スキルゲ!!

チョーカー

王の帰還

 それは神話の怪物。
 1000年を遥かに超える時間、その恐怖は人々に伝えられてきた。
 最強とも、不死身とも言われるモンスター。
 しかし、その神話に立ち向かう男がいた。
 その男は、あまりにも脆く、儚げに見える。
 なぜなら、男が対峙するモンスター『リヴァイアサン』は巨大過ぎるからだ。
 蛇のように蜷局とぐろを巻いてる、その肉体。もしも、天空に向けて真っ直ぐ伸ばせば、その頭部は成層圏を貫き、宇宙空間にすら達してしまうのではないか?
 そんな馬鹿げた想像を容易にさせてしまうほどの巨大さ。
 それを前にした人間の存在など、無に等しい。
 そもそも、『リヴァイアサン』は、目の前の人間を認識できているのだろうか?
 ……実は認識していた。
 『リヴァイアサン』の知能は人間のそれを遥かに凌駕している。
 この世界に顕現したと同時に自身の存在理由を把握した。
 それは―———この国の崩壊。
 この国に住む人間を滅ぼす。徹底的に滅ぼし、例外を許さない。
 そして、滅ぼし尽した後は、死に絶えた大地と同化し、新たに人を作り直す。
 人間の理から外れた存在の『リヴァイアサン』には無意味な行為だと感じられた。
 しかし、『リヴァイアサン』は無慈悲に実行する。
 なぜなら、それだけが『リヴァイアサン』の存在理由なのだから……。
 その前に、滅べすべき人が目の前にいる。
 ならば殺す。目の前の人を殺す。
 それが『リヴァイアサン』が最も優先するべき事なのだ。
 しかし、『リヴァイアサン』は知らなかった。
 対峙している人間。そのちっぽけな存在が自分と同じ、神話の住民だという事に。
 その男は神話の住民。
 だが、その神話は、『リヴァイアサン』のように1000年も語り継げられた神話ではない。
 それどころか、100年にも満たない―——なんてレベルではない。
 その神話はわずか数年前に生まれた物。
 しかし、それは『リヴァイアサン』と同じ……
 いや人によってはそれ以上に信仰されている神話。

 それは―—— その神話の正体は―——

 建国神話である。

 『リヴァイアサン』に対峙する男こそ、この街『キングダム』創立の立役者。
 『キングダム』建国神話の主役である彼を人々は短くこう呼んだ。

 『王』

 ……と。

 1000年を超える神話の怪物『リヴァイアサン』
 おそらく、最新の神話の持ち主『王』
 お互い歴史を賭けた戦い。神話の戦いが始まったのは直後の事である。
  

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