雪桃劇場〜茶番です〜

雪桃

フウデルとルナーデル〜引き姫

 昔あるところにフウデルとルナーデルと言う仲のいい双子の兄妹がいました。二人はいつも一緒に近くの森へ遊びに行きます。

「見てみてフウデル! 葉っぱでお人形の服作ったの」
「うん。凄く原始的だね」
「うっさい!」

 仲が良い……のです。
 そんな二人はある日近くにある森の中へ遊びに行こうとしました。

「道に迷わないようにパンくずを捨てて置いていこう」
「もったいない」
「話が進まないよ」

 とりあえず二人はお昼のパンをちぎっては字面に落とし、ちぎっては地面に落とした。

「! フウデル見て。あんな所におうちがあるよ」
「本当だ。しかもあのおうちお菓子で出来てるよ」

 それはそれは驚いて(笑)二人はそろそろと近づきました。

「そういえば聞いたことがある。森の中にはお菓子の家があってそこには魔女が住んでるから近づいちゃいけないって言ってた」
「え!? じゃあ早く帰らなきゃ」
「うん」

 二人は急いで来た道を戻ろうとしました。
 しかしパンくずはどこにも見つかりません。落としている間に小鳥が食べてしまったのです。
 ざまあ……じゃなかったさあどうしましょう。

「凛音はさっきから色々と失礼な気がする」
「まあまあ。えーっとこれどうすんだっけ」
「魔女の所へ行く」

 二人は仕方なくお菓子の家に行きました。
 そこには言った通りお婆さんが一人住んでいました。

「こんにちはお婆さん。私達道に迷ってしまったんです」
「村へ帰る道を教えていただけませんか?」

 お婆さんは快く承諾してくれました。

「ここから南に進めば村に出れるよ」
「ありがとうございます。ルナーデル、遅くならない内に帰ろう」
「うん」

 二人は南に向かって歩きました。

 え? お婆さんって誰? 今回は月海と風柳が主役なんだからねぇ。

「そんな遠回しに言わなくても僕だって言えば良いのに」

 話はずるずる引きずった方が面白いんだよ桃李兄さん。ああ今は桃李お婆さんか。






 翌日。二人はお婆さんにお礼を言うためにまた森の中へ入りました。

 学習した二人はパンくずの代わりに小石を置いて家へ向かいます。

「お婆さぁん! いないのかなぁ?」
「そうだね。開いてるし待ってよう」

 二人はクッキーで出来た椅子に座って待ちます。しかしいい匂いのお菓子の家で二人の腹の虫が大きく鳴ってしまいました。

「一口ならバレないよね?」
「うん」

 フウデルはチョコスティックで出来た家の柱を。ルナーデルはクッキーで出来た机の足を噛みました。

 その美味しさに見とれてしまった二人は我も忘れて家の中を齧り食べてしまいました。

 気づいた時には半分以上が無くなってしまい取り返しがつかなくなってしまったのです。

「ふ、フウデル。お婆さんに見つかる前に帰ろう」
「う、うん」

 流石に慌てだした二人はお婆さんにお礼を言うことも忘れて逃げようとしました。だが扉が開かなーい。

「私の家を食べたわね」

 いつの間にいたのかお婆さんが二人の背後に立っていました。流石は空気の薄い桃李兄さん。

「私の家を食べた代わりにお前達を煮て……えーと食ってしまおう」

 桃李兄さん、あなたが平和主義なのはよく分かるけど今は悪役になってください。

「えーとえーと……あ、そうだ! フウデルこっち」

 お婆さんが近づいて来るのと同時にルナーデルがフウデルに耳打ちをした。

「……それで倒せるの?」
「前に一回やったら桃李ちゃん腰抜かしたじゃん」
「ああ分かった」

 何話してるんでしょう。打ち合わせにはこんなの無かった気がする。

「僕がやるの?」
「悪いけど私はやり方が分からん」
「分かった。お婆さん、覚悟してね」
「え?」

 フウデルは深呼吸してきょとんとしているお婆さんに近づいていきました。

 そして――――口を塞いだ?

「!?」
「よし! そのまま行け風柳!」

 何やっとるんだ貴様らぁ!! 桃李兄さん困ってんじゃんか。

「ん!? んんぅぅ!!」
「ポッキーゲームの時に風柳の舌でベロンベロンになってたからね! さあトドメをさしちゃえ風柳――!」

 フウデルと言わんかい月海! そしてやめてあげて!もう桃李兄さんのライフはゼロですよ!!

「……きゅぅぅぅぅ」
「「やった――――!!」」

 喜んでないで兄さんを助けてやれよ! お前らの方が悪者だぞなんか。

「よし。お婆さん連れて行って私達の遊び道具にしちゃおうよ」
「賛成」

 ちょっともう……いいや。桃李兄さん頑張ってぇ。

「凛音……助けて」

 はいはいめでたしめでたし。桃李兄さんが何か言ってるけど気にしません。

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