スキルゲ!!

チョーカー

終わりまで残された僅かな時間

 記憶の混乱。
 だが、朝倉亮期は直ぐ理由に思い当たった。
 封印されていた召喚士のスキル。しかし、スキルを永続的に封印する事は不可能だ。
 もしも、そんな事が可能なら、この世界のパワーバランスは大きく崩れているはずだ。
 モンスターと戦う方法を失ったスキル使いは、ただ食い殺されるだけだろう。
 だったら、僕のスキルはどうやって封印されたのか?
 スキルは個人のアイデンティティに深く関わっている。
 ならば、スキル発動の引き金となるのは感情。その方向性をスキルに向かわなければいい。
 つまり、僕のスキルを封印と同時に、スキルに関する記憶をも封印したのだろう。
 では、一体誰が封印したのか?いや、それより、僕はいつスキルを身につけていたのか?
 それらの疑問は、徐々に明確になっていく僕の記憶によって明らかになった。
 その物語に深く関わっているのが、彼女 橘あかね……。
 しかし、その物語を僕は自分で語る事はない。
 なぜなら、その物語には、伏線もミスリードも存在せず―——
 胸を焦がす程の愛憎劇も―—— 血潮が滾るアクションシーンも―——

 ……存在しない。

 およそドラマチックと言えるものではない。あるのは、ほんの僅かなヒューマニズムのみ。
 だから、僕は封印された記憶を、自身で再封印を施し、外部には漏らさない事に決めた。
 もしも、それを語るとしたら……
 それは、朝倉亮期と言う言葉……『僕』と言う言葉で表される一人称ではない。
 おそらく、それを語るにふさわしい人物が他に存在しているのだろう。
 なぜなら、封印されていた僕の記憶には、不自然さがまとわりついているからだ。
 きっと、僕のあずかり知らぬ所で奮闘した何者かがいる。
 もしも、僕の物語が語られる時が来るのならば、それは、きっと……




 最後の力。
 滝川晴人は『滝川晴人』という存在が失われていくのを実感していた。
 そんな最中、彼が考えていたのは―——

 (はて?自分は何者だったのだろうか?)

 そんな事だった。
 自分は滝川晴人という人物をモデルに生まれたモンスター。
 果たして、今までの行動は、本当に自分の意思だったのか?
 そんな事を自身に問いかける。
 しかし、答えは即座にはじき出された。
 自分は滝川晴人であって滝川晴人ではなかった。
 そう結論付けしたのだ。
 無論それは、刻一刻と命が削られていく制限時間がある問ゆえに、迅速な解答だったのだろう。
 それが正解かどうかはわからない。もしも、許された時間が膨大な量なら、別の答えに辿りついたかもしれない。
 だが、今はこれでいい。これが正解だ。
 滝川晴人は考える。消滅まで残された時間を考える事に使った。
 考えるゆえに自分は滝川晴人なのだと。
 さて、どうして自分はこれをやったのか?
 『これ』とは『リヴァイアサン』の解放。
 それは朝倉亮期の父親である朝倉正成に頼まれたからだ。
 そう、頼まれただけだった。 それを成し遂げたからといって、その報酬として朝倉正成に何かを望んでいたわけでもない。
 頼まれれば無償で動く。おそらく、自分と朝倉正成はそういう間柄だった。
 それは滝川晴人本人にとって、気がついてしまうと衝撃的な事実だった。
 誰に聞こえることなく彼は呟く。

 (そうか。俺と朝倉正成の関係は擬似的な家族だったのか)

 彼の言葉。それは正しい。
 彼にとって朝倉正成は彼を生み出した人物にほかならない。
 彼ら2人は互いに意識しなかっただけで、関係性は親子に近かったのだ。
 そう考えると…… 俺にとって…… 朝倉亮期は……

 (弟だったのかもしれない)

 だから、ここまで必死だったのかもしれない。
 命をかけれたのかもしれない。
 今度、新たに創造される世界。そこで朝倉正成と朝倉亮期は平凡な親子であり、平和に暮らしててほしい。
 それが俺、滝川晴人が生まれた理由なのだから……
 まぁ、その世界に俺は存在してないのだろうけれでもな。
 そう思うと少し寂しくあるが……

 
 滝川晴人の思考は永遠に停止した。
 『リヴァイアサン』の召喚。
 その衝撃で、かろうじて残っていた彼の肉体は消滅した。

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