俺の嫁はデレない異世界のお姫様
第67話失われてしまった記憶
俺とココネがルイヴァック島に流れ着いてから二日が過ぎた、ココネは未だに目を覚まさず、心配する事しかできない俺はどこかもどかしかった。
「ケイイチさん、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。あの人なら必ず成功するから」
「信じていないわけじゃないんだけど、四日以上あいつは寝たきりだろ? おまけに腹部を刺されて出血しているし」
「でもその前に、自分の怪我を治してね」
そうは言われるが、俺自身の怪我は何一つ問題ない。あいつは俺を庇って重傷を負ったんだ。だからちゃんとお礼を言わなければならない。こんな俺なんかの為に命を張って守ってくれてありがとうって。だからちゃんと目を覚まして欲しいんだ、ココネには。
「お姉ちゃん、大変だよ!」
そんな事を心から願っていると、突然妹のネルが(この姉妹は姉の方がルナで、妹のほうがネルという名前だと、少し前に教えてくれた))慌てて部屋に入ってきた。
「どうしたのネル。そんなに慌てて入ってきて」
「お姫がさっき目を覚ましたの」
「え? ココネが?」
それはかなりの朗報なのだが、それのどこが大変なのだろうか?
「目を覚ましたのはいい事じゃない。それのどこが大変なの?」
「それが実は……」
どういう事なのか説明を始めるネル。その内容は、俺にとってあまりに衝撃的な事で、そして絶対に信じられない内容だった。
「ココネの記憶が……ない?」
■□■□■□
それが本当なのか確かめるために、俺は慌ててココネが眠っている部屋へと向かった。
「ココネ!」
部屋に入ると、布団の上で何かを考えているかのようにボーッとしているココネの姿がそこにはあった。一見するといつもとさほど変わらないように見えるが、どこかいつもと違う雰囲気を彼女は纏っていた。
「ケイイチ?」
俺が入ってきたことに気がついたのか、こちらを見てココネが俺の名前を呼ぶ。記憶がないって言うから慌てて来たけど、どうやらそれはネルの気のせいだったようだ。ホッとひと安心した俺は彼女に近寄る。
「何だよココネ、お前記憶がなくなったって聞いたから、慌てて来たけど心配な……」
「来ないで!」
だが、その途中で何故か彼女に拒絶されてしまう。
「ど、どうしたんだよココネ。急にそんな事言い出して」
「あなたは誰なの? 私の知っているケイイチっていう人なの?」
「え? そんなの決まっているだろ。俺は高山圭一。もう一年近く一緒に過ごしているのに、もう忘れたのかよ」
思わぬ言葉にかなり動揺する俺に、ココネは更に畳み掛けるかの如く、俺にこう告げる。
「私何にも分からないの。自分の名前も分からないし、あなたが本当にケイイチという人なのかも分からない。ただ、ケイイチって言葉しか覚えていないの」
その言葉が嘘か本当なのか、すぐに見分けがついた。ココネがこんな嘘をつくはずがない。そう、こんな信じられない嘘を……。
「お、おい、自分の名前も分からないなんて冗談だろ? 俺は今お前の名前を呼んで入ってきたじゃないか。それにお前は反応したんだろ? だったらそんなくだらない冗談をいうのはその辺にして……」
けど、俺はそれが嘘じゃないって事を受け入れられなかった。こんな事いきなり言われても、信じられない、好きな人にこんな事言われて、誰が信じられるか。
「ココネっていうのが私の名前なんだ。教えてくれてありがとう」
「い、いやそうじゃなくてさ。俺はお前がいつまでも冗談を言っていることに怒っていて……」
「私はあなたが誰だか思い出せないけど、もし仮に私の記憶に残っているケイイチっていう人なら、私の近くにいてほしいな」
「いい加減にしてくれ!」
だから俺は、彼女に対して怒りをぶつけてしまった。こんな冗談、いつまでも言うのはやめてくれって。元のココネに戻ってくれって。だけど、
「何で怒っているの? 私お礼しか言っていないのに」
「っ!」
それすらも彼女に届かなかった。あまりに酷すぎる事実に、俺はどうしようもなくなり、気がついたら部屋を出て近くにあった椅子にうずくまって座っていた。
(こんな事って……)
どうすればいいか考えても考えても、答えが出てこない。彼女の記憶はなくなってしまったのだから、他者である俺にはどうにかできる問題ではない。意地で思い出させようとしたって、彼女を傷つけてしまうだけだ。だから……。
「ケイイチさん、大丈夫?」
そんな俺の様子をどこからか見ていたのであろう、ルナが優しく声をかけてくれた。
「大丈夫なわけないだろ」
「そう……だよね」
「俺はあいつとかれこれ一年一緒にいたんだ。国王になる前からずっと。無理やりこの世界にあいつが俺を呼んで、結婚しろとか色々無茶言われて……。最初は嫌な奴だって思っていたけど、長い時間一緒にいる間にいつの間にかあいつを好きになっていて……」
次々と彼女ととの思い出が蘇っていく、そしてそれらは、弾けて消えていってしまう。まるで俺の記憶がなくなっていってしまうかのように、俺とあいつとの思い出が……。
「なあルナ」
「何?」
「俺はこれからどうすればいいんだよ」
「それは私にも……分からない」
「そっか。そうだよな。分かるはずないよな」
これは俺自身の事なのだから、他人が分かるわけないよな。俺が彼女のことを分かっていないこと同じように……。
(これじゃあお礼をちゃんと言えないじゃねえかよ、ココネ)
「ケイイチさん、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。あの人なら必ず成功するから」
「信じていないわけじゃないんだけど、四日以上あいつは寝たきりだろ? おまけに腹部を刺されて出血しているし」
「でもその前に、自分の怪我を治してね」
そうは言われるが、俺自身の怪我は何一つ問題ない。あいつは俺を庇って重傷を負ったんだ。だからちゃんとお礼を言わなければならない。こんな俺なんかの為に命を張って守ってくれてありがとうって。だからちゃんと目を覚まして欲しいんだ、ココネには。
「お姉ちゃん、大変だよ!」
そんな事を心から願っていると、突然妹のネルが(この姉妹は姉の方がルナで、妹のほうがネルという名前だと、少し前に教えてくれた))慌てて部屋に入ってきた。
「どうしたのネル。そんなに慌てて入ってきて」
「お姫がさっき目を覚ましたの」
「え? ココネが?」
それはかなりの朗報なのだが、それのどこが大変なのだろうか?
「目を覚ましたのはいい事じゃない。それのどこが大変なの?」
「それが実は……」
どういう事なのか説明を始めるネル。その内容は、俺にとってあまりに衝撃的な事で、そして絶対に信じられない内容だった。
「ココネの記憶が……ない?」
■□■□■□
それが本当なのか確かめるために、俺は慌ててココネが眠っている部屋へと向かった。
「ココネ!」
部屋に入ると、布団の上で何かを考えているかのようにボーッとしているココネの姿がそこにはあった。一見するといつもとさほど変わらないように見えるが、どこかいつもと違う雰囲気を彼女は纏っていた。
「ケイイチ?」
俺が入ってきたことに気がついたのか、こちらを見てココネが俺の名前を呼ぶ。記憶がないって言うから慌てて来たけど、どうやらそれはネルの気のせいだったようだ。ホッとひと安心した俺は彼女に近寄る。
「何だよココネ、お前記憶がなくなったって聞いたから、慌てて来たけど心配な……」
「来ないで!」
だが、その途中で何故か彼女に拒絶されてしまう。
「ど、どうしたんだよココネ。急にそんな事言い出して」
「あなたは誰なの? 私の知っているケイイチっていう人なの?」
「え? そんなの決まっているだろ。俺は高山圭一。もう一年近く一緒に過ごしているのに、もう忘れたのかよ」
思わぬ言葉にかなり動揺する俺に、ココネは更に畳み掛けるかの如く、俺にこう告げる。
「私何にも分からないの。自分の名前も分からないし、あなたが本当にケイイチという人なのかも分からない。ただ、ケイイチって言葉しか覚えていないの」
その言葉が嘘か本当なのか、すぐに見分けがついた。ココネがこんな嘘をつくはずがない。そう、こんな信じられない嘘を……。
「お、おい、自分の名前も分からないなんて冗談だろ? 俺は今お前の名前を呼んで入ってきたじゃないか。それにお前は反応したんだろ? だったらそんなくだらない冗談をいうのはその辺にして……」
けど、俺はそれが嘘じゃないって事を受け入れられなかった。こんな事いきなり言われても、信じられない、好きな人にこんな事言われて、誰が信じられるか。
「ココネっていうのが私の名前なんだ。教えてくれてありがとう」
「い、いやそうじゃなくてさ。俺はお前がいつまでも冗談を言っていることに怒っていて……」
「私はあなたが誰だか思い出せないけど、もし仮に私の記憶に残っているケイイチっていう人なら、私の近くにいてほしいな」
「いい加減にしてくれ!」
だから俺は、彼女に対して怒りをぶつけてしまった。こんな冗談、いつまでも言うのはやめてくれって。元のココネに戻ってくれって。だけど、
「何で怒っているの? 私お礼しか言っていないのに」
「っ!」
それすらも彼女に届かなかった。あまりに酷すぎる事実に、俺はどうしようもなくなり、気がついたら部屋を出て近くにあった椅子にうずくまって座っていた。
(こんな事って……)
どうすればいいか考えても考えても、答えが出てこない。彼女の記憶はなくなってしまったのだから、他者である俺にはどうにかできる問題ではない。意地で思い出させようとしたって、彼女を傷つけてしまうだけだ。だから……。
「ケイイチさん、大丈夫?」
そんな俺の様子をどこからか見ていたのであろう、ルナが優しく声をかけてくれた。
「大丈夫なわけないだろ」
「そう……だよね」
「俺はあいつとかれこれ一年一緒にいたんだ。国王になる前からずっと。無理やりこの世界にあいつが俺を呼んで、結婚しろとか色々無茶言われて……。最初は嫌な奴だって思っていたけど、長い時間一緒にいる間にいつの間にかあいつを好きになっていて……」
次々と彼女ととの思い出が蘇っていく、そしてそれらは、弾けて消えていってしまう。まるで俺の記憶がなくなっていってしまうかのように、俺とあいつとの思い出が……。
「なあルナ」
「何?」
「俺はこれからどうすればいいんだよ」
「それは私にも……分からない」
「そっか。そうだよな。分かるはずないよな」
これは俺自身の事なのだから、他人が分かるわけないよな。俺が彼女のことを分かっていないこと同じように……。
(これじゃあお礼をちゃんと言えないじゃねえかよ、ココネ)
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