俺の嫁はデレない異世界のお姫様

りょう

第50話王国祭、開催!

 王国祭当日、俺は開催式までの残り少ない時間を使って今日読むべき自分の挨拶を何度も見返していた。

「何ギリギリまで悩んでいるのよ。今更内容を変えるつもりなの?」

「いや、そうじゃない。なるべく暗記した方がいいんじゃないかって」

「別にそこまでする必要ないんじゃないかしら。挨拶程度なんだし」

「挨拶程度だからしっかりするんだよ」

「あんたはいつからプロになったのよ」

「お前がむちゃぶりばかりするようになってからだよ」

 またいつ何をされるか分からないので、年には念を入れてチェックする。

「別に悪気があってしているわけじゃないわよ」

「だったら予め何をやるかくらい話を通しておけよ」

「私だって予想外のことが起きるから、何とも言えないのよ」

「本当どうかしているよ」

それから三十分後。

 開催式まで残り三十分にまでなったところで、由奈を呼びに行く。彼女には今日ある計画を行ってもらうために、早めに準備を始めてもらっていた。

「こんな感じでいいの?」

「ああ。あとは言われた通りにやってくれないかな」

「任せておいて。彼女もきっと分かってくれると思うから」

「頼んだ」

 由奈と一通り確認し終えた後は、開催式のために外の会場へ。俺が頼んだとおりに会場が出来ていて、二週間で形になったのが本当に素晴らしい。俺も手伝ったとは言え、半分以上をあちらの方に任せっきりだったので、今度お礼に行かなきゃな。

「思った以上に人が来ているわね」

「ああそうだな。これはちょっとビックリだよ」

「国の伝統行事だし、これくらい人がきて当たり前なのよ」

「一応毎年やっているのか?」

「一応って毎年やっているわよ」

「姫が不在で?」

「う、うるさいわね」

 会場のでき以上に驚かされたのが、俺の予想を遥かに上回る人の数。国外から来ている人がいる影響でもあるのか、会場はヒトデ溢れかえっていた。

「でもこれだけ人がいるなら、色々とアピールできるチャンスだよな」

「そうかもしれないわね。あんたが提案したこのカレーとかいう食べ物も、認めてもらえるかも知れないわね」

「好みは人それぞれだけど、大体の人はおいしいって感じるよ。それにお前が作ったんだ。食べないって人はいない」

「それは私が姫だから?」

「別にそうじゃないよ。誰だって女性が作った料理は食べたくなる」

「それはあんたも?」

「そうだな。お前も料理のセンスがないわけじゃないから。たまには作ってみてもいいじんじゃないか?」

「考えておくわ」

 とそんな会話をしていると、開催式の時間に。司会進行役の人がアナウンスすると、その場にいた人達が静まり返り、その時を待つ。そして、

「これよりナルカディア王国祭の開催式を行います」

 王国祭一番最初のイベント、開催式の宣言がなされた。

■□■□■□
 開催式とは言っても、色々お偉いさんが話していくだけな感じで、最後に国王である俺が挨拶する形のもので、特に何か起きることもなく、順当に進んでいった。

「結婚式の時も思ったんだけどさ、毎回挨拶に来ている人達って誰?」

「そういえば何にも教えていなかったわね。この人達は世界で一番偉い人たちが集まってできている組織、WKC(World keep connexion )世界保守連合の人達よ」

「知らない間にど偉い人来ちゃってんじゃん」

 この前堂々と昔話とか必要ないとか想っていた俺、すごく恥ずかしいよ。

「そんなに偉い人が来ているなら、先に言えよ。挨拶し損ねてんじゃん」

「いいのよ変に気を使わなくて。偉そうに見えるけど、結構あれな人たちが集まっているところだから」

「あれな人達って……」

何か怖いぞWKC。

「そんな事よりあんたの出番よ」

「え、あ、もう?」

 進行速度的にそろそろとは思っていたけど、予想以上に早かったので、少しビビりながらも俺は一人大勢の人達の前に立つ。よし、緊張していない。これなら何とかなる。

「えっと、本日はお集まりいただきありがとうございます。まだ自分は国王になってから間もなくて、こういったイベントにまだ不慣れな点がありますが、そろそろしっかりと挨拶させていただきます」

 すごく丁寧な口調になってしまっているが、まあそれも国王らしいからいいのかもしれない。

「今回の王国祭にあたって、ライドアの方々に沢山のご協力をいただきました。彼らの力がなければ、きっとこんなにも素晴らしい会場は作れませんでしたし、こうして多くの方々に来ていただけることもございませんでした。ですので、この場を借りてお礼をさせていただきます。ご協力ありがとうございました」

 恐らくの場にもいるであろうライドアの人に感謝の言葉を述べる。

「そして本日ご来場してくださった皆様、ありがとうございます。まるで御終いのような挨拶をしていますが、王国祭はこれからです。是非ともごゆっくりしていってください」

 次に来てくれた人への感謝。これだけの言葉を言えば、充分挨拶と言えるだろう。

「それでは、ここにナルカディア王国祭の開催を宣言します。こちらも精一杯おもてなしいたしますので、どうぞ楽しんでいってください!」

 そして最後は開催の宣言。それは俺にとって長い一日の幕開けでもあった。

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