俺の嫁はデレない異世界のお姫様
第78話百年の業
突如現れたカグヤによって、場は更に緊迫感が増した。
「お前が正しい歴史を伝える? どういうことだよ」
「言葉の通りですよ。私がこの世界の歴史をよく知っていますから」
「何がよく知っているだよ。人を散々騙した挙句、俺達の国を奪いやがって」
「勘違いされては困りますね。私がナルカディアを占領したのは、国を正しい方向へと導く為。あなた達には決してできない事を、私達はこれからするんですよをそやのどこが間違いだと」
「何を訳が分からないことを……」
「ケイイチ、今は抑えて。それよりもあなたが本当に正しい歴史の伝承者と言うなら、教えてくれないかしら。私のお母さんと、ルナが言っていること、どちらが正しいのかを」
「おいココネ、こんな奴の言うことなんて信じない方が……」
「勿論私は信じてない。けど、それでも私は、お母さんに罪が被せられてる所なんて、見たくないの」
『ココネ……』
そう言うココネの目には迷いはなかった。何を信じていいのか分からないこの状況下で、自分の母親は信じ続けたいという彼女の切なる願い。それが彼女の瞳からヒシヒシと伝わってきた。
(本当は今すぐにでも殴りたい所だけど……)
「分かった。俺はあくまでココネを信じる。お前の話を聞かせてくれカグヤ」
「分かりました。ではお教えしましょう」
上から目線の彼女の言動に、苛立ちを何とか堪えながらも彼女の話に耳を傾ける。少し間を開けた後に、カグヤは口を開いた。
「まずどちらの言い分が正しいのか、でしたよね。百年前のルイヴァック島の悲劇、その全ての引き金となったのは……」
◼︎◻︎◼︎◻︎◼︎◻︎
「知ってるか、ココロ。本土から少し離れた所に、かつて小さな島が存在したのを」
「小さな島、ですか?」
時を遡って今から二十年前。人と魔物の争いが絶えない中、ココロ姫が子を授かったという朗報が流れていたほぼ同時期、ナルカディア王国先代国王ローウェンは、今の戦いの起源を辿っていた。その中で一つの島が浮かび上がった。
「その島はルイヴァック島と呼ばれていたらしい。百年前に既に滅んでしまった島らしいんだが、どうやらその原因が例の魔物と関係しているらしい」
「百年前に滅んだ島と、魔物がですか?」
その島の名はルイヴァック島。丁度同じ頃に起きた大災害と重なってしまったが為に、滅んだ原因が災害だと片付けられたらしいが、どうやらそういうわけではないらしい。
「そのルイヴァック島のほぼ中心に、ある遺跡があるらしく、魔物の発生源はそこにあるらしい」
「じゃあ何かしらの原因で遺跡から魔物が溢れ、ルイヴァック島は滅んでしまったという事ですか?」
「ああ。そうなる。不幸にもそれとほぼ同時期に発生した大災害がそれを消してしまったのだがな」
「そんな……そんな事って」
ココロはその事に心を痛めた。だけどそれと同時に、彼女はその島へ興味を持ってしまった。もしその島の謎を解明さえできれば、今起きている事の解決の糸口になるのかもしれない。そう彼女は思った。
「じゃあお母さんは一度、この島に?」
「そうです。ただし、既にその島は海の中に沈んでいるので見つかるはずもありませんでした。それなのに」
『何故かその島は、そこにあったんです』
本来影も形もないはずなのに、その島はそこに存在してしまった。そして彼女は踏み入れてしまったのだ。禁断の地に。
「でもそれと、ルナが言う直接の原因とは関係ないんじゃないのか?」
「嘘じゃない! 彼女は確かにあの中にいたのよ! 百年前のあの惨劇の中に」
カグヤの話を聞く限りでは、原因を知るために幻の島に彼女が踏み入れただけで、それ以外に何かおかしなところは思い当たらない。それに百年前の真実を話しているのに、そんな最近の話をしても、何も意味がないような……。
「確かにここまでは何も関係ありません。しかし彼女はその島に足を踏み入れてしまったことにより……」
『もうやめましょうか、この話は』
話の続きをしようとしたところで、突然ココロさんが話を遮った。
「どうしたのお母さん、急に」
『これ以上私の意識をここに繋げると戻れなくなってしまうんで、この辺にして……』
まるで何かを隠すかのように話を切ろうとするココロさん。確かにこの前も突然消えたけど、自分の潔白を証明したいのだから、そんな引き伸ばさなくても……。
「彼女は欠けていたものを取り戻してしまったのです」
それを無視してカグヤは話を続けた。
『どこのどなたかは存じませんが、余計な事を話すのはやめてもらえませんか?』
「そうはいかないんですよ。あなたは自分の業も忘れて、長い時を過ごしたのですから」
『私の……業……』
「あなたさえいなければ、この島は滅ぶこともなかったんです。あなたさえいなければ……」
どこか感情のこもった言い方をするカグヤ。まるで彼女もここの島の住人であるかのように。
まるで?
いや、待てよ。もしここまでの考えを全て無にして考えてみよう。
ルナはカグヤの娘の話。
記憶喪失の話。
そして今ここで起きている事。
よく考えてみろ。カグヤも記憶喪失、ココロさんも記憶喪失、その子供のココネも一時的な記憶喪失。もしそれらの原因がここにあるなら、導き出される結論は。
「もしかしてここにいる俺とココネを除いて、この島の出身者なのか?」
それを真に受けるなら、魔物の発生の原因は、ルイヴァック島の歴史に詳しい上、その魂が元凶とも呼ぶべき遺跡に存在している一人の人物。
「ココロさん、あなたもしかして……」
全ての元凶なのか?
「お前が正しい歴史を伝える? どういうことだよ」
「言葉の通りですよ。私がこの世界の歴史をよく知っていますから」
「何がよく知っているだよ。人を散々騙した挙句、俺達の国を奪いやがって」
「勘違いされては困りますね。私がナルカディアを占領したのは、国を正しい方向へと導く為。あなた達には決してできない事を、私達はこれからするんですよをそやのどこが間違いだと」
「何を訳が分からないことを……」
「ケイイチ、今は抑えて。それよりもあなたが本当に正しい歴史の伝承者と言うなら、教えてくれないかしら。私のお母さんと、ルナが言っていること、どちらが正しいのかを」
「おいココネ、こんな奴の言うことなんて信じない方が……」
「勿論私は信じてない。けど、それでも私は、お母さんに罪が被せられてる所なんて、見たくないの」
『ココネ……』
そう言うココネの目には迷いはなかった。何を信じていいのか分からないこの状況下で、自分の母親は信じ続けたいという彼女の切なる願い。それが彼女の瞳からヒシヒシと伝わってきた。
(本当は今すぐにでも殴りたい所だけど……)
「分かった。俺はあくまでココネを信じる。お前の話を聞かせてくれカグヤ」
「分かりました。ではお教えしましょう」
上から目線の彼女の言動に、苛立ちを何とか堪えながらも彼女の話に耳を傾ける。少し間を開けた後に、カグヤは口を開いた。
「まずどちらの言い分が正しいのか、でしたよね。百年前のルイヴァック島の悲劇、その全ての引き金となったのは……」
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「知ってるか、ココロ。本土から少し離れた所に、かつて小さな島が存在したのを」
「小さな島、ですか?」
時を遡って今から二十年前。人と魔物の争いが絶えない中、ココロ姫が子を授かったという朗報が流れていたほぼ同時期、ナルカディア王国先代国王ローウェンは、今の戦いの起源を辿っていた。その中で一つの島が浮かび上がった。
「その島はルイヴァック島と呼ばれていたらしい。百年前に既に滅んでしまった島らしいんだが、どうやらその原因が例の魔物と関係しているらしい」
「百年前に滅んだ島と、魔物がですか?」
その島の名はルイヴァック島。丁度同じ頃に起きた大災害と重なってしまったが為に、滅んだ原因が災害だと片付けられたらしいが、どうやらそういうわけではないらしい。
「そのルイヴァック島のほぼ中心に、ある遺跡があるらしく、魔物の発生源はそこにあるらしい」
「じゃあ何かしらの原因で遺跡から魔物が溢れ、ルイヴァック島は滅んでしまったという事ですか?」
「ああ。そうなる。不幸にもそれとほぼ同時期に発生した大災害がそれを消してしまったのだがな」
「そんな……そんな事って」
ココロはその事に心を痛めた。だけどそれと同時に、彼女はその島へ興味を持ってしまった。もしその島の謎を解明さえできれば、今起きている事の解決の糸口になるのかもしれない。そう彼女は思った。
「じゃあお母さんは一度、この島に?」
「そうです。ただし、既にその島は海の中に沈んでいるので見つかるはずもありませんでした。それなのに」
『何故かその島は、そこにあったんです』
本来影も形もないはずなのに、その島はそこに存在してしまった。そして彼女は踏み入れてしまったのだ。禁断の地に。
「でもそれと、ルナが言う直接の原因とは関係ないんじゃないのか?」
「嘘じゃない! 彼女は確かにあの中にいたのよ! 百年前のあの惨劇の中に」
カグヤの話を聞く限りでは、原因を知るために幻の島に彼女が踏み入れただけで、それ以外に何かおかしなところは思い当たらない。それに百年前の真実を話しているのに、そんな最近の話をしても、何も意味がないような……。
「確かにここまでは何も関係ありません。しかし彼女はその島に足を踏み入れてしまったことにより……」
『もうやめましょうか、この話は』
話の続きをしようとしたところで、突然ココロさんが話を遮った。
「どうしたのお母さん、急に」
『これ以上私の意識をここに繋げると戻れなくなってしまうんで、この辺にして……』
まるで何かを隠すかのように話を切ろうとするココロさん。確かにこの前も突然消えたけど、自分の潔白を証明したいのだから、そんな引き伸ばさなくても……。
「彼女は欠けていたものを取り戻してしまったのです」
それを無視してカグヤは話を続けた。
『どこのどなたかは存じませんが、余計な事を話すのはやめてもらえませんか?』
「そうはいかないんですよ。あなたは自分の業も忘れて、長い時を過ごしたのですから」
『私の……業……』
「あなたさえいなければ、この島は滅ぶこともなかったんです。あなたさえいなければ……」
どこか感情のこもった言い方をするカグヤ。まるで彼女もここの島の住人であるかのように。
まるで?
いや、待てよ。もしここまでの考えを全て無にして考えてみよう。
ルナはカグヤの娘の話。
記憶喪失の話。
そして今ここで起きている事。
よく考えてみろ。カグヤも記憶喪失、ココロさんも記憶喪失、その子供のココネも一時的な記憶喪失。もしそれらの原因がここにあるなら、導き出される結論は。
「もしかしてここにいる俺とココネを除いて、この島の出身者なのか?」
それを真に受けるなら、魔物の発生の原因は、ルイヴァック島の歴史に詳しい上、その魂が元凶とも呼ぶべき遺跡に存在している一人の人物。
「ココロさん、あなたもしかして……」
全ての元凶なのか?
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