スキルゲ!!

チョーカー

光の部屋にて ②

 2人は部屋のソファーに座っていた。
 一方は子供を預かる学校の担任。一方は息子を預ける保護者。
 両者、その形状を崩すことはなく―——
 しかし、どこか危うさを帯びていた。
 例えるなら、尖鋭な牙を持つはずの猛犬が鋭い刃を咥えて、喉元を斬り合うような矛盾を孕んでいる。
 最初に言葉を発したのは芦屋悟朗からだった。
 「驚きました。今の時代なら外部から七不思議を広める方法が数多くあるでしょ?まさか、文字通り学校の内部に入り込んでいたとは思いもしませんでした」
 芦屋悟朗の言葉、それは比喩ではなかった。
 彼らがいる場所。そこは、他ならぬ『私立キングダム西高等学校』の地下に隠された部屋だったのだ。
 「中々、ユーモラスな先生ですね」
 朝倉正成はニヤっと笑みを浮かべた。
 当然ながら、『学校の内部に入り込んだ』と言うのは物理的な意味であり、朝倉正成は学校の部外者に違いない。だからこそ、芦屋悟朗の言葉に対して『ユーモアラス』と言ったのだ。
 「滝川晴人は学校から出れない。だから私は学校で彼とコンタクトを取る場所が必要だった。それだけの事ですよ」
 「なるほど、なるほど。でも、次からは学校に許可を取って作ってくださいね」
 2人は声を出して笑った。
 「さて、それでは本題に入りましょう」と芦屋悟朗。
 「うむ、何か聞きたい事はありますかね?」と朝倉正成。
 「そうですね……。今回の件、あなたの動機はなんですか?」
 「動機」と朝倉正成は呟き、考え込む。やがて―——
 「貴方はリヴァイアサンを知ってますか?」
 「リヴァイアサン?確か旧約聖書に出てくる怪物の名前ですかね?」
 「そうですね。不死身であり最強の生物と言われていますが……それは、専門家の貴方に言わなくても分かっているでしょうか……しかし―——それだけではない。
 今から400年前にトマス・ホッブズと言う人間が、このモンスターにある付加をつけた。
 ご存じでしょうか?」
 「いいえ。全くもって初耳です」
 「そうですか。彼、ホッブズが言うには、法律がない状態では人間という生物は互いを制限なく殺し合う狼のような生物に成り果ててしまうそうだ。
 そのために『国』と言う、人間が無条件で降伏してしまうほどの強者が必要であり、それは彼は『リヴァイアサン』と例えました」
 「いや、待ってください。『リヴァイアサン』とはモンスターの名前ではないのですか?」
 そんな芦屋悟朗の声に、朝倉正成は平然と言ってみせた。

 「モンスターが新たな『国』になって何かおかしいですかね?」

 

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