俺の嫁はデレない異世界のお姫様
第64話ココネの力
カグヤの力に手を出すことすらできなかった俺は、そのまま意識を失い再び目を開くと暗闇の中にいた。
(ここは?)
前後左右真っ暗で、ここがどこなのかさえ認識できない。
(俺は……)
ココネを助けるって言い張っていたくせに、あっさりと負けてしまうなんて男として情けない。けど、彼女の力は圧倒的すぎて、今の俺にはどうしようもない。
『何弱気になっているのよ。馬鹿』
「え?」
突然どこからか声が聞こえる。それは聞き覚えのある声で、俺はその声に何度も励まされていた。
『あんたより私のほうがピンチなのに、こんな所でへばっているんじゃないわよケイイチ』
「ココネ、そこにいるのか?」
『分からない。私が今どこにいるのかすら分からない。けど、どうしてかあんたの気配と声が聞こえるのよ。どうしてかしら』
「俺もお前の声だけが聞こえる。でもどこにいるのかはっきり分からない」
今こうして会話をしているだけでも不思議なのだが、ココネにこの声が届いているならそれだけでも構わない。今彼女と話せているだけでもいい。
「なあココネ、俺はどうすればいい? このままじゃ勝ち目が全くない」
『何を言い出すかと思えばそんな事? そんなの私だって分かるわけないじゃない』
「はぁ? お前がピンチだっていうのにそんな事言っている場合じゃないんだぞ?」
『あんたが分からないのに、私が分かるわけないでしょ』
「いやそれはそうだけどさ」
相変わらず喧嘩を始める俺とココネ。お互いどこにいるかすら分からないのに、喧嘩できるとかいつから器用になったんだ?
『私自身も個人的に調べてみたんだけど、この刻印が持つ真の力って人それぞれみたいなのよ。だから私自身どんな力があるのかすら分からないし、それに……』
「それに?」
『あんたの幼馴染だってどんな力があるか分からないわ』
「なんでそれを?」
『彼女がここに来てすぐに分かったのよ。彼女あんたに何か隠し事しているの。もしかしたらって思って聞いてみたけど、やはりそうだったわ』
「いつの間にそんな事を」
俺が知らない間に、ココネと由奈の間にそんなやり取りがあったなんて予想外だ。なんで俺はもっと早くに知っておかなかったんだろう。
『とにかく、現状私から何かできることはないわよ。自分で何とかしなさい』
「何とかしろってお前、何のために俺に話しかけてきたんだよ」
『そ、それはあんたがへばっている姿を見たくなかったからよ。何かアドバイスできたらしたかったけど、こっちも手詰まり』
「すげえ時間を無駄にした気がするんだけど」
いや、でもちょっと待てよ。もしもこの人の意識に話しかけられるのが、刻印による力の一つだとしたら、どうなる。それを踏まえると、カグヤが何故ココネを覚醒させようとした理由も分かるかもしれない。
刻印の力による、意識の支配。
これはその前兆なのかもしれない。
(つまり刻印を持つ者の中でたった一人が持つことが許される、絶対的力がココネの刻印にはある)
まさにプリンセスという事だ。
「分かったぞココネ、お前の刻印の力が何なのか」
『な、何よいきなり。分かってもあまり嬉しくないし』
「いや、結構重要な事だ。これをうまく使えば、カグヤを……いやこの世界の闇を取り除けるかも知れない」
「え? そんな事が?」
「ただし、リスクがかなり大きい」
ココネにこの一瞬で考えた作戦を全て話す。不可能ではない話かもしれないが、ココネのリスクが大きすぎる。彼女が簡単に了承してくれるとは到底思えない。
『もしそれが本当なら、あんたを信じるわよ』
「え? でも……」
『それしか方法がないんでしょ? だったら私を信じなさい』
「確定要素じゃないし、お前が危ない可能性だってあるぞ?」
『その時は助けに来なさい。私、あんたが来るの待っているから』
「あ、おい!」
まだ心配要素があったのだが、無情にもそこでココネの声が聞こえなくなってしまった。それと同時に、暗闇だった俺の視界は元に戻り、忘れていた痛みが再び蘇ってきた。
「あれ? まだ意識があったんですか?」
目の前には余裕な顔でこちらを見ているカグヤ。どうやら俺が目を覚ましたのがよほど予想外だったのだろうか?
「ま……だ、終わってない!」
残りの力を使って何とか立ち上がる。色々と痛みが残っているが、ココネが頑張るのだから俺も頑張らなきゃ。
「立ち上がるとは予想外です。もう勝ち目がないの分かっているのに、まだ挑む気ですか?」
「それはどうかな」
「強がっているのもいつまで……」
急にしゃべるのをやめるカグヤ。それどころか動くこともままならず、その場に棒立ちしてしまう。どうやらもうココネが仕事を始めているのだろうか。
「か、体がどうして動かないんですか」
「流石だなココネ。お前を信じてよかったよ」
「まさか刻印の力が覚醒して……でも早すぎますし、それにどうして私がコントロールされているのですか」
「残念だったなカグヤ。ココネは自らの危険を省みてまで、自らの力を発動させたんだよ」
「そんなまさか、自ら力を使うなんて……」
「お前が自分で使っていたから、まさかとは思ってな」
「そんな……」
あまりに予想外の出来事に戸惑い始めるカグヤ。俺の予想通り刻印の力は自らの意志でも使用可能だった。ただし、ココネの場合の能力は、恐らく覚醒後に使えるもので、もしかしたら元の人間に戻れないかもしれないというリスクがあった。だから俺は一瞬躊躇ってしまった。でも彼女は、それでも信じてその力を使ったのだ。
絶対的支配という力を。
「どうやら、この勝負、俺の勝ちだなカグヤ!」
「そんな私はここまできて……」
体を動かせないカグヤに向かって、俺は剣ではなく自らの拳で彼女を殴り倒した。思い切り吹き飛ばされたカグヤはそのまま壁に激突。頭を打ってしまったのか、その場で意識を失った。
「終わった……のか?」
(ここは?)
前後左右真っ暗で、ここがどこなのかさえ認識できない。
(俺は……)
ココネを助けるって言い張っていたくせに、あっさりと負けてしまうなんて男として情けない。けど、彼女の力は圧倒的すぎて、今の俺にはどうしようもない。
『何弱気になっているのよ。馬鹿』
「え?」
突然どこからか声が聞こえる。それは聞き覚えのある声で、俺はその声に何度も励まされていた。
『あんたより私のほうがピンチなのに、こんな所でへばっているんじゃないわよケイイチ』
「ココネ、そこにいるのか?」
『分からない。私が今どこにいるのかすら分からない。けど、どうしてかあんたの気配と声が聞こえるのよ。どうしてかしら』
「俺もお前の声だけが聞こえる。でもどこにいるのかはっきり分からない」
今こうして会話をしているだけでも不思議なのだが、ココネにこの声が届いているならそれだけでも構わない。今彼女と話せているだけでもいい。
「なあココネ、俺はどうすればいい? このままじゃ勝ち目が全くない」
『何を言い出すかと思えばそんな事? そんなの私だって分かるわけないじゃない』
「はぁ? お前がピンチだっていうのにそんな事言っている場合じゃないんだぞ?」
『あんたが分からないのに、私が分かるわけないでしょ』
「いやそれはそうだけどさ」
相変わらず喧嘩を始める俺とココネ。お互いどこにいるかすら分からないのに、喧嘩できるとかいつから器用になったんだ?
『私自身も個人的に調べてみたんだけど、この刻印が持つ真の力って人それぞれみたいなのよ。だから私自身どんな力があるのかすら分からないし、それに……』
「それに?」
『あんたの幼馴染だってどんな力があるか分からないわ』
「なんでそれを?」
『彼女がここに来てすぐに分かったのよ。彼女あんたに何か隠し事しているの。もしかしたらって思って聞いてみたけど、やはりそうだったわ』
「いつの間にそんな事を」
俺が知らない間に、ココネと由奈の間にそんなやり取りがあったなんて予想外だ。なんで俺はもっと早くに知っておかなかったんだろう。
『とにかく、現状私から何かできることはないわよ。自分で何とかしなさい』
「何とかしろってお前、何のために俺に話しかけてきたんだよ」
『そ、それはあんたがへばっている姿を見たくなかったからよ。何かアドバイスできたらしたかったけど、こっちも手詰まり』
「すげえ時間を無駄にした気がするんだけど」
いや、でもちょっと待てよ。もしもこの人の意識に話しかけられるのが、刻印による力の一つだとしたら、どうなる。それを踏まえると、カグヤが何故ココネを覚醒させようとした理由も分かるかもしれない。
刻印の力による、意識の支配。
これはその前兆なのかもしれない。
(つまり刻印を持つ者の中でたった一人が持つことが許される、絶対的力がココネの刻印にはある)
まさにプリンセスという事だ。
「分かったぞココネ、お前の刻印の力が何なのか」
『な、何よいきなり。分かってもあまり嬉しくないし』
「いや、結構重要な事だ。これをうまく使えば、カグヤを……いやこの世界の闇を取り除けるかも知れない」
「え? そんな事が?」
「ただし、リスクがかなり大きい」
ココネにこの一瞬で考えた作戦を全て話す。不可能ではない話かもしれないが、ココネのリスクが大きすぎる。彼女が簡単に了承してくれるとは到底思えない。
『もしそれが本当なら、あんたを信じるわよ』
「え? でも……」
『それしか方法がないんでしょ? だったら私を信じなさい』
「確定要素じゃないし、お前が危ない可能性だってあるぞ?」
『その時は助けに来なさい。私、あんたが来るの待っているから』
「あ、おい!」
まだ心配要素があったのだが、無情にもそこでココネの声が聞こえなくなってしまった。それと同時に、暗闇だった俺の視界は元に戻り、忘れていた痛みが再び蘇ってきた。
「あれ? まだ意識があったんですか?」
目の前には余裕な顔でこちらを見ているカグヤ。どうやら俺が目を覚ましたのがよほど予想外だったのだろうか?
「ま……だ、終わってない!」
残りの力を使って何とか立ち上がる。色々と痛みが残っているが、ココネが頑張るのだから俺も頑張らなきゃ。
「立ち上がるとは予想外です。もう勝ち目がないの分かっているのに、まだ挑む気ですか?」
「それはどうかな」
「強がっているのもいつまで……」
急にしゃべるのをやめるカグヤ。それどころか動くこともままならず、その場に棒立ちしてしまう。どうやらもうココネが仕事を始めているのだろうか。
「か、体がどうして動かないんですか」
「流石だなココネ。お前を信じてよかったよ」
「まさか刻印の力が覚醒して……でも早すぎますし、それにどうして私がコントロールされているのですか」
「残念だったなカグヤ。ココネは自らの危険を省みてまで、自らの力を発動させたんだよ」
「そんなまさか、自ら力を使うなんて……」
「お前が自分で使っていたから、まさかとは思ってな」
「そんな……」
あまりに予想外の出来事に戸惑い始めるカグヤ。俺の予想通り刻印の力は自らの意志でも使用可能だった。ただし、ココネの場合の能力は、恐らく覚醒後に使えるもので、もしかしたら元の人間に戻れないかもしれないというリスクがあった。だから俺は一瞬躊躇ってしまった。でも彼女は、それでも信じてその力を使ったのだ。
絶対的支配という力を。
「どうやら、この勝負、俺の勝ちだなカグヤ!」
「そんな私はここまできて……」
体を動かせないカグヤに向かって、俺は剣ではなく自らの拳で彼女を殴り倒した。思い切り吹き飛ばされたカグヤはそのまま壁に激突。頭を打ってしまったのか、その場で意識を失った。
「終わった……のか?」
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