スキルゲ!!

チョーカー

召喚の人工的人間

 まさに一刀両断。
 頭部から足元まで、切り捨てられた。
 真っ二つ以外の表現は存在しない……そのはずだった。
 しかし、僕は無事だった。
 思わず「あ、あれ?」とマヌケな声を出してしまった。
 視界が元に戻っている。
 つまり、僕の精神が肉体から離脱した状態から元の状態に戻っているという意味だ。
 僕を切り捨てた犯人に視点を合わせる。
 彼は、滝川晴人は僕の目の前にいる。いて、微動だにしない。
 彼の手には、僕を切り捨てた凶器がある。
 名前は見た目の通り『死神の鎌』らしい。
 それを片手に持ち、反対側の片手には……
 球体を持っている。それは、さっきまで僕の背後で浮遊していた球体。
 僕のスキルそのもの。
 それが、なぜ、彼の手にあるのか?
 「……不思議そうな顔をしているな朝倉亮期。知りたいか?」
 「あぁ」と僕は頷き。
 「何を教えてくれるんだ?滝川晴人」と聞き返す。
 「俺の武器スキル『死神の鎌』は人を殺す武器とは違う。文字通りに死神が魂を刈るための武器や」
 滝川晴人は自身の武器を誇るように持ち上げ、次に反対の手を持ち上げる。
 「つまり、コイツはお前の魂そのもの。お前のスキルは自身の魂を糧に、その効果を発揮する類の物や。自分の魂を生贄に、『ある生物』を召喚するスキル。……つまりは召喚スキルであり、お前は召喚士だったってことや」
 「召喚するためのスキル?召喚士?いや、それよりも……」
 魂。
 魂ってなんだ?漠然としすぎて、僕にとってそれがどういう物なのか把握できない。
 シンプルに、単純に、それがないと僕は死んじゃうじゃないか?
 そんな僕の様子が、よほど滑稽だったのだろうか?
 滝川晴人は笑みを浮かべながら言う。
 「心配するな。魂を刈り取っただけ、何もしなければ、お前が死ぬ事はない」
 なるほど……と安堵できる話ではなかった。
 「結局、僕の命は文字通り、お前の手の中か」
 「その通りやな」
 滝川晴人は、先ほどと違い種類の笑みが浮かび表情が変わっていた。
 しかし、直ちに生命に影響がないとわかると若干の余裕が生まれた。
 滝川晴人が言う『ある生物』とは、おそらく……いや、間違いなくモンスターの事だろう。
 しかし、本当に僕のスキルが召喚士だというなら疑問が2つある。
 さっき、滝川晴人相手に僕が人間離れした動きを見せていたのは、何だったのか?
 そして、『ある生物』と言う言葉。
 僕が召喚士だとしても、滝川晴人の言い方だと、召喚する生物は決まっているかのようだ。
 じゃ、その『ある生物』とやらは一体、どんな生物なのか?
 後者の疑問については直ぐに解決した。
 なぜなら、滝川晴人自身が、その『ある生物』の名前は高々に宣言したのだ。

 「お前の中にいるモンスター。そいつの名は―——

 リヴァイアサン」

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