俺の嫁はデレない異世界のお姫様
第44話闇に閉ざされた希望の光
俺達は急いでロリータに向かった。
「何だってまたこんな時に」
「もしかしてユナちゃんが言っていた男の言う通りになったんじゃ」
「分からない。とにかく急ぐぞ」
ロリータに到着すると、そこに広がっていたのは昨日とは打って変わって、建物の一部が壊れてしまっているロリータの姿だった。
「そんな……嘘だろ」
「あのちびっ子は大丈夫なの?」
「とにかく中に入るぞ」
急いで中に入ると、ボロボロになった店内と、何かを必死に守っていたのか、傷だらけで倒れているリタの姿があった。
「リタ!」
慌てて彼女の元に駆け寄る。よかった重傷ではないようだ。これくらいの傷なら、一週間で治ると思われる。
「ケイイチお兄ちゃん……私……守れなかった……」
「今は喋るな。後でゆっくり聞くから」
「私……悔しいよぉ……えっぐ、折角自分の居場所作ってもらったのに……えっぐ」
大粒の涙を流しながらそう語るリタ。
(誰だよ、こんな事をしたやつ)
いくら二十歳とはいえど、リタだって人間だ。こんな目に合わされたら、悔しいし悲しいに決まっている。しかも昨日完成した店を、たった一日で壊されたのだ。俺だったら絶対悔しくなる。
「許さねえ」
「ケイイチ、落ち着いて。感情に任せたら、あんたがどうかしちゃうわよ」
「大切な仲間を傷つけられて、どう黙ってろと言うんだ。どこの魔物だが知らないが、絶対に許さねえ」
パチン
「落ち着きなさいよ馬鹿!」
暴走しかけた感情が、ココネの痛いビンタによって何とか目を覚ます。
「わ、悪い。でも、いくらなんでも酷すぎないか?」
「それは私も分かる。けど、一番辛いのは彼女の方でしょ」
リタに視線を向けるココネ。リタはというと、助けが来たことに安心したのか、眠ってしまっていた。
「そうだよな。目の前で自分の店を壊されて、辛いわけがないよな」
「まだ開店前だからお客さんが来てなくて、被害は最小限だったけど、多分彼女自身が心に傷を負ったわよ」
「しばらくは無理か、ここも……」
ようやく見出された希望が、こうもいとも簡単に砕かれてしまうなんて誰が予想しただろうか?
(リタ、立ち直れるかな)
再び暗闇に閉ざされた希望に、今は打開策が見つからないこの状況。俺はこの先のことに不安を覚えてしまうのであった。
■□■□■□
ロリータが襲撃にあった翌日、あれからずっと眠っていたリタが目を覚ましたということで、早速彼女の部屋を訪ねた。
「どうだ体調は」
「まだ全身が痛むけど、大丈夫」
弱々しい声で俺の問いに答えるリタ。重傷ではないとは言え、あれだけの傷を負ったんだ。しばらくは動けないだろう。俺は近くにあった椅子をベッドのそばに持ってきて、彼女の側に腰掛けた。
「ごめんなリタ、俺達何にもできなくて」
「謝らないでよ。私が……自分の責任で始めたんだから……」
「それでもお前に依頼したのは俺だ。責任はこっちにある」
「でも……」
「それに、魔物の襲撃に関しては完全にこっちに原因がある」
「それはどういう事?」
ここで初めてリタにカグヤの事、そして今までの経緯を全て話した。でも彼女は特に驚きもせず、かといって俺達を責めようともしなかった。
「怒らないのか? 俺達が原因かも知れないのに」
「別にお兄ちゃん達は何も悪くないもん」
「そっか」
そう言ってくれると少しだけ救われたような気がした。けど、そんなのは気休め程度で、次に発した言葉に、俺は更に罪悪感を感じることになってしまう。
「そう、誰も悪くない。悪くないから……」
「リタ?」
「あの場に誰もいなくて、一人ですごく怖かった。いきなり何か現れたかと思ったら、お店を壊し始めて……。誰も悪いことしてないのに、どうして私がこんな目にあわなきゃいけないのかって、壊されていく有様をただただ怯えながら見ていることしかできなかった」
「怖かったよな。お前一人で何としても店を守ろうとしてくれているのに、俺達はすぐに駆けつけることができなかった。本当に申し訳ない気持ちだよ」
「だからお兄ちゃん達は何も悪くない! 私が……私が全部悪いの」
「リタ……」
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
泣きながら謝り始めるリタ。それに対して俺は、何と答えればいいか分からず、ひたすら彼女をなだめる事しかできなかった。
■□■□■□
泣き疲れてしまったのか、リタがまた眠りについてしまったので、俺は静かに部屋をでた。部屋をでると、由奈が壁に寄りかかって何かを考えていた。
「もしかして聞いていたのか? 由奈」
「ちょっと通りかかったら圭ちゃんの声が聞こえたから」
「そうか」
彼女の横に行き、俺も壁に寄りかかる。
「あれは多分、しばらく立ち直れないよ。自分を責め始めてる。リタは何にも悪くないのに」
「そう……。何か可哀想な事しちゃったね」
「ああ。調子に乗って誘ったりしなければよかったって、今更後悔してるよ」
白い天井を眺めながら、リタの顔を思い浮かべる。あんなに料理を心から楽しんでいたのに、今はもうその面影すら見られない。一度植えつけられたトラウマはしばらくは消えないだろうし、この先ずっと彼女の頭の中に残り続けるに違いない。俺は何のために彼女に依頼したのだろうか? こんな目に合わされるため? いや違う。俺は彼女を自分達の国の為に使おうとしていたんだ。だから失敗した。
「なあ由奈」
「何?」
「俺さ、やっぱり国王になっちゃいけなかったのかな?」
「そんなの分からない。圭ちゃんが決めた道なんだから、答えは自分で見つけて」
「そうだよな……」
誰かを守りたいから国王になったのに、かえって傷つけてしまった。
(これじゃあ国王失格だよな、俺)
あんなに堂々と宣言しておきながら、格好悪すぎるよ。
「何だってまたこんな時に」
「もしかしてユナちゃんが言っていた男の言う通りになったんじゃ」
「分からない。とにかく急ぐぞ」
ロリータに到着すると、そこに広がっていたのは昨日とは打って変わって、建物の一部が壊れてしまっているロリータの姿だった。
「そんな……嘘だろ」
「あのちびっ子は大丈夫なの?」
「とにかく中に入るぞ」
急いで中に入ると、ボロボロになった店内と、何かを必死に守っていたのか、傷だらけで倒れているリタの姿があった。
「リタ!」
慌てて彼女の元に駆け寄る。よかった重傷ではないようだ。これくらいの傷なら、一週間で治ると思われる。
「ケイイチお兄ちゃん……私……守れなかった……」
「今は喋るな。後でゆっくり聞くから」
「私……悔しいよぉ……えっぐ、折角自分の居場所作ってもらったのに……えっぐ」
大粒の涙を流しながらそう語るリタ。
(誰だよ、こんな事をしたやつ)
いくら二十歳とはいえど、リタだって人間だ。こんな目に合わされたら、悔しいし悲しいに決まっている。しかも昨日完成した店を、たった一日で壊されたのだ。俺だったら絶対悔しくなる。
「許さねえ」
「ケイイチ、落ち着いて。感情に任せたら、あんたがどうかしちゃうわよ」
「大切な仲間を傷つけられて、どう黙ってろと言うんだ。どこの魔物だが知らないが、絶対に許さねえ」
パチン
「落ち着きなさいよ馬鹿!」
暴走しかけた感情が、ココネの痛いビンタによって何とか目を覚ます。
「わ、悪い。でも、いくらなんでも酷すぎないか?」
「それは私も分かる。けど、一番辛いのは彼女の方でしょ」
リタに視線を向けるココネ。リタはというと、助けが来たことに安心したのか、眠ってしまっていた。
「そうだよな。目の前で自分の店を壊されて、辛いわけがないよな」
「まだ開店前だからお客さんが来てなくて、被害は最小限だったけど、多分彼女自身が心に傷を負ったわよ」
「しばらくは無理か、ここも……」
ようやく見出された希望が、こうもいとも簡単に砕かれてしまうなんて誰が予想しただろうか?
(リタ、立ち直れるかな)
再び暗闇に閉ざされた希望に、今は打開策が見つからないこの状況。俺はこの先のことに不安を覚えてしまうのであった。
■□■□■□
ロリータが襲撃にあった翌日、あれからずっと眠っていたリタが目を覚ましたということで、早速彼女の部屋を訪ねた。
「どうだ体調は」
「まだ全身が痛むけど、大丈夫」
弱々しい声で俺の問いに答えるリタ。重傷ではないとは言え、あれだけの傷を負ったんだ。しばらくは動けないだろう。俺は近くにあった椅子をベッドのそばに持ってきて、彼女の側に腰掛けた。
「ごめんなリタ、俺達何にもできなくて」
「謝らないでよ。私が……自分の責任で始めたんだから……」
「それでもお前に依頼したのは俺だ。責任はこっちにある」
「でも……」
「それに、魔物の襲撃に関しては完全にこっちに原因がある」
「それはどういう事?」
ここで初めてリタにカグヤの事、そして今までの経緯を全て話した。でも彼女は特に驚きもせず、かといって俺達を責めようともしなかった。
「怒らないのか? 俺達が原因かも知れないのに」
「別にお兄ちゃん達は何も悪くないもん」
「そっか」
そう言ってくれると少しだけ救われたような気がした。けど、そんなのは気休め程度で、次に発した言葉に、俺は更に罪悪感を感じることになってしまう。
「そう、誰も悪くない。悪くないから……」
「リタ?」
「あの場に誰もいなくて、一人ですごく怖かった。いきなり何か現れたかと思ったら、お店を壊し始めて……。誰も悪いことしてないのに、どうして私がこんな目にあわなきゃいけないのかって、壊されていく有様をただただ怯えながら見ていることしかできなかった」
「怖かったよな。お前一人で何としても店を守ろうとしてくれているのに、俺達はすぐに駆けつけることができなかった。本当に申し訳ない気持ちだよ」
「だからお兄ちゃん達は何も悪くない! 私が……私が全部悪いの」
「リタ……」
「ごめんなさい、ごめんなさい……」
泣きながら謝り始めるリタ。それに対して俺は、何と答えればいいか分からず、ひたすら彼女をなだめる事しかできなかった。
■□■□■□
泣き疲れてしまったのか、リタがまた眠りについてしまったので、俺は静かに部屋をでた。部屋をでると、由奈が壁に寄りかかって何かを考えていた。
「もしかして聞いていたのか? 由奈」
「ちょっと通りかかったら圭ちゃんの声が聞こえたから」
「そうか」
彼女の横に行き、俺も壁に寄りかかる。
「あれは多分、しばらく立ち直れないよ。自分を責め始めてる。リタは何にも悪くないのに」
「そう……。何か可哀想な事しちゃったね」
「ああ。調子に乗って誘ったりしなければよかったって、今更後悔してるよ」
白い天井を眺めながら、リタの顔を思い浮かべる。あんなに料理を心から楽しんでいたのに、今はもうその面影すら見られない。一度植えつけられたトラウマはしばらくは消えないだろうし、この先ずっと彼女の頭の中に残り続けるに違いない。俺は何のために彼女に依頼したのだろうか? こんな目に合わされるため? いや違う。俺は彼女を自分達の国の為に使おうとしていたんだ。だから失敗した。
「なあ由奈」
「何?」
「俺さ、やっぱり国王になっちゃいけなかったのかな?」
「そんなの分からない。圭ちゃんが決めた道なんだから、答えは自分で見つけて」
「そうだよな……」
誰かを守りたいから国王になったのに、かえって傷つけてしまった。
(これじゃあ国王失格だよな、俺)
あんなに堂々と宣言しておきながら、格好悪すぎるよ。
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