない。本体は無事みたいだ。
もう、婿には行けないかもしれない。

「とりあえずはここから出てくれ。積もる話はその後だ」

「そそそ、そうですね!」

侵入者はそういうと、ドアを開けて脱衣所の方に出た。
影を見るに、肩を上下に激しく揺らしているのを見ると、




見られたかもしれない。

「そのままそこを出て、俺の部屋に向かってくれ」

侵入者に指示をだし、騒動を鎮静化させ…

「え!?お風呂場から大和じゃなくて女の子!?」

「すいません!すいません!」

ることはできずに、さらに大きな騒動へと発展させてしまった。



「で、とりあえず、…お前はだれだ?」

姉ちゃんと侵入者の騒動をなんとか、全力で鎮静化し、俺の部屋でいろいろ聞きたいことを聞く。

姉ちゃんは「大和にも春が来たんだね」と優しすぎる顔で、そしてどこか寂しげな表情を作りながら俺に言ってきたが、姉ちゃんよ他にも大事なことを俺に聞くべきじゃないのか?たとえば、なんで風呂場から出てきたのか?とか、いつの間に家にいたのか?とか。ま、俺に聞いたところで俺は何も答えられんが。

「私?ですか?私はアマです!アマ=テラス。アマとお呼びください!」

アマテラス…どっかで聞いたような名前だな。
パズ○ラあたりだったか?

「じゃあアマよ。その、大名と言うのは何なんだ?」

「はい!大名というのはですね、諸国を治めて…」

「すまん。言葉足らずだった。なんで俺を大名と呼ぶ?」

「はい!大名さまは、まだ正式な大名さまではないのですけど、私が貴方様を私の国の主、つまりは、大名さまになさせるべく、こちらの世界にこうして来たわけですが、どうせ大名さまになってもらうことですし、この際大名さまと呼んじゃおうと思って、貴方様を大名さまと呼んでおります!」

「待て待て。今の話でいろいろ重要なワードが出た気がするんだが…いくつかいいか?」

「もちろんです!大名さま!」

「じゃあまず、始めにだが…」

侵入者…アマが流れるように言った言葉の中で、俺が一番聞きたいことを聞く。

「お前は異世界人?なのか?」

「はい!私はこの世界の住人ではありません!他世界から異世界人です!」

人でもありませんけど!と最後に付け加えて、アマは言った。
そんな弾けるような声音で凄いことを言われてもな。

「そうか」

「あまり…驚かないのですね?」

「うん?まあな。いきなり俺んちの風呂場に現れたんだ。異世界人と言われれば納得くらいできる」

俺は自分で言うのもなんだか、俺は俺自身のことバカだとは思ってない。
多少なりとも知識(ネットで集めた)はあると自負しているし、勉強の良し悪しじゃなく、頭の良さにならほんの少しくらいならいいと思っている。

だから、アマが異世界人と言ってもすんなりと納得できる。
手の震えが止まらないのは致し方ないことだが。

「じゃあ次に聞くがって、アマ。さっきから気にはなっていたんだが、お前は何をしてるんだ?」

俺の部屋に来てからというもの、アマは俺の問いに受け答えはしっかりとやるが、身体は別のものに興味を持っていかれたらしく、俺の方を向きもしない。

「いえ、その、珍しいものがたくさんあるな~って。ちなみに大名さま?」

「うん?なんだ?ていうかその大名さまとういのはやめてくれ」

「でも…」

「大和。呼び捨てで大和でいいから」

「大和…大和さまですね!」

「まあいいか」

大名さまよりは全然いい。
さまづけだが、大和と名前で呼ばれるのは姉ちゃん意外だと久びりだな。

「で?なんだ?」

「はい!…これは何ですか?」

そういってアマが持っていたのは、……俺のお宝だった。
姉ちゃん以外には見つかったことがない隠し場所から瞬時に探し出すだと!?

「それは本だ」

「本…こちらの世界だと女の子が裸で映っているものもあるんですね!」

純粋無垢な目が心に痛い。
異世界にはこういった、あれな本は無いんだな。
アマの単純な物珍しそうにみている表情を見ている限りは。

「おっとアマよ。中身は見ちゃいかんぞ?」

「なんでですか?」

「R18と書いてあるだろ?それは18歳未満は見れないっていうマークなんだ」

「あっ。ほんとですね。むぅ。残念です。私では見れません」

ほんとに残念そうにしているアマを見て心が痛くなった。

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