俺の嫁はデレない異世界のお姫様
第36話同盟
自称二十歳の料理人との出会いを果たした俺達は、早速だが彼女にある話を持ち出してみた。
「えー、お店のコックを私が?」
「ああ。突然の話だから、今すぐ答えを出さなくていいんだけどさ」
それは今度開店城下町に開店させる予定になっている料亭の専属コックの依頼だ。実はここ一週間の間に、少しずつだけど城下町の発展計画が進んでいた。もう既に店をいくらかオープンさせていて、人もそこそこ来るようになり始めていた。だが、店と言ってもたかがしれていて、主に自家栽培で採れた野菜を売ってばかりで、これといって目立つものがなかった。そこで浮かんだのが、採れたものを料理にして、お客さんに食べてもらおうという案だった。レストラン等と言った大型のものとまでは言えないが、ちょっとした食事処を作ってみるのはいいのかもしれないとい事で、建設も始めたのだけれど、まだ肝心のコックが見つかっておらず、探している途中だった。
「ちょっとケイイチ、いくらなんでもそれは無理があるでしょ。相手は世界でも有名な料理人なのよ。そんな人が簡単に引き受けてくれるわけないじゃない」
「俺も駄目元で聞いただけだから、気にするな」
しかも突然な話だから、当然のように断られると思っていた。
「んー、丁度暇してたところだったからいいかな。今日だって何か招待状届いてたから、遊びに来てただけだもん」
けど、結末はその反対だった。
「え。いいの?」
「うん。引き受けるよその仕事。ただしちゃんとお金は払ってね」
「お、おう」
この国にそんなにお金を払える余裕なんてあったかな。そもそもいくらかかるんだ? もしかしてプロ野球選手の契約金並みのお金を払わされるんじゃ……。
「どんな想像しているか分からないけど、そんなに払う必要はないわよきっと」
「え? どうして? だって彼女世界レベルの料理人なんだろ?」
「まあ、そこら辺の事情は今度話すとして、本当にいいんですか? こんな小さな国のために」
話の途中でもモードを切り替えられるなんて、どれだけ器用なんだよこいつ。
「いいって言ったらいいの。私だって大人なんだから」
「大人? 子供じゃなくて?」
「大人なーの! 何で分からないのかな。私ほど大人に見える女性はいないでしょ」
「いや、多分いるとは思うけど」
ここにいる女性ほぼ全員がそうだと俺は思うんだけど。
「ま、まあとにかく引き受けてくださるのなら、大歓迎でございます。よろしければ今日このパーティが終わったら詳しいお話をさせてもらえないでしょうか」
「分かったぁ。楽しみにしているから、また後でー」
そう言うとリタは俺達から離れ、別の所へと消えていった。
「ふぅ、まさかこんなにも簡単にコックが見つかるなんて思ってなかったよ」
「あんたもなかなかの運の持ち主ね」
■□■□■□
思わぬところでコックが決まって、更に二十分が経った頃、突然電気が明かりが消えたかと思うと、丁度会場の端の方にあるステージだけに明かりが照らされ、そこに先程話をしたタナトゥス国王が立って話を始めた。
「あー、あー、本日は皆様食事会にご参加いただき誠に光栄でございます」
先程の会話とは打って変わって丁寧口調で話を始める国王。俺とココネはそれを黙って聞いている。
「本日こちらにお集まり頂いたのは、食事会という形を取りながら各国の皆様方にお一つご提案があり、そちらを聞いていただいたく、こういった機会を設けさせてもらいました」
提案? ココネ曰く今日の食事会にもそこそこの数の国の人達が集まっているらしく、顔と国名はしっかりと覚えておけと言われていた。今はそれは置いておくとして、それなりの数の国の人達に出す提案とは果たしてどのようなものなのだろうか?
「皆様は五年前のあの悲劇以来、現れた魔物によって多くの尊い命が犠牲になっているのはご存知かと思います。それは恐らく今後も続くでしょう」
五年前の悲劇……それはつまりココネが起こしたあれの事を示しているのだろうか? 魔物という単語が出ている事からそれが確実だと思われるが、それを踏まえたうえでの提案とは一体なんなのだろうか?
「そこで我々はある一つの案を思いついたのです。それが複数の国同士による同盟です」
「同盟?」
思わず声に出してしまう俺。そういえばこの世界って、かなりの数の国があるというのに同盟とか、そういった類のものは一つも聞いたことがないような気がする。それが今にして動き出すというのだろうか?
「これはお互いの国を守るためでもあり、そしてこの先明るい未来を作り上げていくための一つの糧にしたいと思うんです。もう二度とあのような悲劇を起こさないためにも、そしてそのような悲劇を起こす人を生み出さない為にも、ここは国同士が同盟を組むべきなのではないかと思うんです!」
悲劇を起こす人……それはつまりココネの事を言っているのだろうか? 確かにココネは悲劇を起こした張本人ではあるけど、それをわざわざ言わなくてもいいんじゃないのか?
「詳しい理由は分かりませんが、個人的な理由で世界を巻き込んでしまった彼女は決して許されません。疫病神と呼ばれていますが、それは間違っていないのかもしれません。しかし我々は、それを拒み続けるのではなく、受け入れなければなりません。勿論きっちり罪は償ってもらいますが」
その先国王が何を言っていたのか俺は覚えていない。何でかって、それは当然……。
ドンッ!
「ココネの事を何にも知らないあんたに……」
俺の怒りの感情が爆発してしまったからだ。
「何か言いましたか? ケイイチ国王」
「どんな想いで扉を開いた彼女の気持ちを、あんたは……いやあんた達は分かっているのか!」
「えー、お店のコックを私が?」
「ああ。突然の話だから、今すぐ答えを出さなくていいんだけどさ」
それは今度開店城下町に開店させる予定になっている料亭の専属コックの依頼だ。実はここ一週間の間に、少しずつだけど城下町の発展計画が進んでいた。もう既に店をいくらかオープンさせていて、人もそこそこ来るようになり始めていた。だが、店と言ってもたかがしれていて、主に自家栽培で採れた野菜を売ってばかりで、これといって目立つものがなかった。そこで浮かんだのが、採れたものを料理にして、お客さんに食べてもらおうという案だった。レストラン等と言った大型のものとまでは言えないが、ちょっとした食事処を作ってみるのはいいのかもしれないとい事で、建設も始めたのだけれど、まだ肝心のコックが見つかっておらず、探している途中だった。
「ちょっとケイイチ、いくらなんでもそれは無理があるでしょ。相手は世界でも有名な料理人なのよ。そんな人が簡単に引き受けてくれるわけないじゃない」
「俺も駄目元で聞いただけだから、気にするな」
しかも突然な話だから、当然のように断られると思っていた。
「んー、丁度暇してたところだったからいいかな。今日だって何か招待状届いてたから、遊びに来てただけだもん」
けど、結末はその反対だった。
「え。いいの?」
「うん。引き受けるよその仕事。ただしちゃんとお金は払ってね」
「お、おう」
この国にそんなにお金を払える余裕なんてあったかな。そもそもいくらかかるんだ? もしかしてプロ野球選手の契約金並みのお金を払わされるんじゃ……。
「どんな想像しているか分からないけど、そんなに払う必要はないわよきっと」
「え? どうして? だって彼女世界レベルの料理人なんだろ?」
「まあ、そこら辺の事情は今度話すとして、本当にいいんですか? こんな小さな国のために」
話の途中でもモードを切り替えられるなんて、どれだけ器用なんだよこいつ。
「いいって言ったらいいの。私だって大人なんだから」
「大人? 子供じゃなくて?」
「大人なーの! 何で分からないのかな。私ほど大人に見える女性はいないでしょ」
「いや、多分いるとは思うけど」
ここにいる女性ほぼ全員がそうだと俺は思うんだけど。
「ま、まあとにかく引き受けてくださるのなら、大歓迎でございます。よろしければ今日このパーティが終わったら詳しいお話をさせてもらえないでしょうか」
「分かったぁ。楽しみにしているから、また後でー」
そう言うとリタは俺達から離れ、別の所へと消えていった。
「ふぅ、まさかこんなにも簡単にコックが見つかるなんて思ってなかったよ」
「あんたもなかなかの運の持ち主ね」
■□■□■□
思わぬところでコックが決まって、更に二十分が経った頃、突然電気が明かりが消えたかと思うと、丁度会場の端の方にあるステージだけに明かりが照らされ、そこに先程話をしたタナトゥス国王が立って話を始めた。
「あー、あー、本日は皆様食事会にご参加いただき誠に光栄でございます」
先程の会話とは打って変わって丁寧口調で話を始める国王。俺とココネはそれを黙って聞いている。
「本日こちらにお集まり頂いたのは、食事会という形を取りながら各国の皆様方にお一つご提案があり、そちらを聞いていただいたく、こういった機会を設けさせてもらいました」
提案? ココネ曰く今日の食事会にもそこそこの数の国の人達が集まっているらしく、顔と国名はしっかりと覚えておけと言われていた。今はそれは置いておくとして、それなりの数の国の人達に出す提案とは果たしてどのようなものなのだろうか?
「皆様は五年前のあの悲劇以来、現れた魔物によって多くの尊い命が犠牲になっているのはご存知かと思います。それは恐らく今後も続くでしょう」
五年前の悲劇……それはつまりココネが起こしたあれの事を示しているのだろうか? 魔物という単語が出ている事からそれが確実だと思われるが、それを踏まえたうえでの提案とは一体なんなのだろうか?
「そこで我々はある一つの案を思いついたのです。それが複数の国同士による同盟です」
「同盟?」
思わず声に出してしまう俺。そういえばこの世界って、かなりの数の国があるというのに同盟とか、そういった類のものは一つも聞いたことがないような気がする。それが今にして動き出すというのだろうか?
「これはお互いの国を守るためでもあり、そしてこの先明るい未来を作り上げていくための一つの糧にしたいと思うんです。もう二度とあのような悲劇を起こさないためにも、そしてそのような悲劇を起こす人を生み出さない為にも、ここは国同士が同盟を組むべきなのではないかと思うんです!」
悲劇を起こす人……それはつまりココネの事を言っているのだろうか? 確かにココネは悲劇を起こした張本人ではあるけど、それをわざわざ言わなくてもいいんじゃないのか?
「詳しい理由は分かりませんが、個人的な理由で世界を巻き込んでしまった彼女は決して許されません。疫病神と呼ばれていますが、それは間違っていないのかもしれません。しかし我々は、それを拒み続けるのではなく、受け入れなければなりません。勿論きっちり罪は償ってもらいますが」
その先国王が何を言っていたのか俺は覚えていない。何でかって、それは当然……。
ドンッ!
「ココネの事を何にも知らないあんたに……」
俺の怒りの感情が爆発してしまったからだ。
「何か言いましたか? ケイイチ国王」
「どんな想いで扉を開いた彼女の気持ちを、あんたは……いやあんた達は分かっているのか!」
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